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日曜日
俺は部屋のタンスの中から着ていく服を探して悩んでいた。今日はヒロインズのトークショーがある日だ。
休日にキノコと出かけるのは初めてだった。デートと言う言葉が浮かぶ。ウキウキした気分にはなれなかった。それどころか胃が痛い。
赤いTシャツにジーンズ、頭にはいつものキャップという格好を選んだ。センスの良い服なんて持ってない。高校生の小遣いで買える範囲の、地味な服装である。
マリナとレンはデートに出かけて行った。俺は両親に行ってきますと言って玄関を出た。
外気に触れる。今日も暑くなりそうだった。
外の通路では、すでにキノコが待っていた。
白の半袖のワイシャツに、ブラウンの短パンという格好。トートバッグを肩に提げている。
「おはよう、キノコ」
「ユザ」
彼女は微笑を浮かべた。
今日が本当にデートだけの日だったのなら良かったのに。
「私服、似合ってるな」
「ユザも、Tシャツの赤が映えますよ」
「ありがとう」
俺は苦笑した。
「行くか」
「はい」
俺たちはマンションを出て、駅に向かった。




