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最後の魔女は自重したい! 〜転生しても最強すぎて世界が放っておいてくれない〜  作者: 斧名田マニマニ
1章 最強魔女は、異世界でもやっぱり最強だった
3/10

2話 大岩、木っ端みじん

(人間は1000年前に戦争で滅びたって……ええええ、マジかーい)


 それは驚きだ。

 元いた世界の法則でしか今は考えられないけれど。

 戦争をきっかけに特定の人種だけが滅びるといえば、限られた理由しか思いつかない。


「それって、人間が他の種族に滅ぼされたってことなのかな?」

「ほえ? うーんと、どうして滅んじゃったのかはよくわかんないです! 詳しいことは、ババ様の持ってる巻物に書いてありますよお! 私は人間が活躍する巻しか読んでなくて……」

「あー、それは気持ち分かるよー。私も続き物の本、自分が気になったやつしか読まない。なんなら最終巻だけ読んじゃうわ」

「えへへー、おそろいうれしいですー」


 メリリカは頷きつつも、どうしたものかと考えた。


「人間が滅びた世界に来ちゃったとはねえ……」


 エルフの女の子は、大真面目な顔でうんうんと頷いている。


 でも、その伝承がどこまで本当のなのかはわからない。

 特定の種族だけが絶滅することはありえるとしても。

 まさか人間がって気持ちが拭えない。


(人間って環境適応能力、結構高かったと思うんだけどなあ)


「生き残りぐらいいるんじゃないの?」


 メリリカが尋ねると、エルフは勢いよく頷いた。


「はい! 私もずっとそうだったらいいなあって思ってたんです!! だから、こうして生き残りの人間さんに出会えて本当にうれしいですーーっ!」

「あーそっか、そうなっちゃうかー。そうだよねえー」


 要するに、メリリカがその生き残りの人間ということになってしまうのだ。


「でもこんな田舎の村に、伝説の人間さんが来てくれるなんて感激ですー! 是非村のみんなにあって下さい! ババ様にも紹介しなくちゃ!」

「巻物見せてもらえるかな?」

「はい! きっとババ様喜びますよお! 巻物にサインしてほしいって言うかもしれません!」

「オーケーオーケー、サインなら慣れてるからね。いくらでもしてあげる」


(ババ様って人なら詳しいことを知ってそうだな)


「そのババ様のところに案内して欲しいんだけど、お願いできる?」

「もちろんですー! あ、でも……」


 エルフの少女はしょげたように俯いた。


「ババ様はいま、村の人たちと山に向かっちゃいました」

「山? ピクニックとか?」

「違います、岩を削る方法をみんなに指導してくれるんです!」

「岩を削る……」


 炭鉱ということだろうか。


「実は10日前に大きな落石があって、山の狩場に行く道が塞がっちゃったんです。だからそれを削ろうってことになって!」

「ええええ。岩を削るってどういうこと!?」


(道を塞ぐほどの巨大な岩なんだよね?)


 それを削ってどうにかするなんて難しいんじゃないだろうかと、メリリカは小首を傾げた。


「もっとこう……どかーんとやっちゃったほうがいいんじゃないの? 削るって大変でしょ?」

「どかーん? なんですか、それ?」

「あー。そっか、魔法使えないんだったっけ」


 前の世界では、そういうことがあったとき、魔女たちが依頼を受けて魔法で爆破していたのだ。

 人間がいなくなった世界というのが本当であれば、そういうことも出来ないわけだし。


「その道が通れないと、迂回して危険な区域を通るしかなくて大変なんです。だからみんなで協力して岩をなんとかするんです」

「お、おう……」


 それってものすごく大変な作業ではないだろうか。


「エルフは力が弱いので、落石があると、毎回削るのに数ヶ月かかっちゃうんですよお。村の人がその作業に駆り出されちゃうせいで、畑の人手も足りなくて……。困ったものです、はぁ……」

「ふうん……」


 困った、という単語を聞いた瞬間、メリリカはピクリと動きを止めた。


(困ってるのかあ。そうかあ。私ならなんとかできちゃうよなあ……)


 体の内側がもぞもぞとしてくるあの感覚がやってくる。


(いや、でも、私はそれが原因で死んだんだし、自重しないと……)


 そう思ったのに、気づいたらこう言っていた。


「落石の現場まで案内してくれる? ちょっと様子を見てみたいんだ」


 ◇◇◇


 エルフの女の子と一緒に山の中に入って、しばらく歩いていると……。


(ん? この黄色い岩って……)


「ねえ、これ――」


 少女に話しかけようとした直後、木々の向こうから気合いの入った声が聞こえてきた。


「みなのものー! 精神を統一し、集中するのだ!! さもなければ怪我をするぞー!」

「はいっ、ババ様っ!!」


 岩の周りと取り囲んだエルフたちが、真剣な顔でノミを振るっている。

 その後ろには腰の曲がったおばあさんが、勇ましく杖を振り回していた。


「心を一つにー!」

「この岩を、親の仇だと思ってー!!」


 カンカンカンカン。

 音を響かせながら、エルフたちが岩を削ろうと頑張っている。

 だけどその結果といえば大岩の表面が、ちょっと削れるくらいで……。


(これじゃあ何ヶ月もかかっちゃうなあ……。エルフたち、すごく困ってるみたいだしなあ……。助けたら、私が好きなあの言葉言ってくれるんじゃないか……?)


 そう思うと、ますます体の中から、あのむずむずが沸き起こってくる。

 ものすごい下心とともに。


(手助けがしたいっ。うーん、どうしてもしたいっ!)


 我慢できず、メリリカは口を開いた。


「みなさん! その岩から離れてー!」

「え!?」


 その瞬間、エルフたちが一斉にメリリカを見た。


「な、なんだ、そなたは……」

「いいから早く! 危ないので!!」

「わ、わ、もしかしてまた落石が来るの!?」


 ひとりの言葉に、エルフたちが慌ててそこを離れる。

 落石がくるわけじゃないんだけど、まあいい。


 メリリカは岩の前に手を翳すと、一気に魔力をそこへ集中させて、解き放った。


「よいしょ、っと」


 どおん!! という地響きの音。

 もうもうと上がる砂煙を前に、エルフたちが震え上がっている。


「きゃー!? なに、いまのは何ー!?」

「天変地異じゃー!! 神の御怒りじゃ!!」

「いえいえ、違いますよ。安心してください」


 逃げ惑うエルフたちに向かって、メリリカは胸を張ってみせた。

 晴れていく砂煙。

 やがて視界が明瞭になるにつれて、エルフたちはあんぐりと口を開けることになった。


「え……い、岩が消えた!?」

「ど、どういうことなの!?」


 跡形もなく消え去った巨大な岩と、すっかり開けた道。

 その前に立って、メリリカはふふんと笑顔を浮かべた。


「岩を消すぐらい朝飯前です。だって私、最強魔女なので」

もし少しでも「先が気になる」「面白そうだ」と思ってくださいましたら、

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