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最後の魔女は自重したい! 〜転生しても最強すぎて世界が放っておいてくれない〜  作者: 斧名田マニマニ
1章 最強魔女は、異世界でもやっぱり最強だった
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1話 どうやら伝説の種族らしい

 次に目を開けると、メリリカは大草原の真ん中に立っていた。


「ここが転生先の世界かー!」 


 とはいえ今のところ、元いた世界と異なるところは見当たらない。


「草原の真ん中だもんね。文明のある場所にいったら、違いがわかるかも」


 周囲には、一面青々とした草が揺れている。

 爽やかな風が吹き抜けるたび、濃い緑の匂いが香った。


「うーん、この匂い癒されるなあ。過労で淀んだ心が浄化される感じ!」


 伸びをしてからまず試したのは、当然、魔法が使えるかどうかだ。

 火魔法、水魔法、光魔法、風魔法。

 よく使う辺りをひととおり試してみた。


「うん。全部問題なく使えるな。よしよし。魔法が使えれば安心だ」


 この世界でも不自由なく能力を発揮できそうなので、ホッとした。

 今度は身体検査をする。


 手足はすらりとしていて、どちらかというと華奢な感じ。

 視界の感じからいって、あまり身長は高くなさそうだ。

 まあそれも前世と一緒なので、よしとする。


 着ているものはシンプルなワンピース。

 これは素っ気なさすぎてよろしくない。

 魔女の帽子がないのも頭がスースーして落ち着かなかった。


 そして、薄々気づいていたけど、この胸……。

 改めて胸元を見下ろして、むんずと両手を押し当てる。


「どうしてこうなった……?」


 完璧で完全なる存在だった、前世メリリカの唯一のコンプレックス。

 それが今世でも相変わらずなのだ。

 せっかく今回は別の体、別の外見、別の人生を手に入れたのに。

 能力値を引き継ぐって言っていた。

 外見偏差値も引き継いだということだろう。

 でもどうして貧乳まで引き継ぐのだ。

 貧乳もステータスのうちに含まれていたのだろうか。


「責任者に問いたい……! いや、でもまだ成長期の可能性もあるからね……! 大丈夫……大丈夫……」


 とりあえず集落を目指して、てくてく歩いていく。


 テクテクテクテク……。


 前世では急いで移動しないといけないことが多かったから、いつも箒で飛んでいたけど、こうやって歩くのも楽しい。


 さらに進むと、山にぶつかり、その麓を流れる小川を見つけた。

 喉も乾いてきたので、ちょうどいいタイミングだ。

 メリリカは水際までいって、水面を覗き込んだ。


「ふむ。今度の私は、桃色の髪の女の子か。これはこれで悪くないな」


 腰までの長い髪はふわふわと柔らかく、風がふくたびに優しくなびいた。

 しかも前世に負けず劣らずの美少女だ。


「まあまあってとこかな」


 自分の顔に満足したので、集落を求めてさらに進むことにした。

 てくてくてくてく。


 ――そうしてほどよい疲れを感じはじめた頃。

 メリリカは山の谷間に小さな集落を発見した。


「はーっ。やれやれ。お疲れ、私」


 ワンピースに変わるものに着替えたいけれど、あまりに小さな村だから、商品のラインナップには期待できそうにない。

 それに服を買うには、お金がいる。

 メリリカには魔法があるから、なんとでもなるだろうが、とにかく情報収集が必要だった。


 少しずつ近づいていくと、家々は異様に小さく、嵐がきたら吹き飛ばされそうなくらいちゃちな作りをしていた。


「うわ。屋根なんて葉っぱって覆ってるだけだ」


 もしかして結構、原始的な世界なのだろうか。

 村の入り口できょろきょろしていると、野菜かごを持った女の子が通りかかった。

 金色の髪の間から、特徴的な耳が伸びている。

 エルフだ。


 ここって人間の集落じゃないのかと思いながら、女の子に声をかけた。


「こんにちは。私は魔女のメリリカです。この世界のことについて色々お尋ねしたいんですが、今、お暇ですか?」


 エルフの少女は、なぜかポカンと口を開けたまま固まっている。


「おーい。聞いてる?」

「そ、その耳……その鼻……その肌……う、うそいや、そんなまさか……」


 彼女は信じられないという感じで私を見つめている。


「はのっ……あなたはどの種族の方ですか……!?」


(どの種族って……)


 もしかしてこのエルフ、自分たちの集落から一度も出たことがなくて、よその種族を知らないのか?

 メリリカはありえるかもと思いつつ、腰に片手を当てた。


「私は人間だよ。人間見るの初めて?」

「人間って……伝承に残るあの種族!? 最初に火を操り、文字を発明した……!? それに魔女って言ってました!? 魔女って魔法を使えると言われたっ!?」

「そりゃあ魔女から魔法は使えるよ」

「す、すごい人に会ってしまいましたーっっっ!! ま、ままま魔法が使える人間様っ……!!」


 やっぱりこの反応、人間を見たことがないらしい。

 それに魔法も見たことがないようだ。


 減るものじゃないから、サクッと詠唱して小さな火の玉を手のひらに出してみせた。

 すると少女は瞳をキラキラさせて、感動の叫び声をあげた。


「うわあああ!! これが伝説の力!! すごいですっっ!! 絵本で見た憧れの人間が、魔法を使っているのを目の前で見れるなんて……!!」


 少女は涙ぐんですらいる。

 メリリカは人差し指を振って、チッチッチッと舌を鳴らした。


「人間なら誰でも魔法を使えるわけじゃないよ。生活魔法ならまだしも、火魔法は魔女や魔法使いじゃないと無理」

「そうなんですね! じゃああなたはすごい魔女様なんですねっ」

「まあ、否定はしないよ。元いた世界では、最強魔女と呼ばれるほどの存在だったからね」


 って得意になっている場合ではない。

 そんなことより、人間が伝承に残る最強の種族ってどういうことだろうか。


 どちらかというと人間は、個体としての能力は低くて、突出した部分がない。

 だから生き残るために知恵を絞って、魔法の研究とかを頑張ってきたわけだ。


「ねえ、なんで人間が伝承になってるの?」


 少女に尋ねてみると、信じられない答えが返ってきた。


「だって人間は1000年前、終末戦争のときに滅びているので。そのときに他の亜人たちを救ってくれたけど、もう今では伝承の中だけの存在なんですよお!」

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