海?
宿に帰って、従者達にSランクへの昇進依頼の話をした。
分かってはいたが、エレナ達は昇進依頼を受けるとのこと。
「リオンのギルドカードを発行する事になった。俺達が受ける依頼を一緒に受ければ、Aランクからのスタートになるらしいぞ」
「いきなりAランク!?」
「どうする? やるか?」
「も、勿論やりますよ!」
リオンはAランクになってやる、と意気込み、外に素振りをしに行った。
暗くなる前に帰れ、と忠告した俺の言葉は聞こえていなかっただろうな。
「今回受ける依頼は、Sランクの人向けのものなんですよね?」
「エレナ姉、ビビってるの〜?」
「いえ。Sランクの依頼如きでは、恐るに足りません」
「まぁ、Sランク如きじゃね」
エレナとアリスは……た、頼もしいな。
まぁ、フェニックスの依頼は、SSSランクだったからな。
それに比べれば、恐るに足りんと言うエレナの気持ちも、分かる。
「緊張するな〜。 俺、大丈夫かな……」
「軌澄。大丈夫だよ! 何と言っても、マスターが付いているんだからね!」
「それもそうだな。マスターがいるんだから、大丈夫ですよね!」
「ところで、今度の依頼は何でしょう?」
「それは……」
♦︎
バシャン
「うわ〜! 気持ちいい〜!」
「水が冷たいです!」
俺とエレナとアリスは、軌澄とリオンがはしゃいでいる様を、呆れながら見ていた。
分かると思うが、今俺達は海に来ている。
いや、海型のダンジョンに来ているのだ。
だが、ダンジョンと言っても水は綺麗で、水の中に入っても大丈夫らしいが……
「軌澄とリオンは大丈夫なのですか? 今回討伐依頼の魔物は確か……」
「クラーケンだよね?」
「そうだ。海に住みつく魔物らしい」
「今すぐあの2人を連れ戻してきま……」
ガァァァアァァァ!
「「ギャァァァァァァァ!」」
エレナが行動を起こすよりも早く、クラーケンは海から出てきた。
咄嗟にあの2人が陸へと泳ぎ始め、リオンは狼人族の運動神経を発揮して、何とか陸にたどり着いたが……
軌澄は泳ぐのが遅く、クラーケンの触手に捕まってしまった。
ちなみに、クラーケンは15メートル程のタコである。
「捕まっちゃいましたぁぁ! 雪哉さん! 助けて! Help me!」
「うるさい軌澄! 黙って捕まってろォ!」
「酷いィ……雪哉さぁん」
軌澄が助けてぇ、とずっと叫んでいる。
だが、クラーケンの特徴が分からない以上、助けには行けない。
「ギャーーー! 触手がヌメヌメする! 雪哉さぁん! 助けて!」
「だからうるさい!」
軌澄がうるさすぎて困る。
「どうします? マスター」
「俺と姉ちゃんは、水が得意だから助けに行きましょうか?」
「頼むぞ、リオン」
「任せてください! 行こう、姉さん」
「はい!」
リオンとエレナは、クラーケンの触手を足場にしながら、軌澄の元まで接近する。
「ハァァ!」
そして軌澄を縛り付けている触手を切り、リオンが軌澄を担いで戻ってきた。
「うぅ、雪哉さぁん!」
「軌澄、大丈夫か? まだ戦えるか?」
「……た、戦います!」
軌澄は戦う事を決意した様で、手甲鉤を装着した。
リオンも、斧を取り出して戦闘態勢を作っている。
「とりあえず、リオンと軌澄は攻撃してきた触手を切り落として」
「はい!」
「了解っす!」
「俺とエレナとアリスは、クラーケンに魔法の攻撃をする。行くぞ!」
「おーけぃ!」
「はい!」
すると早速、クラーケンが攻撃を仕掛けてきた。
「ハァァ!」
「ヤッ!」
だが、リオンと軌澄が攻撃を全て撃ち落とす。
やればできるじゃないか、軌澄よ。
『彼の者を火炙りにしろ! 爆烈槍!』
『魔王の娘である我が命令する! 彼の者を破壊せよ! 破壊者!』
『彼の者を闇に叩き落とせ。ブラックホール!』
俺とエレナとアリスが放った魔法は、全てクラーケンにヒットする。
だが、油断大敵だ。
すぐさま、次の攻撃に取り掛かろうとすると……
「プシュ〜」
クラーケンが萎み、50センチ位の大きさになった。
「「えぇーーー! よっわ!」」
すると、俺の頭にくっついてきた。
なんか……可愛いぞ。
「どうした、お前。俺と従魔契約をしたいのか?」
「プキュ!」
「仕方ねぇな。テイムしてやるよ」
こうして、12神将のクラーケンも俺の従魔になったのだった。
♦︎
「また南條さんは、ダンジョンのボスを従魔にして……」
「ダメでしたか?☆」
「ううん、ダメじゃない」
こうして、ギルドマスターのアレティナさんに、クラーケンを従魔にする事を認めてもらったのだった。
そして、キースとエレナとアリスはSランクになり、リオンはAランクへと昇格した。




