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第二章 冒険者リーベル

 かつて私たちの世界は地球と呼ばれていました。


 そこには今の私たちには想像できない高度な文明を持った人々が住んでいました。


 文明はさらに発展し人々はついに地球という世界を超えて新しい世界へと目を向けていました。


 しかし突如異世界から転生してきた魔王によって世界は一変します。


 魔王は闇より深い黒髪と血よりも濃い紅い瞳をした恐ろしくも美しい女でした。


 そんな魔王は世界を滅びへと導き多くの人々を殺めていきます。


 そして魔王は殆どの人間を殺すと何処かへと姿を眩ませてしまいます。


 魔王が去ったあとの世界は死に絶え生命を持つ者は残りわずかとなっていました。


 もはや僅かに生き残った生命達もこれまでかと思われた時一つの奇跡が起こりました。


 生き残った僅かの生命の一つが女神へと覚醒したのです。


 女神はなんと魔王と同じ異世界から転生してきた存在だったのです。


 女神は生き残った生命を保護したあと大樹へと姿を変えてこの世界を転生させました。


 そして大樹となった女神は転生した世界の大地に根を下ろしました。


 女神が大地へと根を下ろすとそこから新たな生命が草や花や木が生まれ、水が湧き出て川を作り湖が生まれました。


 そして新しく生命が生きていける大地へと生まれ変わった世界に、前の世界で彷徨っていた多くの生命の魂を順番に生まれ変わらせたのです。


 しかし生まれ変わった生命の中には変わった姿をした者たちがいました。


 それは後に森人(エルフ)ドワーフ(鉱人)獣人(ビースト)と呼ばれるようになり、互いの価値観の違いからやがて人間を巻き込んでの長い対立が起こりました。


 女神はなんとかこの争いを収めるべく前の世界で保護をした生命の二人と一匹を目覚めさせ、女神自ら彼女らの修行を行い女神の使徒として争いを収めるべくそれぞれ旅立たせました。


 女神の使徒達は各地で起こる争いを収めて行き、ついに長きに渡る種族の対立を終焉へと導きました。


 女神の使徒達はやがて役目を終えて再び女神の下で眠りにつきました。


 人々は己の過ちに反省し互いに協力し合ってやがて環境の厳しい北の大地を除き東、西、南、中央の大地に四つの国を作りました。


 そこからまたしばらく平和が続いていましたがやがて新たな問題が発生しました。


 魔王が再び姿を現し大陸の北の大地に自分の根城を建てたのです。


 そして魔王の魔力によって北の大地は魔界化へと変わっていきます。


 そこはもはや人が住める環境ではなくなりさらに魔物や魔族が世界各地に出現しました。


 世界各地へと現れた魔物たちは自分たち以外の生命すべてを略奪し殺戮を行います。


 人々はこの危機に団結し立ち向かいました。


 女神の使徒達も眠りから覚め戦いに加わります。


 やがて魔王はまた姿を眩ませますが魔物の進行は今も止まりません。


 それでも人々は自分たちをこの世界を守るため今も戦っているのです。




「おい嬢ちゃん起きな。目的の場所についたぞ」

「はぇ?」


 馬車に揺られついウトウトと寝ていた少女は頭の上に二つ生えた獣耳をピクピク動かしながら目を覚ます。

 口から垂れていた涎を慌てて拭きながら随分と昔話の夢を見ていたなと思いながら自分を起こしてくれた御者の男に聞く。


「私寝てました?」

「ぐっすりとな。だが安心しな、いびきは聞こえなかったぞ」

「ほ、それなら良かったです」

「しかし金は貰っているからいいが、なんだって獣人ビーストのお嬢ちゃんがこんな危険な森へ入ろうとしているんだ?」


 御者の男は目の前に広がる巨大な樹海の入口で馬車を止めて後ろの荷台へと振り向く。

 そこには紫色の長髪に獣耳をした褐色肌の少女がいた。

 年は16~18ぐらいであろう少女は口に人差し指を当てながら忠告する。


「依頼した時にも言いましたが秘密です。ていうか目的を言わない分のお金も支払ったのですから諦めてください~」

「いやあ、へへへ。もし儲け話なら一口乗りたくて」

「諦めてください♡」


 とても可憐な笑顔だがその声には有無を言わせない圧迫があった。

 御者の男はその笑顔を見て諦めたような表情で言う。


「へいへい了解しましたリーベル様」


 男が諦めるとリーベルと呼ばれた獣人ビーストは荷台から降りて背筋と尻尾を伸ばし首に紅いマフラーを巻く。

 彼女の名はリーベル・ステイル。獣人ビーストと呼ばれる種族の一つ狐族の少女で冒険者をしている。

 獣人ビーストとは人の姿をしているが、獣耳と尻尾を持ち他の人種より身体能力が高く特に五感に優れた種族だ。さらに獣化と呼ばれる種族スキルを持ち動物へと変化することができる。


「この樹海はまだ危険度は低いがそれでも魔界化しているんだ気をつけるこったな」


 荷物確認を終えて準備体操をしているリーベルに御者は忠告する。


「わかってますよ~。それでは三日後にまたこの場所でお会いしましょう」


 彼女は笑顔でそう言うと種族スキル獣化で紫色の狐へと変化して、御者の目に止まらぬ速さで樹海へと入っていく。


「ええ、もちろん三日後に」


 彼女の姿を見送った御者の男は暗い笑みを浮かべながら呟いた。



 ◇◆


 

 樹海へと侵入したリーベルは徘徊する魔物たちを避けながら進んでいく。

 気配を消し音を立てずに走る彼女に魔物たちは気づかない。


(ふふふ、高い買い物でしたがどうやらこのマフラーは役に立っているようですね~。おかげで魔物たちにも気づかれていません)


 彼女が身につけているマフラーはマジックアイテムと呼ばれる物の一つで、気配消失Aのスキルが発動している。

 これによって彼女の気配は完全に消え魔物たちは聴覚・嗅覚・触覚で彼女を見つけることができず気づかないのだ。

 彼女を見つけるには同等のランクを持つ気配感知のスキルか魔法を発動しなければならないが、そのような魔物は数が少ない。

 それに彼女には敵感知Cのスキルを持っており自分を中心に半径20mまでならば敵の位置と強さがわかるのだ。

 マジックアイテムと自分のスキルを駆使しながら樹海の森を探索していく。

 走っては休憩を入れてまた走っては休憩を入れながら3時間が経った。

 

(情報通りならそろそろですかね)


 リーベルはそう思いながら走っている時彼女の獣耳が反応した。


(む!?近くに聴き慣れた音が聞こえてきましたね。目的地は近いようです!)


 音に近づくたびに彼女の心は躍り、その表情は明るくなっていく。

 そしてついにリーベルは目的地へとたどり着いた。


(ああ、あの占いは本当だったのですね!)


 彼女は目の前に広がる迷宮の入口を見つけ獣化を解き大いに喜んだ。

 なぜなら北の樹海の森に迷宮が発見されたという情報は今までない。

 もちろん彼女より先にこの迷宮を発見した者が意図的に隠した可能性もあるが、もしそうだったとしてもこの迷宮の情報を冒険者ギルドに報告するだけでも大金が手に入る。

 そしてもし本当にまだ誰にも発見されていなかったとしたら、迷宮の中にはまだ誰にも手をつけられていない財宝やマジックアイテムがあるかもしれない。

 

(ここまでは本当に占い通りでした。そしてこの先も占い通りだとしたらこの先に私の人生を変えてくれる出会いがある)


 まだ発見されていない迷宮。

 一体どんな恐ろしい魔物や罠が潜んでいるのかわからない。

 それでもリーベルは期待を胸に膨らませ迷宮へと入っていった。






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