06
鬼と言われれば
どんな姿を思い浮かべるだろう?
異形の者
人のようで人ではない者
そういう「もの」を鬼と呼んでいた
他の町では分からないが
少なくともこの町では
私が物心ついた時には
そのようなものを鬼と呼んでいた
私の袖を後ろから掴む少女がいる
ボサボサの髪の間から2本の
そして額から1本の
計3本の小さなツノが生えている
遠目に見れば普通の少女と変わらない
しかし
彼女のツノがそれを否定する
普通では無い彼女は世間が言う異形のもの「鬼」なのだろう
しかし
私は彼女の目を見た時
ひどく哀れに
そして、愛おしく思えた
とても、他の子たちと区別するような気持ちにはなれなかった
もちろん世間はそれを許さない
彼女は
出会ったばかりの頃
言葉も通じず
唸り声を上げるばかりで会話ができなかった
私達と違う何か
未知の存在が恐怖生む
世間は彼女を腫物として扱った
襲われるかもしれない
災いを呼ぶかもしれない
不幸があれば
全て彼女のせいにされる様な有様だった
世間は噂が噂を呼び
敵意を向けるものが多かった
私は普通に接したいとはいえ
こうなる事は予測できたので
彼女を大っぴらにするつもりはなかったのだが
しかし
小さいこの町では隠し通すことも不可能な話で
すぐに彼女は町を追い出されそうになった
しかしそうはならなかった
彼女はこの街に来て3年経った今も
こうして私の勤める病院に来ては
私の袖を引っ張っては遊んで欲しそうにしている
以外にも
彼女と町の人間の間を取り持ったのは怪しい風貌の男だった