2-4
その晩、僕は彼女と出逢ったバーに足を運んだ。あまり体調が優れていなかったので、本当は外出するつもりなど微塵もなかったのだが、どうにも彼女のことが気になって、気になって、仕方がなかった。
バーには、二、三人ほどしか客がいなかった。だから、もし彼女がいたとすれば、すぐに見つけることができるはずであった。しかしながら、案の定と云うべきか、彼女の姿は無かった。
入り口できょろきょろしているのはみっともないので、とりあえずカウンター席に腰を下ろしてカシオレを一杯注文した。
見落としていないだろうか。それとなく店内を見渡してみたものの、やはり彼女と思しき人影は見当たらない。今日は来ないのだろうか。程なくしてカシオレが手元にやって来たが、僕はそのたった一杯のカシオレを、一時間もかけてじっくりと呑んだ。もしかしたら、遅れて彼女がやってくるかも知れない、そんな淡い期待を寄せていた。しかし、呑み乾した時点でも彼女が店に訪れることはなかった。これ以上長居していてもやって来る気配がなさそうだったので、僕は勘定を済ませて店を出た。
虚しさを紛らすために仰ぐと、澄んだ空に鏤められた星屑たちが、冴え冴えと煌めいていた。何だか、ひどく悲しくなってきた。