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最後の魔女は自重したい! 〜転生しても最強すぎて世界が放っておいてくれない〜  作者: 斧名田マニマニ
1章 最強魔女は、異世界でもやっぱり最強だった
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4話 エルフの里に伝わる難解な巻物を読み解く

 その後、エルフの村で歓迎の宴を開いてもらうことになった。

 おなかも空いてきたし、夜も更けてきたので断る理由はない。


「では人間様にはこちらの衣装を!」

「貴方様に相応しい、贅を凝らした衣装をご用意しましたので!!」

「え、えええー」


 そう言ってエルフたちが用意してくれたのは、まるで巫女が身にまとうような衣装だった。

 ひらひらした民族衣装で、豪華絢爛な刺繍の装飾がされている。

 おへそは出ているし、はっきり言って露出が高い。


「シンプルなワンピースは着替えたかったけど、これは少し豪華というか、方向性が違わない?」

「よく似合っていらっしゃいます、人間様!!」

「あとこれ、胸の辺りが……認めたくないけどすごいぶかぶかで……」

「ではこれを!! 詰めましょう、ぎゅぎゅっと!」

「ううう」


 丸めた布を胸元に押し込まれ、メリリカは改めて現実を突きつけられることになった。


(気を取り直してご飯ご飯。この世界に来て初めてのご飯だー」


 ババ様の隣の特等席に座らされたメリリカには、次々、盛大な料理が振る舞われた。

 配膳してくれたのは、村で最初に出会った少女マーフィーだ。

 新鮮なフルーツの数々、よく熟成された果実酒、新鮮な獣肉のステーキ。


「ん~! おいしい! 今日はたくさん歩いたし、この体で初めての食事だから格別だよお」

「メリリカさま、遠慮せずに、どんどん食べてくださいね!」

「ありがとう」


 マーフィーはニコニコ笑うと、次の食事を用意しに向かった。


「そうだ。ババ様、お願いがあるんだけど、巻物って見せてもらえますか?」


 人間が滅びた伝承が知りたいと伝えると、ババ様はふむふむと頷いた。


「巻物を見せるのは問題ないが……あれはかなり難解な文章で書かれております。巻物より、我らの村に伝わる伝承の舞をお見せしたほうが分かりやすいかと。ちょうどこの後お見せしようと準備をしていたところです」

「ええっ、舞になってるの?」


 なんだかものすごい話になってきた。


「皆の者ー! 舞をお披露目するのじゃー! 位置につけー!」

「はーいっ!」


 掛け声と共にでてきたエルフの少女たちは、メリリカよりも少しシンプルな、けれどもっと奇抜な格好をしていた。

 布を何枚も巻きつけたようなドレスと、染め具で塗られたお面。


(ひゃーなんじゃこりゃー……)


「音楽、はじめ!!」


 ババ様の掛け声を合図に、村にはドコドコと太鼓の音が鳴り響きはじめた。

 ひらひらと舞う赤や青、黄色の布。

 クルクルと回転するエルフたちは、みょうちくりんな雄叫びを上げている。


「こ、これは……?」

「いまは戦火を表現しておるところですじゃ。胸を震わせる、感動的な場面じゃろう!? あの赤い布が炎で……」

「え、あれ戦争なの? 人間は?」

「人間様の登場は一時間後! 焚火を使った幻想的な演出ですぞ! ご期待くだされ!」

「へ、へー……」


 メリリカはそっと、生温い笑みを浮かべた。


「うん。やっぱりあとで、巻物見せてくれるかな?」


 いかに天才といえど、わからないものもある。

 メリリカはしみじみ実感した。


 それからすぐにババ様に命じられたマーフィーが、巻物を運んできてくれた。

 巻物を手渡されたメリリカは、古代文字を魔法で解読しながら読み進めていった。


(『戦女神の産み落とされた黒き死の化身が戦火の大地に忍び込み』か。戦争が原因で発生した菌とか、有毒ガスのことかなー)


 巻物の中身は全文その調子で、抽象的な表現が並んでいる。

 でも、メリリカの魔法と頭脳があれば、理解できないほどの内容ではない。


「ふんふん。なるほどね」


 メリリカはするすると目を走らせて、巻物をどんどん先へ進めていく。


「おお……さすがは人間様……」


 ババ様が、ごくりと息を呑む。


「貴方様は、本当にこの文字が読めるのですな…!?」

「まあね。1回読めば全部暗記できるし」

「さすが!! さすがは人間様ですじゃ!!」


(うーん。欲しい言葉、それでもないんだよなあ)


 メリリカはそう思いながらも、せっせと読み進めた。


「ここにかかれていることだけどザックリ言うと、戦時中に開発された魔法兵器によって新種の奇病が蔓延して、それが人間絶滅の大きな要因になったってことだよね? 奇病にかかるのはなぜか人間だけで、数日で死に至ったって感じかな」

「なんと……この伝承には、そのような意味が……!?」

「ん? わかってなかったの?」

「この難解な巻物を理解できるものは、私たちの中には一人もおらんのです」

「まあ、吟遊詩人の歌みたいな内容だもんね。ちなみにここに書かれている以上の情報ってないかな?」


 メリリカが問いかけると、ババ様は残念そうに首を横に振った。


「人間様が滅んだのは、私の祖母の時代なのじゃ。この巻き物は母が記したものですじゃ。母が生きておれば、何か聞けたかもしれぬが……。私の代で知っている知識は巻物と舞に残されたことがすべてなのじゃ……」

「お母さん、ロマンチストだったんだねえ……」


 もっとシンプルな書き方で残してくれても良かったのに。

 詞的な言葉選びだらけの巻物に視線を落とす。

 とはいえ大筋は想像できた。


(巻き物から得られそうな情報は、だいたい手に入ったかな。でも……)


 メリリカは、目の前でまだ続いている舞に視線を向けた。


(この内容をどう弄ったら、あの踊りになるんだ……?)


 その点に関しては、メリリカにもまったく理解できなかった。

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