オオカミその2
今日の投稿はこれで終わりです。
激しい大型トラックの音が通り過ぎていく。
俺は暖かい何かに抱かれていた。
俺は怖くて両目つむっていた。
その目を開く。
怒濤を通り越して危機一髪を通り抜けた表情の、荒い息をする親友の顔があった。
「……レン?」
「何やってんだ、お前」
ひかれる前に、俺を見つけたレンが飛び込んで救ってくれたのだ。
レンが俺の体を歩道に下ろす。そして彼は尻餅ついた。体育座りをする。俺は立ちあがった。
「レン、レン! 大丈夫か? なんでここにいるんだ?」
「俺よりお前が大丈夫かよ」
[……なんで]
「お前がやばいって、助けてくれって、キノコから連絡があった」
「キノコから?」
「お前、やられたらしいな? ヒロインズに」
図星だった。
「ああ」
「それで、自殺しようってか?」
「自殺? 違う。今のは、不注意だ」
「ほう。で? 反撃するんだな?」
「反撃?」
「しないのか?」
レンが立ち上がる。
「リーダー」
彼は右手を握りしめる。
俺は顔を硬くした。
「殴るか?」
「殴ろうと思ってたよ。でも、今の不注意で目は覚めただろ」
レンは右手の拳を開いた。
「さあ、どうする?」
「それは……」
「馬鹿がっ」
レンは苦々しく顔を歪めた。
「方法なんて聞いてねーよ。そんなのマリナに任せれば良い」
「マリナに」
「ああ。俺が聞きたいのは」
彼が俺を指さす。
「お前の、戦う闘志は、まだ燃えているのか?」
「俺は」
……。
「俺は」
彼は真っ直ぐに俺の目を見ている。
そうだ。
いつだって自分を奮い立たせてくれるのは。
他人の助けだ。
「もちろん」
親指を立てる。
策なんて無い。
だけどマリナがいる。
キノコだっている。
レンだって。
俺があきらめることは、彼らの思いを踏みにじることになる。
大きな風があった。
見上げると、雨が上がっていた。月が出ている。
今日の投稿はここまでです。




