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紅い龍



「体力も残ってますし、行ってみましょう」

「そうだねっ! 私もまだ暴れ足りないし」


暴れ足りないってどう言う事だ?

最近、アリスの言動が怖くなっているんだが。

さっきも俺を庇う為とはいえ、凄い形相で相手を睨んでいたし。

何か闇がありそうだな。


「じゃ、じゃあボス部屋に行こう。一応、マナーポーションを飲んでおいてね」

「はい、分かりました」


マナーポーションは、魔力を回復する薬だ。

液状で本当に不味く、吐き気がするほど。

しかし効き目は本当に良いので、俺らは我慢して飲んでいる。

だが、1瓶 銀貨1枚=1000円と割と高めだ。

まぁ、女王が()()に支援してくれているので、金の心配は要らないのだが。


「ねね、エレナ。どんなボスが来ると思う?」

「そうですね…… ドラゴン辺りでしょうか?」

「ブフッ!」


エレナのトンチンカンな発言に、ついマナーポーションを吹いてしまった。


「大丈夫ですか!? マスター!」

「エレナのせいだよー、急にドラゴンなんて言うからさー」

「そうだよ、エレナ。ドラゴンなんている訳ないでしょ? ドラゴンって大抵、50層あたりにいるんだし」

「えっ! そうなんですか!?」

「逆に知らなかったの……」

「マスターの言う通り、ドラゴンなんていないんだよ」


ヤバイな……何かテンプレ展開になりそう。

いないよそんな奴とか言ってたら、実はいましたみたいな?


もう既にフラグ立ってるし……

オレ、ドラゴンとは戦いたくないっ。

怖いし!


「まぁ、我が目で見ないと始まらない。行くよ」

「えっ、ちょっ、待ってください!」

「せっかちですよー、マスター」


そしてボス部屋の、入り口の扉を開いた。







「うわぁっ、暗いよ! マスター!」

「アリス、静かにして下さい!」


ボス部屋は100メートル程の縦長の部屋で、周囲にろうそくが灯っている。

それにしても薄暗いな……


見た所、モンスターらしき生物はいない。

何処かに隠れているのか?


エレナは真剣な表情で槍を構え、身体強化の呪文を唱えている。

アリスもアリスでことのほか緊迫した表情を浮かべ、80センチも無いほど短いショートソードを構えていた。


そんな二人の様子を見て、俺にも緊張感が高まってきた。


「命ずる……我の速度を上げよ。スピードファスト」


俺は俊敏強化の魔法をかけ、鎌を構えた。

何処に隠れていやがる……!

すると……


ポタリ


「ん?」


何か上から水が垂れてきた。

雨水?

違う…… これって!?


「上だよっ!!」


「ぐぁぁあぁあぁ!」


アリスに言われて天井を見上げると、ドラゴンが口を大きく開いて奇声をあげていた。

やっぱりテンプレ通りに竜いますよね……

もう泣きそう……


「何で……ドラゴンがここにいるの!?」

「あれはトカゲ型の小ドラゴンですよ。ドラゴンよりはあまり脅威ではありませんが……」

「ありませんが?」

「……凄く強いです」


「GAAAAAAAAA!」


「きゃー!」

「わぁぁぁぁ!」

「ぎゃーーー!」


ドラゴンが炎を吐いてきたので、慌てて退避する。

だが、俺は反応が遅れて火傷を負ってしまった。


「ゔっ……」

「マスター!」

「マスタァ! 大丈夫!?」


俺が足から崩れ落ちる様に倒れると、心配した2人が駆け寄って来た。


「僕は大丈夫だ……僕は一旦後ろに退避する。僕が回復するまでドラゴンの相手を頼む……」

「はい! お任せ下さい!」

「任せて!」


そして二人は強く頷き、ドラゴンに向かって走って行った。

ここは危険だ、俺は今重度の怪我を負っている。

また炎を吐かれたりしたら、それこそ一発KOだ。

俺は悲鳴をあげる体に鞭を打って、足を引きずりながら後ろに退避した。


「ぅくっ……」


それにしても痛いな……

足は火傷で皮膚がただれてしまっている。

左手は所々灰になっていて、もう動かない……


「うっ…… め、命ずる……我の傷を癒したまえ……エクストヒール!」


俺は今使える中で、一番強い回復魔法を使った。

魔力が大量に体から抜けていく感覚がする……

すると、どんどん傷が癒えていった。


「よし……」


そして今度は鎌を床に置いて、氷鳥の剣を取り出し、構えた。


「飛べよ……氷鳥! 」


剣が青く光り、翼のような紋章が俺の手に刻まれた。

これなら行ける気がする……!

俺は剣を強く握りしめ、ドラゴンに向かって走った。


「うっ!」

「大丈夫ですか!? アリス!」


一方アリスとエレナは悪戦苦闘をしていた様だ。

アリスは無茶をしたのか、酷い怪我を負って気絶している。


「エレナ!」

「マスター? 傷はもう大丈夫なのですか!?」

「まあね。エクストヒールで治した。それよりアリスは大丈夫?」

「ええ。ドラゴンの爪で引っ掻かれまして……」

「……分かった。エレナは、闇の壁(プロテクション)を張ってアリスに回復魔法をかけてやってくれ」

「……了解しました」

「じゃあ、アリスを任せた!」


そして俺はドラゴン目掛けて、一目散に走った。


「我の身体を鋼で包みたまえ……鋼の肉体(ディフェルムアップ)!」


身体に防御魔法をかけ、炎の中に突っ込む。

だが防御魔法があまり効かず、所々火傷を負ってしまった。


「うっ……!」


痛い……!

とうとう倒れそうになった所で……


「何だ?」


剣から氷鳥が数匹出てきて、体を包み込んでいく。

すると、手と足が氷に包まれていった。

別に冷たい訳でもない。

だが、炎を熱く感じなくなった。


「これなら行ける!」


そして剣を握り直し、再び走り出した。


「ガァァァ!」


認識阻害の魔法をかけてから、竜に急接近し、右足を切り落とす。

氷鳥の剣のお陰だろうか、切られた部分の周りが凍っていた。


「グゥアァァア!」

「うるさいな……黙れよ」


そして術式を展開する。

ドラゴン1匹をまるまる消し去りたいので、相当強い威力の魔法じゃなきゃな。


「ハァ……さぁ、闇の精霊よ。今こそ我の役に立て……」


黒ノ雪(フォンセレァーダス)


この魔法は、俺がオリジナルで作ったものだ。

周囲に黒い雪を発生させ、この雪にかすりでもすると全身が黒く染まり、死んでしまうのだ。

この魔法には、どんな回復魔法も効かない。

どんなベテラン冒険者でも一撃で殺せる、すごい技だ。

本当にこの魔法を作るのは、大変だったなぁ。


一方、ドラゴンはと言うと……

すぐに雪に触れて、お亡くなりになりました。

ドラゴンは図体がデカいからなぁ。

防ぎきれる訳がないよな。


「はぁ……疲れた……」

「マスター、お疲れ様です」


俺が疲れ切ってその場にしゃがみ込むと、すぐにエレナが駆け寄ってくれた。

本当に良い子だよ、うちのエレナ。


『ヒール』


そして回復魔法までかけてくれた。

後で何か褒美をあげようか。

今回の討伐でエレナはよく頑張ってくれたし。


あ、そういえば……アリスは大丈夫か?

アリスを探して、周りを見渡す。


「なぁ、エレナ。アリスは大丈夫なの?」

「えぇ。容態は安定していますよ。軽度の火傷だったので、心配はいりません」

「そう……」

「マスターこそ大丈夫ですか? 酷い火傷を全身に負っていたと思いましたが……」

「あの程度は問題ないよ。エクストヒールで何とかなった」

「そうですか。マスターの治癒能力は本当に長いですね。羨ましい限りです」

「そうか? そうでもないと思うけど…」


エレナは治癒スキルを上げたいのか?

俺が回復魔法を使うと、いつも褒めてくれるし。

回復魔法は、魔法適性が無くても使えるので、エレナも使える。

だが、魔法適性が無いと魔法効率が悪くなってしまうからな……

何とも言えん。


他にも魔法適性が無くても使える魔法はたくさんある。

例えば……


付与魔法エンチャント

・鍛治魔法

・錬金術魔法

・裁縫魔法

・薬魔法


などなど。


「エレナは治癒スキルを上げたいの?」

「えっ?」

「いつも興味津々に、僕の回復魔法を見てるよね?」

「まぁ、興味があるかないかと言われれば、あります。自分で強い治癒魔法を掛けてみたいと思いますし……」

「じゃあ今度、僕が治癒魔法の術式展開を教えてやる」

「本当ですかっ!?」

「うん。今回、エレナは大分役に立ってくれたからね」

「ありがとうございます!」

「あとは何が欲しい? 他にも欲しいものがあれば買うよ」

「う〜ん。今、これといって欲しい物は無いんですよね。マスターが何でも買って下さってますし……」

「そう……?」


いや、待てよ!?

エレナは欲が無さすぎないか!?

いつもいらないって言うし……

本当に心配になって来たぞ……!


3日くらい前に俺が……


『欲しい物はない?』


ってエレナに聞いた時も、今回と同じ様な回答をしていたな。


『お気持ちだけで充分です』


とかわされてしまったし……

今回は何かあげたい。

いつも役に立ってもらっているのに申し訳ないし。

俺が出来ること……出来ること……


そうだっ!

付与魔法を使ってアクセサリーを作ろう!

錬金術魔法のレベルもそこそこあるしな……


まぁでも、今日の所は帰るか……


「じゃあエレナ、帰ろう。転移を使うから俺の側に寄って」

「ええ」


そして俺がアリスを運んで転移の術式の上に横にならせる。

そして、転移で宿屋に帰った。




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