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第五章 動き出す西

 

 魔王は消えていく時倒れているケルベロスに最後の命令を与えていた。

 死ぬまで暴れろと。

 ケルベロスは魔王の命令に従い、ボロボロの体で立ち上がり命を炎に変えて最後の戦いに挑む。

 たとえこの命が消えようともケルベロスは魔王の期待に応えなくてはならない。

 立ち上がり扉を背にして炎を纏ったケルベロスは、雄叫びを上げた。


(あれ~あんな情報魔物図鑑に載っていましたっけ?)


 リーベルは冷や汗を垂らしながらケルベロスを見て思った。

 幸いケルベロスは巨大でこの部屋の出口まで行ければ追っては来れない。

 しかしその出口の扉をケルベロスが塞いでいる。

 

「俺が奴を引き付ける。君はその隙に逃げろ」

「え?ちょっと!?」


 リーベルの引き止めを無視し魔王にヴェンデッタと呼ばれた少年はケルベロスへと走る。

 ケルベロスは前足を使って地面に叩くと地割れが起きてヴェンデッタを襲う。

 

(バランスを崩された!?)


 地割れによってバランスを崩したところをケルベロスは逃がさなかった。

 その鋭き爪でヴェンデッタの体を切り裂く。

 バランスを崩されたヴェンデッタはダメージはあまりないが衝撃を殺しきれずに吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされたヴェンデッタにケルベロスは火炎玉を何度も叩き込む。

 

(ダメージはあまりないがこの状況だと動けないな)

「ああもう!!しょうがないですね!!」

 

 今なら出口へと向かうことができるがリーベルはヴェンデッタを救うためにケルベロスに向かってナイフを大量に投げる。

 ナイフ全てはケルベロスの体毛に阻まれるが注意をリーベルに惹きつけることに成功した。

 ケルベロスは怒りのままにリーベルを襲うが難なく回避されてしまう。

 ケルベロスは回避したリーベルを見るが彼女は狐へと変わっていた。

 それはリーベルの獣化の姿だった。

 体力は消費されるが身体能力は跳ね上がりケルベロスの攻撃を次々に回避していく。

 ケルベロスはさらに怒りを増してこの部屋全体を炎で包み込もうと、全力の炎を吐き出すために力を溜めようとするがその隙を彼は見逃さなかった。

 ケルベロスがリーベルを攻撃するのに夢中になっていた間に立ち上がったヴェンデッタは、いつの間にかケルベロスの腹の下に潜り込んでおり彼が炎の槍で貫いた時にできた穴に向けて全力の炎を叩き込む。

 ヴェンデッタの炎はケルベロスの体内に入り内側から焼いていく。

 さらにリーベルが人型に戻りケルベロスの三つの頭の目全てにナイフを投げ刺した。

 二人の攻撃に思わず悲痛の叫びを上げるケルベロス。

 リーベルはさらに追い討ちをかけるようにナイフを投げる時に貼り付けておいた紙に向かって念じる。

 彼女がナイフに貼り付けていたのはこの世界で呪符と呼ばれる紙だった。

 この世界にいる呪術師と呼ばれる使い手が好んで使う紙でその呪符に彼らは己の術を掛けて相手を呪う。

 そしてリーベルは冒険者であると同時に呪術師でもあった。

 リーベルは呪符を貼り付けたナイフ全てに呪いをかける。

 

(呪術なんてあんまり使いたくありませんでしたが仕方ありません!!)

「呪術:氷葬!!」


 そう彼女が唱えるとケルベロスの目に刺さっている呪符が張り付いたナイフ全てが氷り刺さっていた目もそれに巻き込まれる。

 体を内側から燃やされ目を凍らされたケルベロスはあまりの激痛に暴れまわるが次第に弱まり力尽き倒れる。

 倒れたケルベロスは粒子となって消えていき一部の毛皮や牙のかけらといった素材を残して消えていく。


「お、終わりました~」

「すまない助けてもらった。ありがとう」


 ケルベロスの消失を確認するとリーベルは安心して力が抜けたかのように床に座る。

 ヴェンデッタ青い炎を消しながらリーベルに近づいて謝罪と感謝を言う。

 

「いえいえ構いませんよ~。正直あなたがいなければ私逃げるか死んでましたし」


 リーベルの言うとおりケルベロスに致命傷を与えたのはヴェンデッタであり、ケルベロスのほとんどのダメージは彼である。

 

「こういう時は自己紹介をすべきなのでしょうけど貴方の名前は……」

「……いや構わない。俺の名はヴェンデッタだ、本当は違うし忌々しいがこれしか名乗れない以上仕方がないしな」

「そうですか、では私の名前はリーベル。リーベル・ステイルです。ヴェンデッタとは長いですからヴェン

さんと呼んでもいいでしょうか?」

(…なるほど略称か。小さな抵抗だがそれでもヴェンデッタと呼ばれるよりはマシか。)


 おそらく彼女なりの気遣いなのだろうとヴェンデッタは思い頷く。


「ああ、そう呼んでくれるととても嬉しい、ありがとう」


 ヴェンはリーベルに手を差し伸べながらお礼を言う。

 リーベルは微笑みながらその手を握り立ち上がる。


「ところでその姿コスプレじゃないよね?」

「はい?」


 ヴェンの質問にリーベルは首をかしげるのだった。



 ◇◆



 魔王城。

 魔界化した北の大地の何処かにあると噂されている魔王の住処。

 その玉座に座っている魔王は一人笑っていた。

 

「ぷっ、くくくく。予定通り僕のヴェンデッタの封印は解かれた。さて君はどう動くかな【黄金の守り手】?急がないと西が動くよ」


 魔王はこれから起きるであろう彼の運命が楽しみで仕方がなかった。

 

 (愛しのヴェンデッタはこれから新しく生まれ変わった世界で生きていく。多くの者が君の力となり助けてくれるだろう。ああそれはなんて素晴らしい物語だ。……でもね)


 そして手のひらから青白い炎を取り出す。


「それだけじゃあつまらないよね♪」


 その青白い炎を見つめ魔王は深い笑みを浮かべる。

 

 彼は喜んでくれるだろうか?

 

 悲しんでくれるだろうか?

 

 そしてさらなる怒りや憎しみを、私にぶつけてくれるだろうか?

 

「まずは()()()で実験を始めようかな?」


 ヴェンデッタにとって更なる悲劇が起こることを彼はまだ知らない。



 ◇◆



「作戦通り彼女は上手く封印を解いたようです」


 ヴェンデッタ立ちがいる迷宮を囲む樹海の外で、リーベルを迷宮へ導いた老婆が隣に立つ男に言う。

 男は老婆の言葉に頷く。


「うまくいったか、さすがあの一族の娘だ」

「家を出て名前を変えてまで冒険者になった変わり者ですが今回はそれが幸いでした。おかげで【黄金の守り手】より先に接触できそうです」


 老婆の言葉に男は笑い、後ろに控える部下たちに号令をかける。


「うむ、ではこれより偉大なる英雄を迎えに行こうではないか!全ては我ら西の帝国のために!!」

「「「「西の帝国のために!!」」」」


 部下たちの言葉に満足そうに頷く男に老婆は言う。 


「では参りましょうか、我ら帝国の英雄ドレイク・レオンハルト中将」



短い文章で済みません。これからも短い文章になる時がありますがよろしくお願いします。

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