昼休憩
大会は昼休みを挟んだ。
俺は一人席に残り、ヒロインズの舞台を思い出していた。
レンとマリナはさっきまで隣にいたのだが、今は集めたお客さんに声をかけに行っている。俺たちの味方の客は、全ての観客の三分の一と言ったところだろうか。味方はヒロインズに拍手をしなかったようだ。
それにしても。
ヒロインズのネタのオチが弱かったような気がするのは俺だけだろうか。本当に脱ぎ出すとか、あるいは二人で乱闘になり、ステージから落っこちる。落っこちただけに、綺麗にオチました。どうも、ヒロインズでした。など。他にも考えつきそうなのだが。
ヒロインズのパフォーマンスは審査員にどのように評価されたのだろう。
考えても仕方ない。
俺は立ち上がった。
キノコに会いに行こう。
午前中で十組のパフォーマンスが終わった。キノコの出番がトリであることはラインで連絡が来ていた。
観客席を出て、控え室へと向かう。ケータイで彼女を呼び出してみる。壁に寄りかかって待った。
右手を顔の前に掲げる。
少し震えていた。
扉が開く。
「ユザ」
キノコは熱っぽい顔をしていた。
「キノコ、大丈夫か?」
「はい」
「風邪ひいたのか?」
「いいえ、大丈夫です」
「昼飯は食ったか?」
「あ、えっと、はい」
食べたかどうか分からない返事だった。
だけど。
この土壇場でかける声なんて一つしかない。
「キノコ、応援してる」
「ユザ」
キノコは顔を赤くした。
「明日、デートに行きませんか」
びっくりした。
間髪入れずに親指を立てる。
「行こう」
「はい」
キノコが引き返していく。
俺はその場に少しの間立ち往生した。




