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第19話 その名は怪傑

「やぁっ!」

「KOッ、KOKOKOッ、KOOOOOBUUUUUTAAAAA!!」


 プテラブレードは双剣を振るい、悪女野風の首を断つべく刃を閃かせた。

 悪女野風の頸椎を狙って振るわれた白銀の軌跡は、しかし首筋から生えてきた牙によって食い止められる。

 ニタリと笑う悪女野風。直感的に危険を読み取ったプテラブレードは、彼女の首を足場として大きく後方へと飛び退いた。


 その直後、悪女野風から放たれる肉の砲弾。先端でガチガチと牙を噛み鳴らす口の数々が、プテラブレードを血の1滴まで飲み干そうと飛来する。

 プテラブレードは空中でそれを躱しながら、すれ違いざまに双剣で切り刻む。細切れになった肉の砲弾は、灰の塊へと転じながら路面を転がり消え失せた。


 ズザァ、と靴を擦り減らすようにして着地する。予備動作(ルーティーン)めいて双剣をクルリと1回転。

 悪女野風の醜悪な姿を見据えるプテラブレードの目には、未だ闘志の炎が宿っている。


 それでも。


「これは、ちょっとキッツいなぁ……!」


 額の傷口から流れ出て、口元まで達してきた血をペロリと一舐め。

 そうして一切の前触れ事なく、背後から飛び掛かってきた鬼の怪物を切り伏せる。自分に向かって倒れ込んでくる灰の塊を蹴り飛ばし、ボフンと灰煙を起こした。


「倒しても倒してもキリが無い……教授、ジャックさん! 本当に他のヒーローは来ないの!?」

「残念ながらネ」


 プロフェッサーが怪物を氷漬けにしながら答える。


「他の地区でも、怪物どもの活性化に便乗してヴィランが暴れているらしいヨ。いやはや、ここまで来ると一種のお祭り騒ぎだヨ」

「言ってる場合ですか!」


 切り捨てジャックが叫ぶ。彼は今、マンホールを武器として担ぐトロールと対峙していた。


「TOROGOOOOON!!」


 トロールが振るうマンホールの一撃を躱し、右手に持っていた刀を納める。

 マンホールを振り下ろしたトロールの太く大きな右腕に足を乗せると、そのまま右腕を伝って駆け上がる。

 トロールの首元まで到達すると同時に抜刀。巨大な怪物の首を切り捨てる。


 しかしそれだけに終わらない。崩れゆくその死体を足場に跳躍し、空中から迫るモスマンを一刀両断。

 サクリと切り捨てられたモスマンが灰のシャワーを降らせるが、切り捨てジャックはそれを気にした様子も無い。

 そうして、納刀しつつの着地に成功する。彼の背後から、鬼の怪物が鈎爪を振り上げるが……


 BAN!


 銃声と共に、鬼の頭部が吹き飛んだ。

 目線をそちらに向けてみれば、巨大な銃を手にした重装甲の男たち。アーマーの左胸部分には、美しい桜の代紋がペイントされていた。

 警察の機動部隊である。切り捨てジャックはペコリと一礼し、機動部隊の面々に感謝の言葉を贈る。


「すみません、助かりました」

「いいって事よ。俺たちもたまにはイイところを見せないと、また税金泥棒だの何だのって言われるからな」

「ヴィランだの怪物だのがどうした! こちとら天下の公務員、市民の平和の為なら百万馬力だ!」

「一般市民の避難は終わっています! あなたたちは周囲を気にせず、思いっ切り戦ってください!」

「仔細承知!」


 地面を蹴り飛ばして戦場を突っ切る。見た者を切り伏せてしまえそうなほど鋭い視線を怪物どもへ向けながら、切り捨てジャックは刀に手を添えた。


「“切り捨て──御免”ッ!」


 抜き放たれた刃は、その研ぎ澄まされた銀色の剣閃を以て怪物どもを切り伏せる。

 その様子を見て「フゥム」と声を漏らすのはプロフェッサーだ。


「ジャック君も警察も頑張ってくれているガ……少々厳しいものがあるネ」

「まったく同感! あたしたちだけじゃ手が足らない、もんっ!」


 刃が閃く。怪物の心臓を上半身ごと断ち切った直後、プテラブレードは悪女野風が撃ち放った肉の鞭を知覚する。

 崩れ落ちていく怪物の下半身を足場に跳躍し、肉の鞭によるダメージを脇腹のかすり傷のみに留める事に成功した。


「“ラプトルクロー”!」


 次いで攻撃。鈎爪めいて鋭い双剣の切れ味は落ちる事なく肉の鞭を、半ばで引き裂く。

 切り離された肉はビチビチと痙攣を繰り返し、ガチガチと不快な音と共に歯を噛み合わせるが、直ぐに灰となって消滅した。


「悪女野風を何とかしようにも怪物が邪魔で、怪物を何とかしようと思ったら悪女野風を倒さないといけない!」

「ジレンマというやつだネ。ともあれ、最優先事項は賢者の石の破壊ダ。あれが悪女野風のパワーの根元であり、怪物どもを誘引する原因でもあル」

「せめて、そう。4人も5人も、なんてワガママは言わないから──」


 ふぅ、と素早く呼吸。酸素を全身に行き渡らせる。


()()! あと1人でいいからヒーローが来てくれたら、この状況を何とかできる!」

「同感だヨ。……“ママレードニードル”!」


 プロフェッサーがステッキを振るう。路面から生えた幾つもの氷の棘が怪物どもを串刺し死体に変えた。


「GISYOOOOOOO!!」

「…………ム!」


 次の瞬間、氷の棘の間を縫い、1体のモスマンがプロフェッサーへと肉薄する。

 死角からの不意打ちに一瞬判断が遅れ、しかしバックステップによって寸でのところで回避。

 すぐさまモスマンを氷漬けにするプロフェッサー。離れた場所のプテラブレードへと向き直り、彼は()()に気付いて声を荒げた。


「プテラブレード君! 後ろダ!」

「へっ──?」


 ドスン。


 プテラブレードの後ろに迫ってきていたのは怪物トロール。それも巨大な個体だ。右手には大きな大きな斧を手にしており、斧だけでもプテラブレードより大きい。

 彼女が気付いて振り向いた時には、トロールは既に斧を振り上げていた。


「あ…………」


 回避、間に合わない。迎撃、非常に困難。先に仕留める、遅すぎる。

 明確な殺意は時として、標的の肉体を硬直させる。例え、標的が鍛錬を積んだ強者であったとしても、だ。

 事実、唐突の奇襲によって思考が停止寸前まで陥り、プテラブレードは足を動かせずにいた。


 プロフェッサー・キャンディが魔法を放とうとする。しかし怪物どもがプロフェッサーへと群がっていく。

 気付いた切り捨てジャックが向かおうとする。しかし彼の脚力を以てしても遠過ぎる。


 今まさに、トロールが巨大な斧を振り下ろす。膨大な質量を秘めた金属の塊は、若い少女を一瞬でミンチに変える為にこれほど最適なものは無い。

 誰も間に合わない。誰も対処できない。


 そうして質量を持った殺意は、プテラブレードという1人のヒーローをこの世から消し去るべく──


「アラクネーの蜘蛛糸を紡いだ繰り糸(ストリング)


 パシュ。


 戦場に似合わないほど軽く小さな音と共に、か細い糸が空中を走る。

 トロールへ向けて真っ直ぐに飛来する幾本もの糸は、振り下ろされる寸前のトロールの右腕へと巻き付いた。


「TO、RO……ッ?」


 グッ、と腕を振り下ろす動作が中断される。

 首を傾げるトロール。いくら右腕を動かそうとしても、腕を縛り付けるナニカがそれを阻害する。

 それどころか、トロールが腕を動かそうと試みる度に糸が肉へ食い込み、逆により動かなくなる始末。


「…………え……?」


 トロールの身に起きた異変に気付くヒーローたち。

 間近にいたプテラブレードは、その超人的な視力で気付いた。トロールの右腕に、細く白い糸が何重にも絡み付いている事に。


「ヒドラの呪詛毒を塗ったダーツの矢」


 バスン、と音を立ててトロールの後頭部に何かが突き刺さる。トロールと対面しているプテラブレードには見えなかったが、彼女たちから離れた場所に立っているプロフェッサーは気付いた。

 ダーツだ。先端に何かの液体が塗られたダーツの矢が数本、トロールの後頭部に突き刺さっている。


 その直後、トロールが斧を手放す。そうしなければならないほどに、トロールは苦しんでいた。

 ブクブクと血の泡を吹き、動かせない右手の代わりに左手で喉を掻きむしり。

 やがて目の裏返ったトロールは、ダラリと舌を垂らしながら崩れ落ちた。力無く斃れていくトロールの右腕から、糸が生き物のような動きで(ほど)け、どこかへと離れていく。


「一体、何ガ……まさカ……!?」

「教授! プテラブレードさん! 一体……どうしたというのですか!?」


 切り捨てジャックの叫び。一番遠い場所で絶え間なく怪物どもと戦っている彼は、プテラブレードの身に起こった状況を上手く把握できずにいた。

 機動部隊も協力してくれてはいるが、いい加減彼らや切り捨てジャックでは対処し切れないほどに怪物どもは押し寄せてきている。


「ルーン文字を刻み込んだカード」


 そこへ、戦闘によって舞い上がった砂埃を引き裂きながら飛来する小さなナニカ。

 自分のいる周辺へと投げ放たれたらしいそれの正体に、切り捨てジャックのみが気付いた。

 トランプほどの大きさの白紙のカード、それが3枚。そのいずれにも、淡い赤色に輝く何らかの文字が記されていた。


 飛来する3枚のカードは砕けた路面に刺さり、或いは怪物の額へと命中。カードに記された文字が一層輝きを増した次の瞬間──


 ボガァ!


 カードを起点として炎が噴き上がり、激しく爆発。それがカードの枚数分、つまり3回。

 3か所で同時に引き起こされた爆発は、周辺にいた哀れな怪物どもを瞬く間に呑み込み、激しい爆炎で焼き尽くした。


 熱風が戦場にまき散らされ、その轟音と合わせて怪物どもを硬直させる。それは機動部隊の面々や3人のヒーローも例外ではなく、しかし。


「Aッ──AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!?」


 悪女野風のみが例外だった。

 彼女はけたたましい獣めいた絶叫を上げると、空中のただ1点のみを凝視した。


 悪女野風だけが知っていた。悪女野風だけがそれを見ていた。

 トロールの動きを縛ったアラクネーの糸、トロールを仕留めたヒドラ毒のダーツ、怪物どもを吹き飛ばしたルーンカード。

 それらがどこから飛来したのかを、悪女野風は見ていた。そして──


「NEEEEE!! ZUUUUU!! MIIIII!!」


 それらが()()()()()()()()()()()を、悪女野風は知っていた。


「SAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN!!」


 耳をつんざく絶叫。

 理性を失い、原型さえ失った今になってもなお、悪女野風は覚えていた。

 憎き敵。自らの邪魔をし、自らに再起不能になるほどのダメージを与えた恐るべき敵。


 それが今、空中にいる。

 悪女野風は右腕を振り抜いた。ブヨブヨとした歪な右腕はたちまちゴムのように伸び、先端を鋭く尖った槍へと変化させる。


 プテラブレードはそれを見た。切り捨てジャックはそれを見た。プロフェッサー・キャンディはそれを見た。

 悪女野風が放った肉の槍。その矛先にいる、自分たちが知る“彼”の姿を。


まことの銀(ミスリル)を鍛え上げた鎖」


 肉塊の見た目をした殺意が迫り来る。標的となった“彼”はそれに臆する事なく、右袖から鎖を打ち出した。

 太陽の光を受けて青白磁色に煌めく幾筋もの鎖は、ジャラジャラと音を立てて肉の槍に巻き付くと、その動きを一瞬で縛り上げる。


「GIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?」


 悲鳴を上げる悪女野風。それもその筈、ミスリルの鎖で縛られた箇所が大きな音と共に焼け落ちていく。

 肉の槍の先端へと着地する“彼”。槍を縛り上げている鎖を強く握り締めると、閃光を伴ってスパークを走らせた。魔力放出(サンダーボルト)である。

 魔力伝導体であるミスリルの鎖を通して、その出力を増幅させた魔の電流はたちまち肉の槍を焼き焦がしていく。


 閃光。雷鳴にも似た破裂音。

 やがて肉の槍は先端からボロボロと灰と化して崩れていった。

 穂先に立っていた“彼”は行き場を失った鎖を回収すると、砕け切ったコンクリートの路面の上へと、何でもないように着地する。


「魔性へ堕ちた貴様にはよく効くだろう」


 まるでこの世ならざる者のような、重く低い声色。


 “彼”は、怪物蔓延るこの戦場においてなお、異質極まる存在だった。

 まず目を惹くのは、漆黒に染まったローブマント。白昼の日の光を以てしても照らせないほど黒い布地は、“彼”の全身やその体型はおろか頭部までをも覆い隠している。

 そして顔はと言えば、漆黒のマントに似合わぬ純白の仮面で隠されていた。無機質極まる仮面の奥から覗く瞳は、如何なる感情を宿しているだろうか。


 しかし、3人のヒーローは。チーム『樫の杖の七番目(セブンスオブオーク)』の面々は、“彼”の正体を知っていた。

 彼が如何なる存在であり、善悪どちらの陣営に属しているのか。そして──正義(ヒーロー)か、邪悪(ヴィラン)か。

 “彼”の在り方を、この場に集ったヒーローたちは誰よりも知っていた。


 顎髭を撫でるプロフェッサー・キャンディ。

 プロフェッサーは“彼”に近付くと、モノクル越しにダンディな眼差しを“彼”に浴びせかけ、そして言葉を投げかける。


「やァ、“怪人黒マント”君。こんな昼間から市民の往来まで出てきていいのかネ?」

「ああ、勿論だ。随分と待たせてしまったようだな」


 “彼”──“怪人黒マント”はコクリと頷いた。それを受けて、プロフェッサーもニヤリと笑みを1つ。

 やがて2人の下へ、周囲の怪物を蹴散らしてプテラブレードと切り捨てジャックが合流する。

 2人もまた黒マントの姿を認めると、安堵したような笑みを見せた。


「黒マントさん、あなたもここへ来たのですね」

「手が足りないのだろう? 幾らでも貸してやる、俺の道具たちをな」

「まったく頼もしい事で。いいでしょう、背中は任せますよ」


 切れ味の研ぎ澄まされた目線はそのままに、おどけるような笑顔を見せる切り捨てジャック。

 そこに、黒マントへの敵意や不信感は一切無いように見えた。


「かけ……黒マント君!」


 そしてプテラブレード。彼女はどこまでも透き通った目で黒マントをじっと見据える。

 黒マントもまた仮面越しに彼女と目を合わせ、暫し目線が交差する。


「昨日の会話、覚えてる?」

「ああ」

「それじゃあ、あたしが代表して聞こうか」


 答えなど、とうに分かり切っている。彼がこの場にいる事そのものが答えであるからだ。

 その上で、プテラブレードは問いかける。


「あなたは、何の為に戦うの?」

ヒーロー(あなたたち)と共に在る為に」


 即答。

 黒マントの言葉には確かな決意と、明らかな重みが秘められていた。


「それが俺の戦う理由だ」

「そっか……うん」


 笑顔を見せるプテラブレード。

 それは満開の向日葵のように明るく、生命力と可憐さに満ちた美しい笑顔だった。

 心から黒マントを信頼している。そんな意志の感じられる感情。真っ直ぐとした意志の明るさは、見る者を惹き付ける魅力を帯びているようで。


 黒マントはそれに頷くと、プロフェッサーに向き直った。


「教授、宿題(レポート)の提出だ」

「フム、聞こうカ」

()()()()()()()


 目を見開くプロフェッサー。しかし、その眼差しに驚愕の感情は無い。


「俺は善で在る者。俺は悪と戦う者。俺は正義の味方──ヒーローであると、そう在りたいと決めた」


 重みのある言葉。

 たった1日で如何なる事があったのか。それに思いを巡らせるだけで、プロフェッサーは心の底から湧き上がる歓喜を抑えきれずにいた。

 次第に彼は、声に出して笑い出す。嬉しさが止まらない。楽しさが止まらない。


「クックックック……そうかいそうかイ。ならば良いだろウ。我々『樫の杖の七番目(セブンスオブオーク)』は、君という新たなヒーローを歓迎するヨ。それに差し当ってだガ……」

「なんだ?」

「君、ヒーローネームはあるのかネ? いつまでも“怪人黒マント”のままではいけないだろうサ」


 プロフェッサーの言葉に、黒マントは「ああ」と頷く事で同意する。


「確かにその通りだ。怪人など超人の蔑称か、そうでなければ変質者の類いだろうよ」


 顔を上げる黒マント。

 “怪人黒マント”は1度死んだ。今ここに立っているのは、新たな1人のヒーロー。

 故にこそ、生まれ変わった事を示す記号は何よりも重要なものだった。


「だから、俺の事は──」


 新しい名前はさっき決めた。

 翔は自分にセンスが無い事を自覚していたが、それでもこの名前がよかった。

 街の人々が呼び始めた“怪人黒マント”という字名(あざな)。それを受け継ぎながらも、自らが怪人ではなくヒーローである事を表す新しい名前。

 それは──


「──“怪傑黒マント”と呼べ」


 “怪傑黒マント”。


 それこそが、黒井 翔という少年が構築したヒーローとしての在り方。

 都市伝説の“怪人”は終わりを告げ、今ここに“怪傑”という名のヒーローが生まれた。


 ヒーローと共に在る者、その名は怪傑黒マント。

 そんな新しいヒーローの誕生を、3人のヒーローたちは心から祝福した。


「怪傑……ウン、実に良い名前ダ」

「今までと同じように黒マント君って呼んでいいよね?」

「当然だ。俺の事は好きなように呼ぶといい」

「歓迎しますよ、怪傑黒マントさん。しかし──」


 切り捨てジャックがある方向を見る。他の3人もまた、つられて彼の目線の先へと振り向いた。

 そこには。


「NEEEEEEEEEEEEEEEEE!! ZUMIIIIIIIIIIIII!!」

「GEKOKOKOKOKOKOKO……!」

「GISYAOOOOOOOO!!」


 絶叫めいた奇声を上げる悪女野風。見れば、先ほど黒マントが焼き焦がした右腕も再生している様子。

 そして悪女野風の叫びに呼応して、怪物どももまた我に返り、戦闘態勢に入っていた。


 それを受けて、各々の武器を手に構えるヒーローたち。


「奴ばらがお待ちかねのようです。さっさと切り捨てますよ」

「そうだネ、どうやら講義を中断したせいで学生たちが騒ぎを起こしているようダ。早く講義を再開するとしよウ」

「それじゃあ──」


 プテラブレードの手の内で双剣が転がされる。それが予備動作(ルーティーン)である事など言うまでもなく。


「行こう、黒マント君! 頼りにしているからね!」

了解した(アイ・コピー)


 そうしてヒーローたちは一斉に駆け出した。

 ヴィランという強大な敵に立ち向かうべく、人々を怪物どもの脅威から守るべく。


 その使命を強く胸に抱き、怪傑黒マントという新たなヒーローは、マントの袖から魔法の道具(マジックアイテム)を取り出した。

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