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永久凍土から神の国へ、世界制覇を目指します  作者: つくたん
雷のクラン"シャフダスルヴ"
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民俗学『雷砂の民』

残る承認は雷のクラン。

彼らについて知っていることといったら、学校で習うような最低限の知識だけ。


雷のクランは世界の南西、クレイラ島を領土とする。そこは年中砂嵐が吹く砂漠の島だ。

砂が口に入らないように工夫した結果、言葉が訛って変化して、独自の言語を喋るようになったという。

雷のクランを構成する中心はシャフ族。シャフとは彼らの言葉で砂漠の砂を意味するという。砂漠の島で雷神を信奉するシャフ族のもとに人々が集まって雷のクランとなった。


……以上が、私の知っている知識だ。


「そういうワケでアタシが呼ばれたってコトですネ、ライカ様」

「そういうことです。……とはいえ、離脱してから長いでしょうが……」


必要なのは雷のクランの現状よりも雷のクランがどういうものかという基本的な概念だ。

学校で習うような知識以上のものがあればぜひとも。そういうわけで呼んだのが、町で仕立て屋を営むコウクスだった。彼女は元雷のクランのシャフ族なのだ。離脱してから10年以上経っているし信仰を雷神から水神に改めているので、シャフ族らしいところといえば褐色の肌と黒い髪という外見、そして独自の言語の名残を残す妙な訛りくらいだ。


「雷のクランの承認ですケド……アタシが思うに、あっさりくれるンじゃないかって思うんですヨネ」

「ふむ?」

「もうそりゃぁ、参加しますイイデスカ、イイデスヨ、以上、ってくらい?」


コウクスの訛りのある言葉を要約すると。

これまでとは違い、何の取引も駆け引きもなく、あっさりと承認を得られるのではないかということだった。むしろ、こうして再信審判に参加したがっている新興クランがいると聞いて心躍っているはずだと。


「"シャフダスルヴ"は過酷な環境を好むんでネェ。それこそ、アタシが砂を防ぐ布を織っているコトを知って追放シチャウくらい」


過酷な環境を修行ととらえ、修行で鍛錬を積んでより高みへ。そうして自分をどこまでも高めていくことを重視している。不利な状況をひっくり返して勝つことに至上の喜びを感じる。

なので、敵が増えるだけでしかない新興クランの参加も嫌がるどころかむしろ修行ととらえて歓迎する。


いわば、修練を通して自己を磨く『忍耐』のクランなのだ。

過酷な砂漠で生きる彼らは身を守る術に特化していて、その防御はやすやすと崩せない。苛烈な攻めをみせる火のクランでさえその防御の前には苦戦する。そうして攻めあぐねて疲弊したところで、これまでの忍耐の仕返しとばかりに反撃に転じる。

再信審判における勝率は火のクランに次ぐ。勝った時の状況はほぼ、不利な状況からの逆転だ。


「原初の時代からの教えなんデスケド、鍛錬と研鑽の末に雷神に認められるッテいう伝承があるンですヨネ」


それが、『勝利したクランは神の国へと招かれる』という再信の伝承と噛み合って今に至る。

彼らにとってこの再信審判は雷神に認められるための試練なのだ。


「成程……その"シャフダスルヴ"というのはどういう意味なんです?」


聞き慣れない響きだから、シャフ族が話す独自の言語であるというのは何となくわかる。シャフが砂を意味することだろうというのも推測はできる。

しかしきちんとその意味と由来を知っておくことは、これから関係を結ぶにあたって重要だろう。相手の文化を尊重することは相手から信頼してもらうことにつながる。


「あぁ、えっと……『砂の民』デスネェ。シャフで砂、ダ、接続の『の』、スルヴ、民」


シャフ()()スルヴ()。成程。

ちなみに、彼らの言葉でそれぞれの亜人を意味する言葉があるという。水神の信奉者であるスルタン族はウルダスルヴ(水の民)。キロ族はフレダスルヴ(火の民)。樹神のアレイヴ族はモルダスルヴ、風のベルベニ族はウィダスルヴ、土神の竜族はノマダスルヴ。

それらはそのまま意味がスライドしてクランを指すようになったらしい。彼らの言葉でいうと、水のクランはウルダスルヴ(水の民)というわけだ。まぁこれは私たちもしばしばクランを指してどこどこの民だのどこどこの信徒と呼ぶこともあるので、それと同じことだろう。


「うん? ちょっと待ってください。『シャフダスルヴ』は砂の民って意味なんでしょう?」


水の民、火の民、樹の民、風の民、土の民。そう順当にいけば、雷の民といくのが普通では。

そもそもどうして砂漠の民が雷神を信仰するに至ったのだろう。砂漠なら貴重品である水をありがたがりそうなもの。


「あぁ、ライダスルヴ、雷の民って言うコトもありますケドネェ……昔っからそうなンで、シャフ族自身知らないンデスヨ」


そのあたりは歴史学者に任せる、と。レーラル女史なら知っているだろうか。後で聞こう。


「雷を信奉するのは、そうデスネェ、色々と由来があるみたいなンデスヨネ」


これじゃないかと由来を推測するいくつかの説があるという。

風に巻き上げられた砂がぶつかる音が電雷の火花の音に似ているからだとか、年中砂嵐が吹き荒れる砂漠の島での天候なんて雷くらいしかなかっただとか。

その中でも一番有力なのが、雷雲の存在からきた説である。砂漠において水は貴重だ。水が得られる場所は争いの場になる。それこそ、オアシスのような場所だけでなく、一時的に雨が降った地点でも。

雷が降り注ぐということは上空に雷雲があるということ。雲はいずれ雷ではなく雨を降らせる。ゆえに、雷は水の存在を示唆するしるしなのだ。


「そうだったんですね、感謝します」

「はいハァイ。ライカウンタ(ライカ様)マノルジャ(大好き)!」


……なんて?

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