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独走


「待ってください」

「どうしたの? キノコ」

「舞台は、私一人で出ます」

「な、何言ってんだ?」


 俺は勢いよく顔を向けた。


「おい、昨日のコンビを解散するって言うのは、取り消しだ」

「私っ」


 キノコが俺を鋭く睨みつけた。


「ユザがあんなに弱っちいとは思いませんでした」


 昨日のことを言っているのだろう。


「ユザなんかと出場したら、負けちゃいます」


 彼女は前を向く。部屋の扉へ歩いて行く。


「「キノコ?」」「どうして?」


 三人の声が重なる。


 彼女は扉のノブに手を当てて回した。


「ユザみたいな負け犬男は」


 声を大きくした。


「私が守ってあげます!」

「どこへ行く?」


 俺も立ち上がる。


「ネタの創作です」


 彼女は出て行った。


 残された俺たちは面を付き合わせて首をかしげた。


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