スパイの育成
奴隷のステータスを見て思ったんだが、俺の奴隷になると魔王の加護がついて、闇魔法が使えるようになるんだな。
だが、パーティ組んだだけでは魔王の加護はつかないっぽい。
実際、クロエの時は加護がつかなかったし……
もしかして、相手の信用度によるのかもな。
俺は終始、クロエの事を信用していなかったし。
てか俺が買った奴隷のレベルがそこそこ高い。
これならすぐに、一人前の騎士レベルになるだろうな。
じゃあ、黒魔術の本でも読んで寝るか。
そう思っていたのだけど、結局翌朝まで読んでしまった。
「おはようございます。マスターのおかげで快適に眠る事ができました」
「そうか。あぁあと、お前の名前を決めた。名前はゼン・ルイス』だ」
「ゼン……?」
「ああ。呼びやすそうな名前だろ。執事だからな」
「なるほど! マスターは名前をつけるセンスがあると思います!」
「そうか? 適当だぞ?」
「私の名前の、ルイスは昔の遠くの国の王族の名前でしたよ。マスターにはやはりセンスがある」
「大袈裟だろ」
ゼンはこげ茶の髪に、茶色の目。
顔はこの世界でも頭一つ飛び抜けて整っているので、女王も喜ぶだろう。
だけ髪がボサボサなんだよな……
俺は髪切るの苦手だし、理容室にでも行くか。
「お前ら、理容室と服屋に行くぞ。ついてこい」
「理容室?」
「ほら、行くぞ」
「は、はい!」
そして宿屋に一週間、続けて泊まれるようにしてもらい、近くの理容室に向かった。
「あ、あの、マスター。ここ、奴隷は入れませんよ……」
「大丈夫だ、バレない。お前らが奴隷ってバレないように、奴隷紋を足に埋め込んだんだろ」
「え、でも、禁止って看板に書いて……」
「まぁまぁ、俺に任せろ。入るぞ」
「え、あ、はい……」
だが、店に入った瞬間に店員に睨まれてしまった。
奴隷を連れてるってバレたからだろう。
今のゼンの格好は、まるでホームレスだから。
まぁ、でも良かった……!
店員は女のコだから、可愛いくお願いすればいけるばず!
「獣人は店に入るの禁止なんですけど……」
「お姉さん! お願い! 一回でいいから、この子の髪を切ってあげて★」
「うっ……かわいい……」
「へっ?」
「あぁ、何でもないです! 一回だけですからね!」
「ありがとう、お姉ちゃん♡」
「任せてください!」
こうして三人の髪のカットをタダでやってもらいました!
「マスターは顔だけで生きていけますね……」
「何を訳の分からん事を言ってるんだ。ほら、次は服屋だ」
「え、はい!」
防具屋は…… まぁあのおっちゃんの所でいいよな?
クロエのオススメの店だから、何か癪に触るけど。
「いらっしゃい……あ、お前!」
「久しぶりだな、おっちゃん」
「はぁ…… お前、一体なにをしたんだよ? 王都は今、お前の噂で持ちきりだぜ」
「だろうな、悪魔の勇者って呼ばれてるんだろ?」
「そうだ。女をたぶらかして、人を普通に虐殺するっていうな……てかお前、雰囲気変わったな。前は可愛かったのに」
「ああ、外では普通に可愛い雪哉クンでいるぞ?別にお前の前で可愛いキャラ作る必要はねぇかなって」
「ひでぇな。んで、今日はそこの連れの防具を買いに来たのか?」
「そうだ。こいつは執事にするから、短剣とかでいい。あと、全部闇属性で頼む」
「分かった。服と防具を適当に持ってくるから待ってろ」
そして後ろの部屋に行ってから、また戻ってきた。
「ほらよ。ナイフ10本と短剣だ。ナイフの方は何も魔法を付与してないからな」
闇属性だからか、おっちゃんが持ってきた武器は全て黒を基調としている。
「次は服だな。こいつは執事になんだろ? だから、執事ぽい服にしておいたぜ」
ゼンの服は白のブラウスに、深緑色のベスト。そして黒の丈の長いジャケットだった。
驚いたことに、ネクタイじゃなくて紐のリボンになっている。
まぁ、黒を基調としている服なのは俺と同じか。
「まぁこんなとこだな」
「いくらだ?」
「全部で黄金貨1枚」
10万か…… 俺の時よりもだいぶ高いな。
「もうちょい安くできないか?」
「なら金貨8枚でいいぜ」
「どうも」
おっちゃんに8枚の金貨を渡す。
そして、店を出ようとしたら、おっちゃんに引き止められた。
「おい、兄ちゃん」
「あ?」
「……気をつけろよ。お前の事を殺そうとしてる勇者がたくさんいる。お前を殺すと闇魔法が使える様になるって噂が広まってんだ。
「あっそう」
そして俺は振り向かずに店を出た。
「マスター」
「何だ? 」
「マスターは何で、悪魔の勇者って呼ばれてるんですか?」
「何故悪魔の勇者って呼ばれてるかというとな、まず鎌を持って戦うこと。そして、闇魔法を好んで使う事。んで、噂に蛇足をつけられて、人殺しをした事があるとか、女をたぶらかしてるとかって広められたからだ」
「なるほどな、その方々は最低ですね!」
「だろ? まぁ、北村 茜っていう勇者と、大輔っていう勇者が首謀者だ。あと、クロエって騎士には気をつけろ」
「私が北村という勇者を見かけたら、バレないように殴りたいですね」
「ほら、前見て歩け。もうすぐ城だ」
「はぁーい」
何かこいつ、俺への緊張感がなくなってないか?
俺の威厳よ……
城の中に入ってから、ゼンは終始無言だ。
結構豪華な城だから、少しははしゃぐと思ったんだけど……
元々口数が少ない方なのか、あまり喋った所を見ないな。
「女王の部屋に入ったら、聞かれた事以外しゃべるなよ」
「はい」
「あ〜 来たのね、雪くん!」
女王の部屋に入った瞬間、女王に抱きつかれました。
「うわっ、ちょっ、抱きつくなぁ!」
「少しくらい良いじゃない〜」
「ダメだって!」
すると何を思ったのか、ゼンが変なことを聞いてきた。
「マスターと女王様って付き合ってるんですか?」
「なわけ……」
「そうよ」
「はぁ!? お前、ふざけんな!」
「貴方は私の彼氏役をすればいいの」
「え、いや……」
「決まりね」
「おい!」
「まぁまぁ。で、今日は何の用件できたの?」
「はぁ? 粗方分かってんだろ? 奴隷の事についての相談だ」
「あー、私の城で面倒みろって?」
「そうだ。そこの人族をお前の執事にする」
「へぇ〜 私の監視?」
「そうだ」
「え〜やだぁ、四六時中雪哉クンに監視されちゃうの?」
「誤解を招く言い方はやめろ!」
「で、まぁ執事の件については問題ないわよ。顔もカッコいいし」
「俺の奴隷をそういう嗜好で見るな!あと奴隷の事に関しては大丈夫だ。奴隷紋は足に埋め込んだから問題ない」
「分かったわ」
「じゃあ、一週間後に預けにくる」
「はーい」
そしてゼンのレベル上げをし、女王に預けたのだった……
そして俺はまた一人……とほほ。