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王都へ



「やっぱり王都は広いな。なぁ? ゼン」

「ええ。私の生まれ故郷よりも広いです」


俺はゼンを護衛につけて、王都で買い物をしていた。

ゼンはコゲ茶色の髪の毛を後ろにかき上げ、ムースでセットしている。

本当に執事って感じだな。

身なりといい、性格といい……


「ゼンの生まれ故郷って何処なんだ?」

「私の生まれ故郷は……この国ではありません」

「そうなの?」

「はい。少しラーストルスから離れている、ミネルタロルという国です」

「へぇ〜 どんな国だ?」

「ええ。港の国と呼ばれていて、他国との貿易が盛んです。私はその国の準男爵の家系に生まれました」

「あ、そう。でも何でそんな大層な家柄に生まれたのに、奴隷落ちしたんだ?」

「………が多いからですよ」

「あ?」

「私の魔力の量が多いからですよ。 気味悪がられたんです」

「あぁ、そうか」

「マスター。自分でお聞きになったのですから、もう少し興味を持って下さいよ……」

「んにゃ、予想付いてたからなァ」

「なら聞かないでくださいよ……」

「ごめんて。とりま買い物を済ませよう」

「あ、ハイ。でも何を買いに来たのです?」

「ペット」

「ペット?」

「ああ。フクロウが欲しくてな」

「ふ、フクロウ……?」

「ああ。ほらこの店だ」


俺が目当ての店は、大通りに堂々と建てられているペット屋だ。

少し古びているその店は、何処か風情がある。

何のペットでも売ってますと書かれているだけあって、品揃えは豊富なようだ。


「おじさん、フクロウを買いに来たんだ〜」

「フクロウ? 物好きだな、お主」

「え? そうかな?」

「ああ。結構な物好きだぞ」

「でもフクロウって便利だよね? だから買うんだ〜」

「まぁお主が良ければ良い。でどんな種類がお望みで?」

「えっとね、黒い毛なら何でも良いですよ」

「ん〜ならこれしかあるまい。ほれ、これじゃ」

「これは……」

「ラストオウルという種類で、魔物なのじゃ。魔法を使えるという利点があるのじゃが……少々危険でな」

「危険?」

「まぁお主ならなんとかなるじゃろ」

「な、何でラストオウルがこんなところに!?」

「ん? どした?ゼン」


俺が両手で持っていた30センチ程の黒いフクロウを見て、犬と戯れていたゼンが尻餅をついた。

おいおい、大丈夫かよ。


「そのフクロウは国をも破壊してしまいます! 何故こんなところにいるのですか!」

「へ〜すごいね! このフクロウ買うよ! いくら?」

「黄金貨100枚じゃ」


高すぎないか!?

1億だぞ! 1億!


「まぁ良いや。女王につけておいて〜」

「えぇ、分かりましたぞい」

「え、え、おかしくないですか!?」

「ゼン、どうしたの?」

「さらっとすごい事いいましたよね!?」

「ん? だってこのフクロウも女王がこの店に仕入れさせたんだよね?」

「おっしゃる通りです」

「え? じゃあ女王がこのお店に」

「ラストオウルを売ったっぽいね。本当に回りくどいやり方するな〜 女王様は」

「ではこのフクロウをお渡しします。カゴはいりますか?」

「いらないよ☆ ね、フクロウくん?」


すると俺が両手で持っていたフクロウはコクリと頷いた。

その光景を見て、またゼンは慌てている。

そういえばラストオウルってこの世に1匹しかいないんだよね。

ラストシリーズって言って、唯一人間が契約(テイム)できる魔物なんだよね。

すごく強くて、1匹だけで災厄を起こせるような…

他にもラストウルフとかラストラビットとかもいる。


「じゃあ帰ろう、ゼン。フクロウ君は肩に乗っていて」


そういうと、フクロウは大人しく肩に乗った。


「じゃあね、また来ます!」

「ほっほっほ〜 またおいで」


そうして店を後にした。






宿に帰ると、みんな武器の手入れをしていた。


「あっ、おかえりマスター!」


最初に駆け寄ってきたのは、魔族のアリス。

やっぱり、本当に可愛いな。

お伽話のアリスみたいだ。


「ただいま〜」

「その肩に乗っているのは、ラストオウルですか!?」

「流石、エレナ! 鋭いね! そうだよ!」

「フクロウかっわいいー♡」

「だよねー♡」

「いやいや、おかしくないですか!?」

「良かった……エレナさんもそう思いますよね?」

「え、はい」

「私も思ったのですが……アリスさんが平然と災厄級の魔物を受け入れているので、自分がおかしいのかなと一瞬思いました……」

「ゼンさん、それが普通だと思います……」


エレナとゼンが仲良く話してるな。

まぁ二人はお似合いかもしれない。

応援しよ。


「この子の名前、どうするのー? マスター」

「ん〜、アリスは何か思いつく?」

「んーっとね、スーパーダーク三世」

「へっ?」


待ってアリスさん!

一世と二世は誰なんですか!?


「ぜ、ゼンはどう思……痛い痛い!」

「マスター! 大丈夫か!」


エレナが血相を変えて駆け寄ってきた。

いや、そんな血相を変えるほど大事じゃないんだが!


「いや、フクロウ君がちょっと噛んできてね」

「ま、マスターのお手を傷つけた……?」

「よくもマスターを! 許しません!」

「マスターを傷つけるような子は、切り刻んであげる♡」

「みんな、待って待って!!」


みんな武装してフクロウを狙ってるんだが!

お前ら! やめろ!

フクロウ……大丈夫か?

まぁ、天災級の魔物だしこの程度の殺気、大丈夫だよ……


「キュウっ!」


オイィィィィ!

お前がビビってどうするんだ!?

普通に鳴きながら、しがみついてきたし!

可愛いな、おい!


「みんな、待って! 落ち着いて!」

「マスターのお指が切れているではないか!」


ゼン……お指って……


「許しません!」

「エレナ落ち着いて! 槍をしまって!」

「マスター……すぐにすみますから……」

「ねぇ何が!? 雪哉分かんない!」


みんな、落ち着いてくれなそうなんだが!

エレナは無言で殺気を送っているし、アリスは舌舐めずりをしている!

ゼンはナイスを6本手に持ち、今にも投げかからんとしておる。

やばい! 俺も怖い!

かくなる上は……!


転移(ガルム)!」

「あっ、ちょっ、待っ!」


みんなの制止を振り切り、1人と1匹で城へと向かった。





「ステラっ! 匿ってくれ!」

「ゆ、雪哉ちゃん? どうしたの?」

「た、助けて……殺される!」

「キュイ!」

「えっと……」


「つまり、ラストオウルが雪ちゃんの手を噛んだのが許せなくて奴隷達が殺しに来てるって事?」

「そうだ!」

「キュピ!」

「はぁ……天災級の魔物と悪魔の勇者が何で奴隷ごときに怯えてるのよ……まぁそこも可愛いんだけど」

「ちょっ、ふざけるなって! ガチでヤバいんだって!」

「でも天使狩りまで残り2日なのよ? 全く何やってるのかしら」

「悪いって! お願い!かくま……」


「女王様ーーー!」


「ん? どうしたの?」

「悪魔の勇者の奴隷が城へと乗り込んで……」


ガシャン! ドォーン


「ひいっ!」

「キュイ!」

「厄介な事になったわね……」


『マスター、いるんだよね♡

そのフクロウ差し出せば何もしないからさぁ、言いたいコト、分かるよね?』


アリスがテレパシーを送ってきた!?

マジでヤバイ!


『ついでにマスターの事をたぶらかしている女王も殺しますね♡』


え、エレナ?

そんなキャラじゃなかったよね……?


「なぁ、ステラ……魔族だよな? こいつら何とかしてくれよ!」

「貴方私のレベル知らないの? 300よ」

「え!?」

「こんなガキにやられる程やわじゃないわよ」

「かっこいい!」

「うぇっ!」


かっこいい!

オレでも思わず抱きついてしまうような、かっこ良さだった。

その時……


ドォン


ドアが蹴り飛ばされ、部屋の中に俺の従者達が入ってきた。


「へぇ〜……マスターこんな時に女王と……」

「このクソ女王! マスターをたぶらかして!」

「エレナもアリスも落ち着いて! 違うんだ、これは!」

「何が違うの? マスター♡」

「女王様、心から尊敬しておりますが……今回の事は許されることではありませんよ」

「アリス! ゼン! だから違うって!」

「じゃあ殺るよ」

「アリス、待て!」

「本当に面倒くさいわね、貴方の奴隷」

「うぇっ、知らねぇぞ! こんなにヤンデレな性格してる事なんて!」

「マスター、口調。戻ってますよ」

「っ!?」

「気づいていないとでも思ったの〜?」


やばい……

アリスとエレナにかわい子ぶってる事バレた!


「やべぇよ、ちょっとステラ! どうにかし……」

「女王との中は本当のようですね」

「ニックネームで呼び合う仲なんだから、やっぱり付き合ってるんだね」

「ゼン、アリス……落ち着いて!」

「覚悟はいいだろうな! 女王!」

「はぁ……命ずる、彼の者達を深い眠りへと誘え……眠り姫(スリファルム)

「ガァ! 意識が……」

「マス……ター……」







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