表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永久凍土から神の国へ、世界制覇を目指します  作者: つくたん
風のクラン”ベルベニの奔放”
38/98

風の承認を得るには

「俺が見立てるに……暗殺犯はそいつじゃないかって思うんすよねぇ」


誰からも認められる暗殺の名手というなら、火のクランの先代首領の暗殺だって容易だろう。

成程。確かに。そう言われればそうだ。そんな大それたこと、そのへんの人間ができるわけがない。


「じゃぁその中心人物とやらに承認を求めればいいんでしょうか?」

「いやぁ。言ったでしょ。そいつは首領じゃねぇって」


中心人物ではあるが、だからといって首領のような権力を持っているわけでもない。

そうナフティスは首を振る。


「仮に、そいつが「再信審判への参加? いいんじゃないか?」……とか言ったとしても、それは風のクランの承認ってことにはならないんですよ」


仮に、中心人物(モガリ)がそう言ったとしても、それは承認にはならない。

誰か一人が認めて、それで風のクランに属する全員が『良い』とするわけではない。


「俺はライカ様に命を助けられて以降、ライカ様の信奉者です。ライカ様が再信審判に参加するってんならいくらでも認めますよ。でも、俺ひとりがどうこう言ったところでダメなように……ダメなんすよ」

「でも、それじゃぁ風のクランとしての承認はどうすればいいんです?」


クランとしての実態が曖昧だからといって、じゃぁ風のクランを抜いた他から承認を得ればいいというものでもないだろう。やはり、6クランから等しく承認を受けるべき。

しかし風のクランに首領が存在しないのであれば、いったい承認の取り付け先は誰にすればいいのか。


「これは、俺個人の考え方なんですが……」


あくまで風のクランの見解としてではなく。そもそも自分は風のクランから離脱している身だが。

そう前置きして、ナフティスは続ける。


「ベルベニ族はウワサを好みます。特に二つ名の類を。有名なところだと"宵風"とか」

「宵風?」

「すっげー昔にいた暗殺者ですよ。夜闇に溶け込むような女暗殺者だったそうで」


風のクランの間で有名な人物らしい。偉人みたいなものだろう。

話を戻して。そうやって何世代も受け継がれる伝説を残すような人物には二つ名が与えられる。所謂、代名詞というものだ。


「で、二つ名をつけられるっていうのは、それだけ認められてるってことにつながるんですよ」


有象無象の無数の中から、この人ありと限定する。二つ名をつけるというのはそういう意味を持つ。

力を認め、腕前を認めたからこそ他者と区別するために通称をつける。二つ名はその力と名声への称賛だ。


実のところ、火のクランによってモガリという(あざな)が送られたことも、風のクランにとってはかなり重要なことなのだそうだ。

二つ名をつけられることが力の証明であるのなら、名に等しい概念である字を送られることもまた力の証明となる。

言い換えれば、先代首領の暗殺犯は火のクラン直々にその力を認められたということになるのだから。


「だから、風のクランの間でライカ様に何らかの二つ名がつけられて、それが広まったら……」

「……風のクランの承認を得ているも同義、と」

「そういうことっす」


成程。要するに、このまま活動を続けていってクランとしての名声を高めれば、必然的に承認はついてくるというわけか。


「と、いうわけで頑張っていきましょー。俺もできることはするんで」

「えぇ。頼みましたよ」


話を締めくくったところで。


「ところで、暗殺犯はベルベニ族の男性とのことですが……」


ベルベニ族の男性。その条件なら、ナフティスだって十分に当てはまる。

いやまさか。でも、条件だけを抜き出すなら可能性はある。


「世の中に『ベルベニ族の男性』が何人いると思ってんですか」


種族と性別だけでふるいをかけるなら、確かに、その通りだけど。

いやでもナフティスの過去って知らないし。両親からのあれこれが嫌になって気分転換に出かけたその日、何気なく人気のない路地を歩いてみたら血まみれで倒れていたので救護して、それから忠誠を誓ってくれてはいるけれど。

その、血まみれで倒れていた時以前のことを何も知らない。私に忠誠を誓うにあたって、風のクランを脱退したらしいけれど、元々、風のクランは組織だったものでもないので何かしらの手続きを踏んだわけでもなし。

本当に、気まぐれに吹いた風が吹き溜まっているかのようにナフティスは私のそばにいる。呼んだら変なところから出てくるけど。


語らない過去に、もしかしたら、と思ってしまうのも無理はないじゃないか。


「えー……そこはベルベニの性根みたいなところあるんで……全部つまびらかっていうのは、こう……なんか……」

「歯切れが悪いですね」

「例えるなら……全裸で外を走り回るみたいな……それに似た恥ずかしさと言いますか、ほら、ねぇ?」


言いたいことはなんとなくわかった。例えが最悪なことは置いといて。

そう言うなら追及は無理にはしないでおこう。今のところは。必要であれば、全裸で外を走り回ることに相応する行為だとしても話してもらおう。


「これだけは誓います。俺はライカ様を裏切ることはしません」

「……なら、いいです」

「はい。絶対に。俺にとってライカ様は絶対なんで。何なら全裸で外を走り回りますよ?」


やめてください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ