ギルド
「そ、それって不死鳥なの!?」
「そうですよ、ルミネバームさん」
「そ、そうか。あと、アレティナでいい」
ギルドに帰り、真っ先にギルドマスターの所に直行した。
そして不死鳥を見せると、マスターのアレティナさんはすごく驚いていた。
「南條 雪哉さん。貴方は素晴らしい魔力の持ち主のようだ。ラストシリーズのオウルに加え、12神将の不死鳥まで従魔契約をするとは……」
「お褒め頂き光栄ですが、きっと偶々ですよ」
「マスター、謙遜しても意味ないですよ」
「ちょっ、エレナ!」
「マスターはすごいもん! お父さんだってそう思ってるよ!」
「アリスまで……」
「まぁこれで、アリスさんエレナさん、ゼンさんはAランクに昇格ですね」
「え!? いきなりAランクですか!?」
ギルドカードのランクには、低い方からH、G、F、E、D、C、B、A、A +、S、SS、SSSまである。
ゼン達は、HからいきなりAまで昇格となるから本当に凄い。
「やったー、アリスはAだぁ!」
「僕がAランクという肩書きを得たので、女王の部屋に忍び込む奴は減りますね」
「私がAランクか……」
「3人のギルドカードをAランクにしておきました。また今度依頼を出しますね」
「はい。いつでもご連絡下さい」
「了解しました。では」
「ありがとうございました」
そして、ギルドを後にした。
ゼンと別れてから、宿に帰った。
「そういえば、天使狩りまであと2ヶ月もあって暇だろう」
「そうですね」
「だからさ、エレナの実家に帰ってみないか?」
「え? 良いのですか!」
「ああ、暇だからな。不死鳥に乗れば、飛んで行けるし」
「ありがとうございます!」
「んで、お前の実家は何処にあるんだ?」
「ユートルムです」
「ああ、この国の西にある国か」
「そうです。そこの辺境な村で、お母さんとお父さんは暮らしています」
「了解。じゃあ、明日そこへ行こう」
「明日……ですか?」
「ああ。善は急げだ。さぁ、早速準備をしろ」
「はーい! エレナ、準備しよー」
「ええ」
そして、俺も準備に取り掛かった。
翌朝。
「不死鳥、お前の背に乗って行く。巨大化してくれ」
「ガフ!」
そして不死鳥に5メートル程の大きさになってもらい、その背に飛び乗った。
「エレナ、アリス! 乗れ!」
「はーい!」
「はい!」
二人が飛び乗った所を確認してから、出発した。
「マスター! 王都が小さくなってるね」
「ああ、綺麗だな」
「マスターが……感動してる!」
「何だよ、エレナ。俺だって感動するさ」
「てっきり、マスターには感情がないのかと」
「おい。お前は俺を何だと思ってるんだ?」
「魔王です」
「ひ、否定はしないが……」
なんか悪口を言われた気がするな。
『何だ? 魔王と呼ばれて不満か?』
『そうは言ってもな、ドラント。俺は冷徹な魔王にはなりたくないんだ』
『では、人情の厚い魔王か? 笑わせ……』
『断じて違うぞ?』
『では、お前はどの様な魔王を望むのだ?』
『みんなに尊敬される魔王だ。そして、民を利用している事を悟られないようにしたい』
『なるほど。お前らしいな』
「マスター!」
「何だ? アリス」
「エレナの故郷が見えてきたって〜」
「……はぁ? そんなわけ……」
いや、まだ10分も経っていないぞ。
そう思って、大地の方を見下ろしてみる。
「まじか……」
下界は確かに、ラーストルでは無かった……。
本当にユートルムに着いたのか?
「がふ、ガフ!」
「なるほど……」
「マスター、不死鳥ちゃんは何て?」
「瞬間移動系の魔法を、少しづつ使いながら飛んでいたらしい」
「キュピ!」
「そうだな。良かったかもしらん」
「マスター、何でフレアと不死鳥の言う事が分かるんですか?」
「う〜む、何でだろうな」
確かに謎だ。
まぁきっと、従魔契約をしているからだろう。
「不死鳥。そこの広場に、ゆっくりと降りろ」
「ガフ!」
そして不死鳥は周りに気を使いながら、ゆっくりと降下し、着地した。
家はたくさんあるが、周りの住民はいない。
「エレナ。周りに住民がいないんだが……」
「昼間は王都に、出稼ぎに行っているんですよ。私の家も、貧しいので……」
「そ、そうなんだ」
「ええ。私を売ったお金で、なんとか生活出来る感じでした。私が奴隷に堕ちたのは、5年程前でしたので……私より2年小さかった弟も、きっと奴隷になっているでしょう」
「エレナ。お前の本名はなんだ?」
「ここ、ユートルムでは子供が成人したら名前が付けられます」
「そ、そうなのか!? ちなみに、エレナよお母さんやお父さんの名前を聞いてもいいか?」
「はい。父がエル、母がノルアです」
「姓は無いの?」
「ありませんよ。姓がある人は、名誉ある人だけです」
「へぇ〜 んで、エレナの家はどこ?」
「えっと……ああ、そこです!」
「了解。エルさんとノルアさん、いるかね?」
そう思って、家を覗く。
「お母さん!」
「もしかして、貴方なの!?」
「はい! お母さんの娘です」
なんか……名前が無いと、再開の場面も感動出来ん。
家には、ノルアさん……エレナのお母さんがいた。
俺も、挨拶をしておかなきゃな。
「どうも!」
「えっと……貴方は?」
「ユキヤ・ナンジョウです。娘さんの主をしております☆」
「貴方が……」
「お母さん。マスター……雪哉様は、寛大な御心の持ち主です。私を奴隷とは呼ばず、重労働も強いません。もちろん、私に夜伽も求めませんそして、マスターはラーストルの勇者様です。最前線で、一人も犠牲者を出さなかったブロックのリーダー。お母さんは知っていますか?」
「ええ。もちろん知っているわ。とても、有名な方でしょう? でも、何でそんな人がこの子を買ったのですか?」
「会った時に、娘さんに利用価値があると思ったからですよ。他の奴隷なんかよりも、屈強な心を持ち、モンスターにも怯まずに戦いに行って下さってますからね」
「利用価値……」
「全くマスターは、素直じゃ無いよねぇ」
「あ、アリス!」
「私もマスターの奴隷で、魔族のアリス・キャンベルです。名前もマスターが付けてくれたんですよ〜 貴方の娘さんにもちゃんと、マスターが名前を付けてましたよ」
「ええ。私にエレナ・シャーロットという名前をつけて下さいました。お母さんには、この意味わかりますよね?」
「平民に、姓を付ける……ましてや奴隷などに。その意味は、信頼の証よね。南條さん、娘を宜しくお願い致します」
「もちろん。エレナさんの事は、心から信頼しております」
「ノルアさん、マスターのギルドランクは、SSSなんだよ〜 つまり、勇者の中でも一番強い!」
「そしてお母さん、私のギルドランクはA +です」
そう、あの後ギルドマスターのアレティナさんから、やはりAからA +に昇格させても良いだろうという連絡が来たのだ。
「凄いのね、エレ、ナ」
「何かお母さんが、私をエレナと呼ぶのに違和感が……」
「そういえば、エレナの弟さんは何処にいるのですか?」
「この部屋の奥よ。寝込んでいるの……体が弱くて」
「ちょっと、弟さんと合わせてもらってもいいですか? 俺が診てみましょう」
「いいのですか?」
「はい。この小さな街に、医者はいないでしょう?」
「ええ」
「なら、俺の回復魔法ではなく、光魔法で治します」
「南條さんは、光魔法を扱えるの?」
「はい」
最近知ったんだが、回復魔法より光魔法の方が、回復力が高いらしい。(byソフィア)
「お願いします、マスター」
「任せとけ」
奥の部屋には、弟さんが毛布にくるまっていた。
え? 敷布団ないの?
「弟さん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。あんたは……」
「ユキヤ・ナンジョウ。エレナ……貴方のお姉さんのマスターだよ☆」
「あんたが……んで、何しに来たよ? 家には見ての通り金がない。お前に渡す金なんてねぇよ! 帰れ!」
「ふむ。ノルアさん、エレナ。ここは俺とアリスに任せて☆ 二人で不死鳥に乗って、王都でご飯でも食べると良い。はい、これ」
そして、エレナに適当に金を握らす。
「マスター! 要りませんよ! こんな大金」
「王都で食べるには、そのくらい必要でしょ。それに俺には、女王サマのバックアップがあるから」
「エレナ、マスターの好意に甘えて、親子水入らずで話して行きなよ」
「わ、分かりました」
「でも、南條さん。私たちのような獣人は、煙たがられてレストランにも入れないの」
「なら、俺のギルドカードを持っていくといいよ。そして、エレナのギルドカードも合わせて見せれば、文句は言えないさ」
本人は気づいてないだろうが、エレナも結構な有名人だし。
「ほら行きなよ、エレナ」
「分かりました。ありがとうございます、マスター」
「あぁ、そういえばエルさんは?」
「主人なら王都にいるわ」
「ユートルムの?」
「ええ」
「なら、その金で3人で食べてきな」
「マスター、本当にありがとうございます」
「じゃあねー、エレナ」
「はい、弟を宜しくお願いします」
そして、エレナとノルアさんは去って行った。




