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永久凍土から神の国へ、世界制覇を目指します  作者: つくたん
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氷の女の作戦立案その2

ナフティスは火の先代首領暗殺をなした。それは言い換えれば、厳重な警備をものともせずすり抜け、事をなせる規格外の実力者だということ。


そしてナフティスはその件で風神から破門され、私のもとにいる。つまりは、この規格外の実力者は私のものということだ。"ニウィス・ルイナ"は規格外を保有している。

ならばその力を活用すべきだ。町に忍び込む暗殺者の露払いはリグラヴェーダに一任し、ナフティスにはフィニスの地での露払いを任せたい。


「リグラヴェーダ、ひとりでもやってくれますよね? 絶対に誰も魔の手にかからないように」

「えぇ。それがファムファタールの望みであれば。何者も私の王国に立ち入らせはしないでしょう」


『運命の人』の望みなら何でもする。リグラヴェーダはそう言った。ならばと思って命令したが、それはもうあっさりと受諾された。

なら町のことはもう心配ない。リグラヴェーダはやると言ったし、実際にそのとおりにしてみせるだろう。


では。


「存分にその力を振るいなさい、ナフティス」

「……いいんですかい?」


言葉少ないが、その確認の問いの意味はわかる。

フィニスの地で規格外の暗殺をやり続けていいのかの確認ではなく、自分の身元を踏まえて、それで自分を信頼するのかという確認だ。

そんな問い、意味はない。私はナフティスを信じている。騙されたって本望だ、よくぞ騙したと称賛するくらいには無条件に信じている。

だから任せるのだ。この全幅の信頼、裏切ってくれるなよ。


「仰せのままに、我が主」


恭しく、ナフティスが膝を折った。奔放な彼が示した最大限の礼。その意味を噛み締めて、その受諾を聞き届けた。


「…………ふぅむ。ではナフティスはフィニス行きとして……おおよその面子は決まったかの」


場の余韻を長く引きずっている暇はない。大老が口を挟み、空気を変えてきた。


「そうですね。カヴェリエレ、ミーレス、ルベラナを中心とした隊、それから遊撃としてナフティスを単独で」


カヴェリエレ、ミーレス、ルベラナの3人を筆頭として、戦える人員を集めて隊を組む。彼らに"ニウィス・ルイナ"の戦力として"コーラカル"に合流、そしてフィニスの地で再信審判を戦ってもらう。

それとは別にナフティスを単独で行動させる。その規格外の力で、こちらに伸びてくる暗殺の手をすべて返り討ちにしてもらう。


大筋としては以上になる。現地での状況判断などの細かいところは彼らに委ねるとして、私がやるべきは彼らの支援だ。

なにも再信審判は一度送ればそれっきりというわけでもない。人も物も、必要になれば好きに補給できる。首領は勝ち進むために現地の兵に指示と支援を施さなくてはならない。


フィニスの地で生き抜くための彼らの食料や必要な物資の手配。物自体もだが、必要な物を用意して素早く送り届けるためのルートの構築と維持も重要になってくる。何よりまずフィニスの地に無事に送り届けなければならない。

そのために重要なのが船の準備だ。フィニスの地へ、人と物を送り届ける手段の確保。これこそが首領がやるべきことだ。


再信審判のルールによって、クランからフィニスの地へ向かう船への手出しは禁止されている。それを破れば神によって裁かれ、魂は深淵へと送られる。深淵には万物を食らう口があり、それに食われれば転生もできず消えてしまう。魂の消滅はすなわち、神の国へ行く道の断絶だ。それだけはあってはならない。だからどんな悪人でもまず再信審判のルールは侵さない。

『フィニスの地に着く前に攻撃を仕掛けて沈めてしまえ』と襲われることはまずない。深淵に送られることはこの世界でもっとも重い罰だ。


だから襲撃者の心配はいらない。しかし、それで道中が安全かというとそうではない。

地理上、私たち"ニウィス・ルイナ"が航路に使うのはナルド海なのだ。フィニスの地へ行くにはナルド海を渡らなければならない。あの荒れ狂う大海をだ。

襲撃者はなくとも、荒波に飲まれて転覆してしまう可能性は多々あるのだ。波という自然現象は再信審判のルールの範疇の外だ。誰も咎めようがない。


「航行の安全を祈願して、ナルド・リヴァイアに加護を要請しましょう」

「うむ。ワシの出番じゃな。召喚の儀式の用意に取り掛かろう」

「お願いします」


前にやった儀式と同じだ。海路の安全を願い、ナルド海を守護する海竜に加護をもらう。

そのために召喚の儀式をしなければならない。儀式には供物が必要だ。この町で作り出せるもので、供物にふさわしいものを選び、用意しなければ。


「再信審判の前にやるべき準備として、航行の安全祈願からです。指示に従って、どうかよろしくお願いしますね」

「おうよ」

「了解っす、ライカ様!」

「お任せください!」



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