器、もがく2
「それで……ガイルに拐われた後、何がどうなってアンムートにいたんだ?」
「え」
仮眠を終えた私達は、また馬に乗り国境へと急いでいた。私は今度はレギウスの前に乗せられていたのだが、急に上から降ってきた問いに、言葉を詰まらせた。
「………ガイルと何があった?」
ジルシチュールが位置の特定をした時、アンムートに私がいることが分かったらしいが、彼らは私がガイルに拐われたところを見ていたそうだ。
「い、色々だよ。それで逃げたところをアンムートの人達に捕まってしまって」
「何をされた?」
強い口調に、焦る。後ろにいるのでレギウスの表情はわからない。
「…………お、襲われかけて」
「バカ!」
大きな声に周りの皆がこちらに注目する。
「ちょっ…」
「あいつは瀕死だったとジルシチュールから聞いてる。まさか怪我を治したのか?」
ピリッとした空気に、肩をすくめて縮こまる。
「放っておけなかった。死んでしまうのを見過ごすなんてできない」
「………トウコは甘過ぎる。それで酷い目にあっていたら世話ないな」
「う……ぐすん」
自分でも思っていたことを指摘されて、涙が溜まる。
「あ」
「そんなの……わかってるよ、うええん」
泣き出したら、レギウスが口を閉ざした。
「トウコを苛めたのですか。可哀想に」
「なんで責めるんだよ」
ジルシチュールと他の人が私を庇ってくれようとする。
「………すまない、つい」
うろたえた声がして、頭を撫でられた。
「うう、私だって、まさか2度目のキスまで奪われると思わなかったし」
「な、何!」
「服脱がして洗ってあげて、ご飯も作って介抱したのに」
「く!」
「私が何をしたと言うの!」
なぜ私ばかり。その気持ちは、この世界に来てからずっとだ。
腹立たしさが沸いて、そう言えば、周りがシンと静まった。
「トウコ………」
馬を止めてレギウスは下りると、私の顔が見えるように前に回り込んだ。
見上げる彼は、真剣な表情だった。
「言い過ぎた。すまない」
「………………」
「すまない」
「トウコ、彼は焼き餅を」
「う、うるさい」
ジルシチュールの言葉を消し、レギウスは顔を赤らめた。
「ずっと苦しんでいたのに、こんなことを言ってすまない。トウコを責めたいわけじゃない。俺は、早く助けられなかった自分に腹を立てているだけだ」
「………私、私ね……もうすぐ消えて」
私の手を手で包んで、レギウスは俯いた。
「知ってる」
ポロッと零れた涙が彼の手に落ちた。
「本当は………助けて欲しいの」
「ああ、そうするさ」
目を瞬かせた私を見ながら、彼は再び馬上に乗ると、一度後ろから私を覆うように抱き締めた。
「もう悪夢を見なければいいな」




