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魔王


「えぇぇぇえぇぇ!?」

「どうしましたか!? マスター!」

「あ、悪い。少し驚いてね……」


ダンジョンから帰った翌日の朝、自分のステータスに新しい職種が追加されてるのを発見した。



職種:勇者 Lv.92 魔王Lv.2

魔法:All Lv.58 闇属性魔法Lv.179



ま、魔王?

職種に魔王なんてあるのか……?

というか、魔王って勇者と正反対の職業だろ!?

俺は栄光の勇者なのか、はたまた冷酷な魔王なのか分からなくなってしまった。


「ねぇ、エレナ」

「何ですか?」

「職種に魔王なんて存在するの?」

「いえ、魔王の職種を持ってい()のは世界でたった一人だけですよ」

「いたという事は、今はもういないの?」

「ええ。前に召喚された勇者に打ち破られました」

「そっか……」


過去に実在した魔王はたった一人で、もう亡くなっているらしい。

あの加護は、亡くなった魔王が残した加護なのか?

てか、幽霊からの加護か……少し抵抗あるな。


「もしかして、【魔王】の職種を手に入れたいんですか?」

「あ、そうだよ。ほら前に僕、魔王になりたいって言ったじゃん」

「そうでしたね。私も【魔王の臣下】という職種が欲しいです……」

「えっ? そんな職種があるの?」

「はい。【魔王】の職種を手に入れた方に隷属している人は、その称号を手に入れられます」

「へぇ〜〜」


魔王の職種を持っている人に隷属……

ということは、アリスとエレナには【魔王の臣下】という称号があるのか?

となると二人だけじゃない、ゼンまでもがその称号を持っているかも。


そう思って奴隷達のステータスを見てみる。

見ると、全員の職種に【魔王の臣下】が追加されていた。

これでもっと闇魔法が上がるようになるかもね。

魔王への道は案外近いかもしれない。


「エレナ、アリスはまだ眠ってる?」

「はい。まだ眠っていますよ」

「なら、二人で街へ出かけようよ。アクセサリーとか買ってあげるよ?」

「え!? 良いのですか?」

「うん。 闇の魔術の本も買いたいしね」

「分かりました! では、行きましょう!」

「えっ、準備しなくて大丈夫?」

「ええ。マスターといつでもダンジョンへ行けるよう、普段から身支度はしてあります」

「へぇ〜そうなんだね。じゃあ行こう」


そして河川宿屋を出て、街へと向かった。






「やはり王都は賑やかで本当に良いですよね」

「そうだね。あのスイーツとか美味しそう!」


と言ったが俺は甘いもの、苦手なんだよな。

はぁ……ぶりっ子って疲れるよ。

奴隷の前でもかわい子ぶらなくても良いかもしれないが、もう染み付いてるし。

仕方ない、このままで行こう。


「じゃあアクセサリー屋さんでも行こうか?」

「はいっ!」


そして近くのアクセサリー屋に向かった。

ぶっちゃけ俺は買い物が嫌いだ。

何が楽しいのか全くもって分からん。

だから、アクセサリー屋なんて行きたくなかったが……

アリスにトランプ柄のアクセサリーとか買ってあげたいし……エレナにも好きなアクセサリーを買ってあげたいからな。


「イヤリングからネックレスまでたくさんあるね。エレナは何が欲しいんだい?」

「私は……マスターに選んで欲しい、です……」


エレナは俯きながら、俺に選んで欲しいと言った。

え、ちょっと待て!

俺は元の世界で彼女は数人しかいなかったから、

こういう時、どんなアクセサリーを選べば良いか分からねぇ!

告白された事は何回もあるけどさぁ……嘘告かもしれないだろ?

こんなブサイクに告白するかって思って、いつも断ってるし。

今思えば、罰ゲームで俺に告白してきたんだろうな……

話が脱線したが、俺がエレナのアクセサリーを選ぶって事だろ?

無理無理! 俺はセンスないから!

俺が選んだところで引かれるだけだし!


「いやぁ、僕はセンスないから……自分で好きな物を選ぶと良いよ。 エレナはセンスあるからね!」

「いえ、私はマスターに選んでもらいたいのです。ダメでしょうか?」

「わ、分かったよ。僕が選んでみるね」

「ありがとうございます!」


少し可愛げに断ったんだが、エレナは押し切って俺に選んで欲しいと言ってきた。

マジで俺、センスないんだけど。

俺はとりあえず、近くにあったイヤリングに目を通して見る。

花、ラメ、パフェなど……色んな柄があった。

あれ? パフェのイヤリングなんておかしくないか?

流行ってるのかね?


「ん〜」


あ〜 どうしよ、決まらない。

ネックレスも見たんだけど、チョーカーとかシルバーとか種類がありすぎて……

それに俺はイヤリングの方が好きだから、イヤリングの中から選ぶ事にした。


マーガレットのイヤリングか……

可愛いけど、エレナって感じじゃないんだよな。

だったらこっちにある、月のイヤリングとかは良くないか?

格好良い!

まぁ選んだは良いんだけど、問題はエレナが気に入ってくれるかどうかなんだよなぁ。

一か八か聞いてみるか。


「な、なぁエレナ。この月のイヤリングとかどうかな?」

「月……ですか?」

「うん! エレナって僕とアリスを影から支える月の様な存在だから選んだんだ〜 どうかな? 似合うと思うよ☆」


どうだ!

可愛さでごり押ししてみたけど……

気に入らなかったら、軽くショックだな。

エレナは俯いているので、表情が分からない。


「ど、どうかな?」


エレナの反応がなかったので、恐る恐る聞いてみる。

俯いてるって事は、気に入らなかったかもしれない。

マスターはセンス無いですね、なんて言われたら大泣きするぞ?


「エ……レナ?」

「良いです! 可愛いです! マスターはやっぱりセンスありますよ!」

「そ、そう? 喜んでくれて嬉しいよ?」


はぁ……無駄に神経を使った。

今日でまた、自命が縮んだな。


「あとアリスにはトランプ柄のアクセサリーを買って、と。そして次に魔道書を買って帰ろう!」

「はいっ!」


そしてあっという間に時間が過ぎて、気づいたら夕方だった。


「今日はありがとうございました! とても有意義な時間を過ごすことができました!」

「うん、僕も楽しかったよ。また今度王都に来ようね」

「はい!」

「じゃあ僕は王都に用事があるから、先に帰ってて。転移で宿屋まで送るよ」

「了解です!」

「じゃあまた後でね〜」


エレナを無事に宿屋へと送り届け、俺は一人、城へと向かった。


「あ、あの時の! 雪哉さぁーん!」

「あ、お前は……!」


城の門番をしている奴が馴れ馴れしく話しかけてきた。

お前は……!

前回に城へと出向いた時に、俺を罵倒してきたクソ門番だ!

まぁその後、俺がかわい子ぶってベタ惚れさせたんだけどな。


「今日も女王サマと会うんだ〜 門を開けて♡」

「うん! もちろん良いよ! 雪たん!」

「チョロいな……」

「へ?」

「ううん、何でもないよ。門を開けてくれてありがとう♡」


おぉーっといけない。

心の声が漏れてしまった! 気をつけよう。

でも幸い、このバカ門番には聞こえてなかったようだ。


「さぁ、どうぞ。お姫様」

「あ、ありがとう……」


だぁれがお姫様だ!

俺はれっきとした男だよ!

まぁ中に入れただけ良しとするか。


城の廊下を歩いていると、傭兵やメイド達が俺を惚れた様に見つめてくる。

やっぱり一般人は、落とすの楽だな。

でもあんまり調子乗ると、痛い目見るからこの辺でやめておこう。

しばらく心を無にして廊下を歩いていると、執事の格好をしたジークとゼンと遭遇した。


「お、ゼン!久々だな」

「お久しぶりですね、マスター!」

「二週間ぶり位だな」


ゼンは少し髪が伸びたようで、髪を後ろで束ねている。

二人とも大人になったなぁ。

まぁ二週間しか経ってないけど。


「あ、そういえば城で変わった事とかはなかったか?」

「無かったですよ。平和です」

「でも、マスターが言ってたクロエって騎士は怖かったです。私が闇魔法を使えるって言っただけで、凄い顔で睨んできたんですよ」


クロエは相変わらずの様だ。

あいつは嫉妬が激しいからなぁ。

さしずめ、ゼンと俺を重ねたんだろう。

本当に嫉妬って醜いよな。


「まぁクロエはそんなに強くないし、ほっとけばいいさ。あと一週間後の天使の襲撃の事なんだが、お前らも戦えるか?」

「もちろん戦います!」

「分かった。俺は河川宿屋にいる。一緒に戦いたいなら5日後に来てくれ」

「了解!」

「それじゃあ、またな」


ひらひらと手を振って二人と別れる。

そしていつもの可愛い男子の顔を作り、女王の部屋へと足を進めた。


そういえば今回は、召使いの人に王の間じゃなくて女王の自室に行ってくださいって言われた〜!

嫌な予感しかしないんだけど!


てか、女王の自室の部屋のドアも綺麗だ。

縦3メートルくらいの大きさはあるな。

ヤバイ、入るのに躊躇ってしまう。


コンコン


「どうぞ」

「失礼します」

「あら、雪ちゃんじゃない。どうしたの?」

「今日はな、天使狩りの時にお前のとこで勤務してる三人を貸してくれって頼みに来た」

「あーゼン君達のこと? 全然大丈夫よ」

「そうか。ならもう帰る」

「えー、冷たいわね。私の彼氏なのに」

「彼氏の演技(フリ)だ!」

「まぁまぁ〜 じゃあまたね」


そして俺は部屋から出ようとした……が。

ある事が気になって部屋から出なかった。

ある事……それは、


「ねぇ、女王の名前って何なんだよ?」

「知らなかったの? 」

「いや、みんな知らないだろ?」

「確かにそうね……自己紹介しなかったし」

「で名前は?」

「ステファニー・S・ラーストルよ」

「へぇ〜 間のSって何?」

「Sはソフィアの略よ」


ステファニー……王冠、花輪、王位、栄誉か。

いい名前だな、格好良い。

ソフィアは英知、賢人的な意味だな。

名前の由来があって本当に羨ましいよ。

俺なんて雪哉だよ?

冬に生まれたから雪哉なんだぜ?

適当すぎだろ!


「ソフィアね。把握。それじゃ」

「ええ。またね、雪ちゃん」


ムム、と思ったがそのまま振り返らずに家へと帰った。




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