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序章 プロローグ 絶望編

駄文ですがよろしくお願いします。

 

 なんでもない普通の平凡な日々が続くはずだった。

 少なくとも今日という日が来るなんて誰も思わなかったはずだ。

 西暦2018年4月9日。

 この日俺たちの世界は、地球という星は一人の少女によって炎に包まれた。


 目の前に広がるのは炎の海。

 聴こえてくるのは阿鼻叫喚の嵐。

 炎から逃げようと我先にと人々が走っている。

 しかし炎はまるで意思があるかのような動きで逃げている人を捕まえ燃やしていく。

 人々は言う、どうしてこうなったのかと。

 人々は言う、助けてくれと。

 俺はそんな地獄のような光景から逃げたかった。

 その場から離れたかった。耳を塞ぎたかった。目を閉じたかった。

 だが俺はその場から動けず、耳を塞ぐことができず、瞼すら閉じることができない。



「……やめろ、頼むからもうこんなことはやめろ!!」



 俺は叫んだ。

 もうやめてくれと。もう見せないでくれと。もう聴きたくないと。

 目の前のこの惨劇を引き起こした女に叫んだ。

 だが俺の叫びは届かず女は狂ったような笑い声を上げるだけだった。

 なんでこうなった。どうしてお前がこんな事をするんだ麻奈(まな)



「どうして()()()であるお前がこんな事をするんだ!!」



 今この瞬間も信じられない。

 なんでお前が()()()()()()()()()()()()()なんだ。

 俺は二時間前のことを悲劇の始まりの時を思い出していた。




 ◇◆




 俺の名前は東条綾人(とうじょうあやと)

 この春からついに高校三年生になった普通の平凡な青年だ。

 彼女はおらず、そこそこいる友人達と遊びながらそれなりの学園生活を送っている。

 受験はあるが高校最後の年ということで悔いは残さない学園生活を送りたいものだ。

 俺は友人や知人に先生達に挨拶をしながら一階にある三年生の教室へと向かう。

 ああようやく夢に見た一階の廊下だ。

 これで一階の食堂には近くなるし、グラウンドや体育館にもわざわざ登ったり降りたりすることがなくなる。

 俺は幸せでいっぱいだった。おそらく食堂の戦争を経験した事がある人達は俺のこの気持ちが理解できるはずだ。

 一階の廊下を少し歩くと人だかり出来ていた。おそらくクラス表だろう。

 クラス表を見ては喜んでいる者もおれば、悲しんでいる者もいる。

 気持ちはわかる。

 高校最後のクラスなんだ、できれば仲のいい友人や気になる人と同じクラスがいいだろう。

 俺も早速クラス表を見に行こうとする、すると


「オッス、綾人」


 人だかりの中から抜け出して声を掛けてきたのは友人の田村幸生(たむらこうせい)だ。

 幸生と知り合ったのは高校一年だが今では同年代の中で一番仲がいい友人だ。


「珍しく早いな幸生。いつもは登校ギリギリのお前が今日は俺より早く来るなんて」


「だって高校最後のクラス替えだろう?早く見に来るのは当然っしょ」


「そこは嘘でも入学式だから早く来た事にしとけよ。お前らしいけど」


「一年の入学式なんて俺ら退屈じゃん?まあ半日で終わるのは嬉しいけどな」


「……今年の入学式は俺にとっては大切な日なんだけどな」


 そう、今年の入学式は特別だ。

 なぜなら俺の妹の麻奈が今日から新一年生としてこの学校に入学する日だからだ。


「あーそういえば前に言っていたお前の妹が入学してくるんだったな。お前と同じ中学から来た奴が言っていたけどめっちゃくちゃ可愛いんだって?なんかアニメやライトノベルの妹キャラがそのまま現実に出てきたような娘だって言っていたぞ」


 その表現の仕方はおそらく二次元大好きオタクの智也だな。後で締め上げよう。

 それにしてもあいつまさか幸生以外にも同じ内容で喋っていないだろうな?


「後は雪ちゃんも言っていたな。綾人の妹とは思えない可愛くて頭が良くて性格もいい女の子だって」


「雪も言っていたのかよ。まったく余計なお世話だ」


 雨宮小雪(あまみやこゆき)、小学生の頃からの腐れ縁で高校も一緒の俺の数少ない女友達の一人だ。

 俺の妹とも仲がよく面倒を見てくれていた女だ。

 そこは感謝しているが時折俺をからかってくることがあり、今回のもその一つで俺を困らせようと妹の噂を流しているのだろう。

 俺はため息を吐いてクラス表を見る。

 ……予感はあったけど俺の新しいクラスには幸生、智也、雪の三人がいた。



 ◇◆



 それから俺は新入生を迎えるための入学式が行われる体育館に向かい、席に着く間いろんな奴からの質問攻めを受けていた。

 小学生や中学生の時も同じことが起きたけど、妹は本当に可愛いのかとか、今度紹介しろだの好き勝手質問してくる相手をあしらうのは本当に疲れる。

 クソ智也に雪め覚えていろよ。後で絶対に仕返ししてやる。

 俺がそんな決意をしたと同時に入学式が始まった。

 新一年生が現れ、席についてから校長の長い話や学校関係者のありがたい言葉など進行は問題なく進みそして


<続きまして新入生答辞。新入生代表、東条麻奈(とうじょうまな)


 ついに新入生の答辞が始まる。

 呼ばれた真奈が席を立ち壇上に上がると体育館全体がざわめきだした。

 他の奴等からしたら黒髪に紅い瞳をした絶世の美少女が壇上に現れたのだ。

 智也も言っていたがまるでアニメや小説に出てくるような、まるで現実には存在しないかのような美少女に生徒だけでない保護者や教師も思わずざわめき出す。

 そして真奈がマイクに近づくと体育館全体が静まる。

 真奈の言葉を聞き逃さないように耳を澄ませてるんだろう。

 先程まで真奈の登場で俺の周りにいた奴らが信じられないような顔で俺を見ていたが、みんな彼女の方へ向いている。


「暖かな春の訪れとともに、このような素晴らしい日を迎えることができ私達一同は大変感謝しております。」


 彼女の言葉は皆が期待していた通りとても美しい声だった。

 思わず聞き惚れている奴もいるほどだ。俺も自慢の妹が注目されていて鼻が高い。

 だがしかし次に放たれた言葉に俺達は困惑することになる。


「本当に……本当に、今日という日が迎えて私…いや()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 !?真奈の様子がおかしい。何だ?何を言っているんだ真奈!?

 俯きながら肩を震わせて笑っている麻奈に周囲がいや体育館全体がざわめいていく。

 生徒指導の山中が壇上に上がっていくのが見えた。

 彼女を止めようとしているのだろう。

 だが次の瞬間事態はさらに急変する。


「こら、まだ新入生の言葉は終わってないぞ♪」 


 真奈はいつもとは違う口調で話し、そして指を鳴らす。


 ……は?


 なにが起きた?


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 みんなが固まっていた。

 俺を含め誰もが信じられない顔で妹の真奈をそして、血まみれで倒れている田中を見る。


「おっと手が滑っちゃった♪ごめんごめん。」


 真奈の言葉に正気を取り戻した女性が悲鳴を上げる。

 それに連鎖するように次々と周りから悲鳴が聞こえてきた。

 みんなが彼女から逃げようと体育館の扉へと走り出す。

 みんなが逃げている中俺は固まっていた。

 今だに信じられなかった。

 なんだよこれ?ふざけんなよ。こんなことがあるわけがない。なんでお前が田中先生を殺したんだ?一体どうやって殺したんだよ。なんで人が死んでいるのにお前は楽しんで笑っていられるんだ!!


「それはね()()()()()


 妹は笑って俺を見ていた。

 俺の言葉の叫びをまるで聞いていたかのように話しかけてきた。


「私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()♪」


 妹は、真奈は狂ったような笑みを浮かべて俺にそう話した。

 意味がわからない。そんなことある訳無いだろう。異世界?魔王?転生?そんな馬鹿な話現実に起こるわけがないだろう!!

 俺は走り出した。

 みんなとは違い妹へ走り出した。

 後ろから俺を呼び止める親父達の声が聞こえたが無視した。

 どんな手品をしたのか知らないがお前は人を殺したんだ。

 償わせてやる、たとえ殴ってでもお前を正気に戻す!!


「ん~お兄ちゃんと遊んであげてもいいけど今は邪魔だから少し眠っててね?」


 真奈がそう言うとまた指を鳴らす仕草をするのが見えた。

 俺は頭の中に先ほどの田中が死んでいく光景が浮かんだ。

 指を鳴らす音が聞こえた。その瞬間全身の力が消えていくのを感じた。

 あれ?俺…死ぬのか?

 俺は意識が遠のいていくのを感じそう呟いて、意識を失った。



 ◇◆



 そして現在。

 気が付くと俺はグラウンドの外に仰向けになって寝ていた。

 なんで俺は外で寝ているんだろうと一瞬思ったが、次の瞬間先程までの事を思い出した。

 そうだ妹は?親父達は?皆は?

 周りからなにか悲鳴のような声が聞こえる。

 やめてくれ?助けてくれ?何だ一体何が起きているんだ。それに暑い。まるで炎囲まれているかのような熱さを感じる。

 俺は周囲を確認しようとしたが、体はまるで地面に縫い付けられているかのように動かない。

 頭すら動かせず空を見ることしかできなかった。

 空はまるで燃えているかのように赤かった。

 最初は夕焼けかと思ったが何処か違う。本当に空が燃えているかのようだ。

 ……なんだあれ?よく見ると真上の空に()()()()()

 まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「やあやあ起きたかいお兄ちゃん?いやもうお兄ちゃんと呼ばないほうがいいかな綾人くん?」


 目の前に妹が顔を覗き込んで俺の名前を呼び話し掛けて来た。


「いや~長年苦労したけど成功してよかったよ。今日という素晴らしい()()()()()()()()を迎えることができて私は今最高な気分だよ♪」


「……なにを言っているんだ?」


 世界最後の日?何を馬鹿な事を言っているんだお前は?


「あっ!その顔は信じていない証拠だね。もうしょうがないな綾人くんは~」


 妹そう言ってまた指を鳴らす。

 すると先程まで動かなかった俺の体は俺の意思とは関係なく動き出し立ち上がった。

 そして見た。

 立ち上がった俺の視界にはグラウンド全体を囲む炎と何かに縛られているかのように動けないでいる皆と、遠くに見える一部の生徒達が迫って来る炎から必死に逃げていた。


「逃げている人達はね、学校で私と同じクラスになったお友達だよ。楽しそうでしょ~。あ、一人捕まった。あれは確かクラスに入ってそうそう私にメアドを聞いてきた柊木くんだ。あの子本当にしつこかったな~」


 まるで世間話のように話しているが、実際は悲惨な光景だった。

 意志を持ったかのように動いている炎は柊木と呼ばれた男を捕まえ全身を炎に包まれ燃やした。

 柊木は泣き叫ぶかのように俺を、妹に向かって手を伸ばし助けを求めながら燃やされ炭になっていく。

 そして次々と妹のクラスメイトたちが燃やされていった。


「やめろ……もうやめてくれ真奈!!もうこれ以上みんなを殺すな!!どうして俺の妹であるお前がこんなことをするんだ!!」


 俺はその場から動けず必死になって妹にやめるように叫んだ。

 だが妹は俺を背にして笑っていた。

 狂ったように笑っていた。

 この地獄のような光景をただただ笑っていた。


「……本当なのか?本当にお前は異世界から転生してきた魔王なのか?」


「そうだよ綾人くん。私はねずっと()()()()()()()()()()()。長い間力を溜めて、機会を見つけて()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!!」


 魔王は俺に自慢するかのように両手を広げ叫んだ。

 ・・・・・ちょっと待て。今あいつはなんて言ったんだ?


「妹の真奈の魂を殺した?」


「だからそう言っているじゃないか綾人くん。僕はねこの体に転生した時、最初表に出ることはできなかったんだ。だってこの体には既に君の妹である真奈ちゃんの魂があったんだから。これは僕も計算外な出来事でね、まさか転生した肉体に既に新しい魂が入っているとは思わなかったんだよ。いや~なかなか苦労したよ彼女の肉体を奪うのに今日まで時間が掛かったんだから」


 妹の体を乗っ取った?

 じゃあ真奈が魔王としての記憶が蘇ってこんなことをしたんじゃなくて、魔王が真奈を殺し妹の体を奪ってこんなことを引き起こしたというのか?

 俺はそれを知らずに真奈を非難していたのか?


「そう、気を落とすなよ綾人くん♪人生誰だって間違いはあるさ。なんせ私達を生んだ親だって気付かなかったんだから」


 魔王はそう言い地面に転がっている親父達を見る。

 親父達はいや、地面に転がっている全員が紐のようなもので体を縛られ、それは口にも縛っており話せない状態だった。

 縛られた皆は攻めるような、もしくは怯えているような目で魔王を睨んでいた。

 魔王はそんなみんなの視線を前進に受け止めながら笑う。

 そして手を横に出すと、何もない空間から亀裂が入り彼女はそのまま亀裂の中に手を入れ何かを取り出した。

 それは一本の刀だった。

 一本の刀を魔王は取り出した。


「……ちょっと待て、お前その刀で何をするつもりだ?」


 嫌な予感がした。

 目線が自然に刀と地面に転がされているみんなへと向ける。

 まさかその刀でみんなを殺すのか!!

 俺は止めようと体を動かす。

 しかし体は動けない。俺にはどうすることもできなかった。


「あげる♪」


 だが魔王はそんな俺の予想と違いその刀を俺に差し出した。


「……え?」


 何を言っているんだ?あげる?なんで魔王が俺に刀を差し出すんだ?そしてなんで俺はその刀を受け取っている?

 俺は混乱した。もうわけがわからなかった。

 そんな俺を魔王は愉快そうに笑っている。それはとても愉快で楽しそうな物を見る様子で笑っている。

 その笑顔に俺は恐怖した。そして絶望をした。

 何故かはわからない。だが理解してしまった。魔王がこれから俺に何を()()するのかを。

 魔王の口が開くのが見える。

 やめろ、やめてくれ、聞きたくない、その命令だけは聞きたくない!!


()()()()()()()()()()()()()()()()()♪」


「……あ」


 その瞬間俺の体が動いた。俺の意思とは関係なく刀を握り締めて、俺の体は転がっている彼らへと歩き出してしまう。

 駄目だ止まれない。やめてくれ、頼むからこんな事させないでくれ。

 俺は魔王に向かってそう叫んだ。

 だが魔王は笑顔で言う。


「大丈夫だよ、安心してね。流石に全員は時間が掛かるから家族と友人と後クラスメイトだけでいいよ♪」


 それは本当に俺に向かって安心させるような声で魔王は言った。

 そして俺は立ち止まった。

 足元には親父とお袋が怯えた表情で俺を見て泣いていた。

 その顔を見て俺の頬に熱いものが流れてきた。

 それは涙だった。怒りからか、悲しみからか、絶望からか、それともその全部を混じった涙を俺は流していた。

 俺の体は刀を振り上げる。


 「………嫌だ、嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!やめてくれ!やらせないでくれ!こんなの間違っている!誰でもいい!誰でもいいから俺を止めてくれーーッ!!!」


 俺の必死な願いの叫びは無常にも振り下ろされる刀の刃によってかき消されてしまった。

 そして魔王が後ろで笑いながら、俺が家族を友人を知人を先生をみんなを殺していくのを楽しそうに見ていた。


 こうして俺の平凡な日常は奪われ、この日俺たちの世界は終わりを告げたのだった。



読んでいただきありがとうございました。

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