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出港

「夜明けとともに出港だ。準備急げ!」

「おう!」


再信審判の始まりだ。船を出そう。錨を上げて舵を切れとカヴェリエレが鋭く指示を飛ばす。

もうすでに積み荷は載せた。いつでも出港できる。船乗りたちが答えて、それから船が動き出す。


「いってらっしゃい!」

「帰ってくんなよ!!」

「おうお前ら、神の国で会おうぜ!」


船は一隻。奇しくも、私たちがこの地に降り立った時の船で、降り立った時の人数で発っていく。


***


民たちが見送る中の出港を頭上から眺める視点で覗く。


「どうですか、ファムファタール?」

「えぇ。ばっちりです」


水盤に映っているのは出港するカヴェリエレたちの様子。リグラヴェーダが発動した遠視の魔法で垣間見ているという状況だ。

この魔法は対象の頭上やや斜め後ろから見下ろす視点で対象の様子を見ることができる。向こうの声は聞こえるが、こちらの声は対象に届かない。まさに『覗き見』だ。

この遠視の魔法でもって、私は現地の彼らの様子を知ることになる。そしてカヴェリエレに持たせた通信用の武具で音声をやり取りして連絡を取り合うというような格好になる。


様子をリアルタイムで見られることと直接声でやり取りできること。この2つは重要だ。フィニスの地で戦う彼らを支援しなければならない首領としては欠かせない。

こうして覗き見て会話をして必要な物資や人を送れるようにしなければ、再信審判は勝ち抜けない。


『出港したかな?』

「はい。義兄さ……いえ、ユーグ殿」


カヴェリエレに渡したものとは別の通信用の武具から声。義兄さんだ。

同盟を結んだ以上、こうしていつでも連絡を取り合えるようにとの配慮で交わされたものだ。


"コーラカル"からもまた船がフィニスの地を目指して出港したそうだ。海上で合流し、そしてフィニスの地へと到着するだろう。

到着するまでに数日かかるはず。海路の加護をナルド・リヴァイアに祈願したおかげで順調に波を切って進めたとしてもさすがに時間が必要だ。


「手はず通り、第二陣を昼に出します」

『あぁ。そちらの合流は待たないから、後から遅れてゆっくりおいで』


夜明けとともに出した船は一隻。カヴェリエレを中心にした部隊を載せた船は第一陣。言うなれば斥候だ。

斥候を第一陣として送り、ナルドの海上で"コーラカル"と合流。それからフィニスの地に降り立ち、海岸線に簡易的な拠点を建てる。設営が半ばとなった頃に第二陣として"ニウィス・ルイナ"の主戦力の船団が到着する。

そこからはお互い、手を取り合っての活動となる。


『世界地図はあるかい?』

「ありますよ」

『ではそれを見ながら話すとしよう』


これからのことだ。

フィニスの地は世界のほぼ中央にある。中央やや西寄りだが、まぁおおむね中央だ。

そこを目指し、各クランから船が派遣される。私たちは東からフィニスの地に上陸することになる。

地理的に言って、土のクランと樹のクランは南東、火のクランは北西、雷のクランは南西からそれぞれフィニスの地に乗り込んでくる。

そうしてフィニスの地の中央、光の柱が降りた終結点を目指して争う。終結点の支配権を得、祭壇に祈りを捧げたクランが勝者となり神の国へ送られる。


『火のクランが一番フィニスの地に近い。一番乗りは彼らだろう』


次いで雷のクランが着き、そして私たち。土のクランと続いて、最後に樹のクランだ。単純な直線距離順で並べるならそうなる。

到着し、仮の拠点を築いてそこから活動範囲を広げて中央の終結点を目指す。再信審判は1日やそこらで終わるものではない。一ヶ月単位でかかるものだからこそ、活動拠点となる場所の設営はしっかりと。そうして足場を固めてから周囲の探索と、それから終結点への道の模索。活動範囲を広げていくうちに他のクランと衝突して争う。


と、いうのが基本的な流れなのだそう。義務教育で習う基本的な概念だ。


『火や雷は対岸だ。まず僕らが注意しなければならないのは……』

「土のクランですね?」

『そうとも』


樹のクランは距離があって到着は少し送れるはず。一番始めに衝突するのはまず土のクランということになる。

土のクランは再信審判には消極的だ。樹のクランもはじめは斥候として少数しか送らない。どちらも小さな相手だ。


『初手の相手にはいいということさ』


君の手腕をみるのにも、ね。義兄さんはにこりと微笑んだ。

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