前日 その2
約束通り、3時に従者達は城に来た。
しっかりと約束を守ってくれたみたいだな。
良かった……!
よし、ここで従者達のステータスを確認してみるか。
まずは女子組から。
○ 名前:アリス・キャンベル(金髪)
種族:魔族
年齢:16歳
性別:女
職種:隷属 剣士Lv.68
魔法適性:雷属性Lv.38 火属性Lv.30 闇属性Lv.151
○名前:エレナ・スコット(青髪)
種族:狼人族
年齢:18歳
性別:女
職種:隷属 狩人Lv.69
魔法適性:闇属性Lv.120
この2人は新参メンバーなんだよな。
と言っても一週間しか変わらないが。
次は古参メンバーのステータスを見てみるか。
○名前:ゼン・ルイス (黒髪)
種族:人族
年齢:14歳
性別:男
魔法適性:闇属性Lv.143
○名前:南條 雪哉
種族:勇者 Lv.101 魔王 Lv.5
魔法適性:All Lv.69 闇属性 Lv.191
こんな所か……
ゼンは、女王だけが職種のステータスを見れるようになっている。
だから俺は、ゼンの職種レベルは知らない。
そして本題に入ろう。
「じゃあ、明日の天使狩りの計画を言うぞ。良く聞けよ?」
「はぁ〜い!」
「了解です」
「承知いたしました」
俺は女王の部屋で、奴隷達にいざ明日の説明を始めようとしていた。
そういえば、従者達の口調だけで誰か判別出来るようになった。
明るく、能天気な口調で話すアリス。
そして敬語で話すエレナと、丁寧な口調を徹底するゼン。
てか、俺のパーティ……みんな口調の癖が強いな。
「俺らは明日、ラーストルの南……詳しくは東南の国の《キルムヘルブ》という国との国境で戦う。それで国境付近の天使を狩り尽くしたら、キルムヘルブの街に助太刀に行く」
「え!? マスター。キルムヘルブを助けるのですか!?」
「キルムヘルブは治安が悪く、本当に危険です。マスターの身に何が起こるか分かりませんよ!」
「エレナ、ゼン大丈夫だ。俺に考えがあるんだよ……キルムヘルブは俺たちに頭が上がらなくなるなぁ……クックック」
「マスター、完全に悪者の笑い声ですよ……」
「冗談だよ、エレナ。とりあえず、明日の事に関しては安心しろ」
「わ、分かりました」
「まぁとにかく、明日はこういう方針で行く。良いな?」
「「はい!」」
「今日は、騎士団の訓練場の一つを貸してもらっている。だからそこで各自特訓だ!」
俺がそう言うと、従者達が走って訓練場へと向かっていった。
「本当に従順ね。貴方の従者」
「ああ、本当に良くやってくれてる。たまに暴走もするけどな」
「結構彼らを信用してるのね」
「少なくとも、前回パーティを組んだ勇者と騎士よりは信用してる」
「北村とクロエの事?」
「そうだ」
「フフっ。まぁあの2人はクズの中のクズだからね」
「おいおい、王女がそんな事言って良いのか?」
「良いのよ」
こうやって、2人で笑いながら話をする。
意外とソフィアと話すのは、結構好きだ。
王族だが、冗談も分かってくれているので話しやすい。
最近はこいつの事を信用している。
「キュピ!」
「わっ! 」
「どうした? ソフィア」
「い、いやフレアちゃんが急に肩に乗ってきたから驚いただけよ」
そう言って、ソフィアはフレアを撫でる。
フレアはフクロウの中でも毛の量が多い方だと思う。
小さいながら、結構もふもふしているのだ。
「ハハっ。やっぱフレアは可愛いね」
「あっ!」
「何だよ!?」
急にソフィアが大声を上げたので驚いてしまった。
「いや、初めて雪哉が素で笑ったから……」
「え……?」
「え、いや、なんでもないわ。忘れて」
「あ、おう……」
するとソフィアは頰をほんのり赤く染めて、俺に背を向けた。
くそぉ、可愛い!
「ま、まぁ何だ。俺も訓練してくる……ぜ」
「ええ、行ってらっしゃい」
そして俺は、早足で訓練場へと向かった。
「おいおいおい、ここは俺らの練習場だぜぇ」
「弱い奴らは、引っ込んでろ!」
練習場に着いた途端に、男達の怒鳴り声が聞こえてきた。
格好から見るに、城の騎士だ。
やっぱり、突っかかられるよなぁ。
殴られないかな……?
「違います。私達は女王の……」
「はっ! 知らねぇよ! さっさとどけぇ!」
やばいな……
相手の数は10人程……
数では圧倒的に不利な状況だ。
それに男達は剣を抜き、今にも斬りかからんとしている……!
「さぁ! 勝負だ!!」
「待って!」
「っ!」
あ……とっさに可愛い声を出してしまった。
仕方ない……こうなったら……!
「あんまり喧嘩するの、良くないと思うよ〜」
「何だ、テメェ?」
「やんのか、あ?」
「お兄さん達……ら、乱暴はやめてよ……」
きまったぁぁ!
下から目線でのうるうるボイス!
やっぱりこの顔最強!
「か、可愛いな!」
「な、何この子!」
「わ、分かったよ! 止めるよ! でも、俺の事をお兄ちゃんって呼んで!」
「お兄ちゃん♡」
「「うわぁぁぁ」」
そして男達は走り去っていった。
「ありがとうございました、マスター」
「マスターの顔、ぱないね!」
「マスターは素晴らしいお人ですね。暴挙に出て暴言を浴びせた人を無傷で返すなんて……控えめに言えば聖人の様です」
「ゼン、それは良いすぎだろ。まぁ、弱いもの虐めの趣味は無いんでね。さぁ、訓練するぞ! エレナとゼンはひたすら剣技を鍛えて。俺とアリスは、魔法を鍛えるぞ」
「了解です」
「承知いたしました」
「はーい」
そして各自、練習に取り掛かったのだが……
この訓練場、的などの人工的標的物が無いんだ。
ただの砂場みたい。
例えるなら、中学校の校庭だな。
小学校ではたくさんの遊具があって、休み時間も楽しかった。
だけど中学校になると校庭に遊具がなくなり、休み時間は退屈なものになる……
「キュイ!」
「どうした? フレア」
俺が色々な考えに耽っていると、肩に乗っているフレアがくちばしで、俺の頭を突いてきた。
地味に痛いんですけど!
「キュイ、キュキュ、キュピ!」
「ああ。フレアはとにかく俺の援護の練習だ」
「キュ!」
「……マスター、フレアがおっしゃっている事が理解出来るのですか?」
「出来るぞ。逆にお前は分からないのか?」
「動物との会話など、出来る人は早々いませんよ。マスターは本当に万能な能力を持っていますね。何か裏があるのでは?」
「そ、そうでもないぜ?」
多分、魔王の加護スキルだろうな。
てか何で俺だけにこんなスキルあるの?
意味が分からない。
「ま、まぁとりあえず、みんな特訓だ!」
「話をそらさ……」
「ゼン、天使狩りを乗り切ったら教えてやるよ。だから今は目の前の事に集中しろ」
「その言葉、絶対ですよ!」
そして、ゼンは剣の素振りに戻って行った。
全く……本当に勘のいい奴だよ。
「はぁ……何とか乗り切った……」
「キュピ」
「大丈夫。心配してくれてありがとな」
「キュイ……」
とにかく何だかんだで、今日という日は幕を閉じた。




