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会議


 翌日の朝。


 俺たち四人は、俺の家の自室に集まっていた。


 午前七時過ぎ。


 今日は平日である。もちろん学校がある日だ。駅に向かわないと遅刻だが、今はそれどころでは無かった。


 六畳のカーペット敷きの部屋。ベッドには俺とキノコが並んで腰掛けている。勉強机のイスにはレンが逆向きに座っていた。背もたれに両腕を組んでのせている。マリナは一人立っていて人差し指を立てていた。


「作戦会議をしたいところだけど」


 マリナは腰に両手を当てた。俺を見る。


「リーダーが何か言いたそうにしてるから、言ってもらおうかしら」


 三人の視線が突き刺さる。俺はばつが悪そうな表情で立ち上がった。


「皆、昨日はごめん、本当に、ごめん。死ぬところを助けられた。悪かった、この通りだ」


 俺は頭を垂れる。


「悪くありません」


 キノコが小声で言った。他の二人には聞こえなかったみたいだ。


 レンは小刻みに頷いている。マリナも表情を緩めた。


「よし、それじゃあ不問。皆、六月二十四日の大会、ひな鳥オーディションに向けて、絶対に絶対に勝利する計画を発表するよ。もう三週間をきったけど、気を引き締めて取り組んでね」

「ああ」


 レンが右手と左手を組んでストレッチをする。


「分かった」


 俺はももに両手を当てた。


 キノコは返事をせず、俯いている。


 マリナはスカートのポケットからメモ帳を取り出してめくる。


「調べたけど。出場者の舞台の審査は、五人の審査員がやることになってるみたい。お客さんも入るけれど、審査とは関係無いみたいよ。そして当然の懸念だけど、審査員には花井家の息がかかっている可能性が高い。このままでは舞台の出来映えにかかわらず、ヒロインズの二人が勝利するでしょうね。レンちゃん」

「おう、マリナ」

「手段は選んでいられないの。何とか出来る?」

「任せろ」

「うん」


 マリナは頬を染めて頷く。


「次に、お客さんは審査に関係無いからと言って、考えるのをやめるのは三流のすることね。私たち四人で、知り合いとか近所の人とか、できる限りのお客さんを呼んで味方につけるの。お客さんの歓声や拍手を、審査員は無視なんてできないから」

「なるほどな。この前相手がやったことを、そのままやり返すのか」


 俺は両手を打った。


 マリナが人差し指を振る。


「そう。良く気づいたわね。お兄ちゃんにしては、冴えてると言えるわ」

「お兄ちゃんにしてはって何だよ」

「言葉のあやよ。とにかく、相手はまさか自分たち決行した策を、私たちがそのままパクって打って出るとは思わない。だから、上手く行けば状況はひっくり返る」

「「さすがだな」」


 俺とレンはハモってしまった。顔を合わせて苦笑する。


「そして最後の策を発表するけど」


 マリナは両腕を背中にまわして嫌な笑顔を作った。


「皆、これから三週間、学校をサボって」

「え?」

「マリナ?」


 俯いていたキノコが顔を上げて眉をひそめる。


 マリナは続ける。


「どうしてかって言うと、ヒロインズの二人にプレッシャーを与えるためよ。悪がいなくなれば善もない。太陽の光が生まれなければ闇という言葉は生まれなかったでしょう。良い? 敵である私たちの消失は、ヒロインズにとって、大きな大きなストレスなの。隠れてお笑いの練習をしているのか分からない。あきらめたのか逃げだしたのかも不明。そんな中ヒロインズはネタの練習をしなければならなくなる。でも人間ってね、迷いがあると百パーセントの力を発揮できないの。ヒロインズの力をそぐには、これが最善の策と言える」


「わ、分かった」


 俺は顔を硬くした。


「バイトは行ってもいいのか?」


 レンが疑問符を浮かべる。


「レンちゃん、バイトはいいよ。でも、二人と出会わないようにね」

「ああ」


 マリナが両手をおろす。


「以上。私からの作戦説明でした。でも、お兄ちゃん」

「なんだ?」

「最後は、正々堂々々の勝負だよ。舞台の上での作戦は、バトンタッチだよ」

「ああ、分かってる」

「うん、それじゃあ今日はどうしよっか」


 マリナが両手を開いた。緊張が解けたようだ。


 それまでずっと黙っていたキノコが立ち上がった。


「待ってください」


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