出発
支度を調えて、家の玄関をマリナと一緒に出る。
外の通路ではキノコが待っていた。いつもと同じキノコ模様の格好をしている。今回は服までも、赤いキノコ柄の入ったワンピースだった。
「おはようございます。ユザ、マリナ」
「お前、やせたな」
キノコはずいぶん体がほっそりとなっていた。この三週間で何があったのだろう。必死に練習したのだろうか。
「えへへ」
彼女はいたずらっぽく微笑する。
「行こう」
俺は先陣を切った。後ろからキノコとマリナがついてくる。
キノコに言いたいことはいっぱいあった。
一人で勝てるのか? とか。
どうして連絡を取ってくれなかったんだ? とか。
だけどそれらの言葉は彼女の心の負担になる。
俺は今日、難しいことを考えるのをやめることにした。
賽は投げられている。
ここに来て出る目を変えることはできない。
マンションから駅へ。電車に乗って、そして朝塚浜プラザまでの道のりを、俺はピクニックに行くような陽気なテンションで二人に話しかけた。
皆、これまで一生懸命戦ったのだ。
負けて転校になっても、悔いはない。
ちなみにレンはすでに現地に行っており、カグヤに睨みを利かせているはずだ。すでにカグヤと不公平をしないという契約を結んだらしい。どんな手を使ったのか、後で教えてもらおう。
「着いた!」
マリナが右手を上げた。金髪に染めたポニーテイルが元気よく揺れる。
「着きました」
キノコは両手のひらを合わせる。
「着いたな」
俺は感慨深く建物を眺めた。大きくて、公民館のような外観をしている。駐車場は車で埋まっていた。今日ここで、決戦がある。




