7話 メリリカの爆弾講座
「マーフィー。あれは神の授けられた特別な力じゃ。我々に理解できなくとも当然のことよ」
「で、でも……」
マーフィーを励ますババ様は、理解することをそうそうに諦めてしまったらしい。
残りのエルフたちも、同じような態度だ。
「やれやれ。それじゃあ困るんだけどなあ~」
メリリカは小さくため息をついた。
与えるのは危険なアイテムなのだから、できればちゃんと原理をわかったうえで、使って欲しい。
「特別な力じゃないよ。いまから渡すものを使えば、誰でもその爆発が起こせるんだ」
そう言っても、エルフたちは首をかしげるばかりだった。
言葉で伝えられることには限度があるので、もうこのまま実践してみせることにする。
「まあ、ちょっと見ててよ。メリリカの爆弾講座、はじまりはじまり~」
メリリカは目の前に並んだ材料を見て、自分でぱちぱちと拍手をした。
マーフィーがはっとして、慌てて一緒に拍手をしてくれる。
うんうん、助手としての仕事はばっちりだ。
「ここにあるのは燃える石、ハチミツ、石灰、その他いろいろです!」
「私が取ってきました!」
「マーフィーはお利口だねえ。さてここに、さらに追加で……」
メリリカは魔法を使い、『あるもの』を宙に浮かせた。
「え!? なんかクサッ!!」
「これは……牛糞の臭い!?」
「はーひ。みんな、避へて避へてー。汚ひからねー」
鼻をつまんだメリリカの前に、牛糞の入った桶が運ばれてくる。
これもマーフィーに牛小屋の場所を聞いておいたものだ。
「近場で採れなかったものは、ほうやって錬成しないならないんらー」
片手で鼻をつまんだまま、もう片手を牛糞にかざし、魔力を込める。
牛糞に対して魔力を込める絵面がとんでもないが、気にしてはいけない。
「はい、魔力で乾燥」
「おおお!? ば、牛糞が一瞬でかぴかぴに!!」
「いろいろ抽出してー、ごりごりしてー。細菌も混ぜて……」
あとは魔法で濃縮、濃縮、濃縮、熱して……。
「仕上げに、どーん!」
メリリカは錬金魔法を発動させた。
ごちゃごちゃ混ぜた素材たちの周りに錬金の魔方陣が広がり、辺りに蛍色の光が満ちる。
「おおお!? こ、これはやはり神の業……!?」
「錬金魔法だよ! よし、完成。じゃあみんな、離れて離れて-!!」
メリリカが合図をすると、マーフィーが張り切って周りを待避させてくれた。
「みんな、私の声聞こえる-? よく見ててね-! これ導火線。これに火をつけるとー」
火魔法で着火して、メリリカはみんなの方に走り出す。
たっぷり距離を開けて、見守ること数分。
導火線についた火が、錬成したものに近づいていって……。
「よしこい!」
「ひ……」
どぉおおおおんっ!!
響き渡った轟音と大爆発。
エルフたちは言葉をなくして、呆然と立ち尽くしている。
爆発が起きた場所を見れば、地面がえぐれ、広範囲で窪みが確認できた。
「な……ななな、なんと……」
「どう? これなら自分たちで岩を破壊できるでしょ?」
メリリカは、腰を抜かしているエルフたちに向かい、にこっと笑いかけた。