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瘋癲  作者: 碓氷青
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2-3

 家に着いたら、午前七時を回っていた。やけに瞼が重たかったので、ベッドに身を横たえてみたら、数瞬の後に眠りについてしまった。意識が恢復した頃には、日が暮れかけていた。眠りは浅かったはずだが、時間というのは無常にも過ぎ去ってしまうらしい。

 眠りから覚めたとき、僕の体はおそろしいほどに重たかった。とてもとても、ベッドから身を起こせるほどではなかった。どういうわけかはわからないが、僕はフルニトラゼパムと云う睡眠薬を服用しないと、仮に眠れたとしても、目を覚ましたときに体のあちこちがひどく痛んでしまう、と云う厄介な体質になってしまっていた。

 こういった症状が出始めたのは、この薬を服用してから半年ぐらい経った頃のことだった。当時はあまりにも体が痛くて、睡眠はおろか、日常生活のちょっとした動作すらもできなくなってしまっていた。

 しばらくしても、痛みはまったく引かず、放っておいても埒が明かないと思ったので、この薬を処方してくれた医者に相談しに行った。しかしながら、どういうわけか、まったく取り合ってくれなかったのだ。僕は彼が優しい人間であると思っていたために、ひどく絶望した。僕はその夜から、規定の用量の三倍近くを服用するようになった。もはや、オーバードーズを望んでいたくらいだ。だが、幸か不幸か、服用量を増やしたら、体の痛みはぱたりと止んでしまったのである。

 今では、大量の薬を処方してもらうために、複数の医者に梯子を掛けている。初めは、同じ保険証を使っているのだから、医者か役人に制止されてしまうのではないか、と案じていたのだが、それは杞憂に過ぎなかった。

 以来、僕は大量のフルニトラゼパムによって、体をぼろぼろにしていった。この行為に意味などあるわけがない。こうでもしないと、僕は僕であることを認めることができなくなってしまった、ただそれだけのことだ。

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