表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の魔女は自重したい! 〜転生しても最強すぎて世界が放っておいてくれない〜  作者: 斧名田マニマニ
1章 最強魔女は、異世界でもやっぱり最強だった
4/10

3話 崇められたいたいわけじゃないんだってばー!

「そ、その丸い耳……その鼻……その肌……なんということか……。私は幻を見ておるのか……。巻物に描かれていたとおりの容姿じゃ……」


 独り言のように呟いて、輪の中心にいたエルフがメリリカのもとへ歩み寄ってくる。


 その少女は、他のエルフたちとはちょっと見た目が異なった。

 金髪の編み込みは、頭にぐるぐる巻きつけてあり、繊細な装飾品で飾られている。

 貝殻細工のようで、光に当たるたび、白桃色に光った。

 身にまとっている衣服も、祭具用のものだ。


(この人がババ様だな)


 とはいえ「ババ様」と呼ばれていても、15歳のメリリカと見た目年齢はほとんど変わらない。


(本当に若いのか、若作りなのかわかんないな)


 なにせ相手は500年以上生きるという長寿な種族エルフだ。


「ちょっと失礼するぞ」

「え? ……わわわ!? な、なに!?」


 ババ様は両手を伸ばすと、メリリカの顔にぺたぺたと触れてきた。


「くふっ、あはは! ちょ、くすぐったいってばー!」


 小さな手でむいむいとほっぺたを押され、メリリカは身をよじらせる。


「おおお……これは……」

「ひっ……ひゃひゃひゃひゃー! 耳はだめっ、ひゃひゃ耳はー!! あははははっ、いやーっ!」


 その後しばらくの死闘のあと、メリリカはようやく解放された。


(いやー、過労死するときよりも死ぬかと思った)


「うむ、やはり作り物ではない。本物の肌の感触。ということは……そなたは『滅びの種族人間』……!!」

「ひえええええ!? ババ様、それは本当ですかっ!?」

「だって人間は滅びたはずですよねっ……!?」


 ババ様の言葉にエルフたちが取り乱す。

 エルフの少女にされたのと同じような反応だ。


(このエルフたちも人間は滅びたって信じてるんだな)


「そなたは人間であっておるか?」


 ババ様がエルフたちを代表して尋ねてくる。

 あ、ここ、決めシーンだな。

 メリリカは再び、ふふんっとない胸を逸らせて名乗りを上げた。


「はい、そうです。私は人間の魔女、メリリカです」

「な、ななな、なんと!? 人間なうえに、あの伝説の秘儀、魔法を使えるのかっ!? ……はっ。もしや先ほどの摩訶不思議な力、あれが魔法なのかっっ!?」


 興奮したババ様に両腕を掴まれ、ガクガクと揺すぶられる。


「人間じゃ!! 魔法なのじゃー!!」

「わわわわわー」

「ババ様がー! ババ様がご乱心だー!」

「こんなに昂ぶられているのは、いったいどれくらいぶりのことかしらっ!?」

「いつも威厳たっぷりのババ様が……!!」」


 メリリカは振り子のように揺れながら、「そそそそうですよーままま魔法ですー」と返した。


「マーフィーよ、おまえがこのお方をここまで連れてきたのか!?」

「はーい、そうです!」


 マーフィーと呼ばれたエルフの少女がぴょこんと手を挙げた。


「村の入り口でこの人間さんに会って! 私たちが困ってるとお話したら、駆けつけて下さったのです!」

「おおお!!」

「さすがは人間様……われらの窮地を見捨てない、素晴らしい種族……!」

「人間って伝承のとおり、慈悲深くて優しい生物だったのね……!」


 エルフたちは大騒ぎで、手を叩きあって喜んでいる。

 それを見て、メリリカはちょっぴり唇を尖らせた。


(なんで『人間すごい』しか言ってくれないかな!? そんなことのために、お手伝いしたんじゃないよ! 私が欲しい言葉は『あれ』なのに……)


 まったくもうと思って、両手を腰に当てる。

 エルフたちはなっていない。

 仕方ないので、欲しい言葉を引き出す方向に、会話を誘導しようと決めた。


「ねえ、人間の魔法見てどうだった? 私、大岩壊しちゃったんだよ? 困ってたんだよね?」

「あんな神業をお目に掛かれるなんて……! そなたが来て下さらなければ、我らは永遠にノミを振るっていたことじゃろう!」

「うんうん、そうだよね! ということはー?」


(さあ、来い! あの言葉!)


 期待に胸を高鳴らせて、ワクワクしていると……。


「皆のものー!! 人間様を崇め、奉る宴を開くのじゃ!!」

「ちがーうっ!! 崇められたいわけじゃないんだってばー!」


 メリリカは両手を握りしめて、悲しみの叫び声をあげたのだった。

もし少しでも「先が気になる」「面白そうだ」と思ってくださいましたら、

下記評価ボタンより評価、またブクマ登録をよろしくお願いします……!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ