下校
少し考え方を変えて、書きためているものを一気にアップします。明日からは一日1話ずつになります。
下校の時間になった。
俺は筆箱だけカバンの中にしまう。他の道具は今日必要ない。
窓側ではレンが立ち上がり、早々と出て行くところだった。彼は片手をあげた。
「ユザ、夜な」
「ああ、夜な」
彼はこれからバイトがある。
俺も立ち上がった。ちらりと隣の席を見るとキノコの姿は無かった。
俺は廊下に出て、歩く。階段を一つ降りて、また廊下を歩く。突き当たりを右に折れると玄関だった。壁に背中をつけて両腕を組む。それから五分ほど過ぎただろうか。
「あ、お兄ちゃん」
マリナが小走りで駆けてきた。笑顔である。彼女の後ろには、友達だろうか、女子が二人いた。彼女は振り返って手を振る。
「じゃーねー」
「うん、マリナ、また明日」
「またね」
二人は礼儀正しく俺に会釈し下駄箱に行った。
「お兄ちゃん!」
マリナが俺の頭をはたいた。
「痛いぞ、何をする?」
「頭をはたく。それが日本のツッコミだよ」
「そんなことは知ってる」
「ボケはツッコミにはたかれる運命なのだよ」
「俺はツッコミだが?」
「お兄ちゃんはボケの方がいいと思うよ」
「何でお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ?」
「決まってるじゃん」
マリナは腰に両手を当てた。
「私、偉いの」
「は?」
「私、偉いの。大事なことだから二回言いましたー」
「なんで偉いんだ?」
「それは秘密だよ」
「ヒントは?」
「妹だから」
「ふざけんな」
俺はマリナの頭をはたいた。
「いたっ」
「さっさと帰るぞ」
「あーん、お兄ちゃん待ってー」