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永久凍土から神の国へ、世界制覇を目指します  作者: つくたん
あと、50日
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氷の女の作戦立案

さて、と諸々の報告書と地図とメモの山に囲まれながら机を囲む。

執務室に集まったのは私と大老。護衛のリグラヴェーダ、見えないところにはナフティスが。そして、フィニスの地での活動の現地指揮を取るだろうカヴェリエレたち。

部屋の広さに対して人数が多く、少し窮屈だが耐えてほしい。さて、前置きは置いておいて本題といこう。フィニスの地での立ち回りについてだ。


まずは総戦力。火のクランから追放された海賊たち、雷のクランから漂流してきた人々、その他、"ニウィス・ルイナ"の規模が増すにつれ評判を聞きつけてきた移籍希望者。それから、私についてきてくれた最初期の30人少々のひとたち。すべて足した人数は3桁に届いた。

しかしこの100人あまりが全員フィニスの地で活動するわけではない。ソルカやレンといった子供もいるし、非戦闘員だっている。実際にフィニスの地に向かい、戦うのは数十人がやっとだ。

対して、他のクランは何百人もフィニスの地へ送り込むだろう。もし戦闘の被害で戦力が減ればその都度クランから補充すればいい。

圧倒的な人数差。これを埋めるのが義兄さんとの同盟だ。


「主要な戦いは義兄さん……いえ、"コーラカル"に任せることとなるでしょう」


『フィニスの地へ送り込む何百人』。同盟のおかげで、私たちもまたそれを使える。

彼らはあくまで"コーラカル"の所属なので私の命令を聞くわけではないが、同盟を組んでいる以上私たちを守り、協力する義務がある。

彼らに守ってもらい、自分たちは戦力を温存する。人数差を埋めるにはそれしかない。


しかし、大勢が決まれば彼らは義兄さんの計略に従って裏切るだろう。今まで盾に使ってきた彼らが牙を剥き、後ろから刺してくる。

それはわかっている。だから私が考えるべきは、いつ裏切るのかタイミングを読むことだ。大勢が決まればというが、その大勢が決まる瞬間はいつだという話だ。


「具体的には、火か、雷のクランの脱落でしょう」


歴代の再信審判のほとんどに勝利している勝率1位の圧倒的強者。火のクランこそ再信審判の勝者の最有力候補だ。

対して雷のクランはそのライバルと言ってもいい。攻撃に特化した火のクランと、守備に特化した雷のクラン。戦力面でいえばこの2つが圧倒的。水のクランは攻めも守りも力及ばず一歩劣り、土のクランは消極的で戦力が少なく、樹のクランは消耗したところを狙われないように警戒し続ければ驚異ではない。

よって、火か雷、このどちらかの脱落が『大勢が決まった』瞬間だろう。


しかし、雷のクランは瓦解寸前だ。再信審判を争うにはあまりにも危うい。

だから今回に限って言えば、火のクランが要点になる。


「土のクランは軽く蹴散らされ、雷のクランは瓦解……中盤には、火と樹と私たちの三つ巴になるでしょう」

「そうじゃの」


そして構図としては、火対私たちの戦いを虎視眈々と狙う樹という様相になるに違いない。樹のクランは漁夫の利を狙うため、私たちの激突を誘導しようとするはず。


「そこで、私が掴んだ火の先代首領暗殺犯のの情報をあちらに告げます」


ナフティスのことは私と大老、リグラヴェーダ、それから義兄さんしか知らない。皆に告げる必要もないだろう。どこから情報が漏れるかわからないので必要でない限り黙っておきたい。

なのでそこだけはぼんやり隠しつつ説明を続ける。


先代首領暗殺犯(ナフティス)のことをあちらに告げるタイミングはここだろう。

『件の人物がうちに混じっていました』としれっと言ってやる。間違いなくあちらの怒りを買うだろうが。


「ふぅん……でも、ひとつ忘れてますぜライカ様」

「……えぇ。風のクランのことですね?」


主要人物が死んだ混乱による弱体化を狙って、風のクランが動き出すはず。

フィニスの地で活動する指揮官を狙い、暗殺をなそうとしてくるだろう。現に今だって各クランで重役がたびたび暗殺されている。


「彼らは厄介です。それについては……ナフティス、あなたに」

「おう?」

「どこから出てくるんですか」


天井の照明が落とす影からずるりと這い出てきたナフティスに溜息をひとつ。


気を取り直して。フィニスの地にいる風のクランからの刺客はナフティスに任せる。


各地で暗殺事件が起きているが、うちにはまだその被害がない。狙う価値がない小規模クランだとみなされているのではなく、裏でナフティスやリグラヴェーダが摘み取っているのだろう。私はあえてそれを口には出さないが、見えないところで危機は起きている。


そう。表面化していない。被害がない。つまりは、刺客を返り討ちにして被害を未然に防いでいるのだ。


「ナフティス。"ニウィス・ルイナ"の首領として命令します。風の刺客を狩り返しなさい」



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