相手の実力
二人のパフォーマンスが始まった。
オトハが悲鳴を上げた。両手を口元に当てる。
「キャー、高校生の死体が。一体誰がこんなことをしたの? ねえ、メイ、どうしよう」
メイが両手を組む。
「メイの迷推理によると」
「うん」
「犯人は近いうちにテレビで放送される」
「そりゃあそうでしょうね」
「人生他力本願」
「真実は誰かが見つけてくれるってことね」
「「どうも、ヒロインズです、よろしくお願いします」」
二人が礼をした。
クラスメイトは自然と拍手をした。本物の芸人を間近で見て興奮している人もいた。
「とにかく救急車を呼ばないと」
オトハがポケットからケータイを取り出す。
「オトハ、ダメ」
メイが両手でバッテンを作る。
「どうして?」
「カラスの餌を取っちゃダメ」
「ここは動物園じゃないわ。と言うか、動物園にカラスはいないけど」
「カラスだって生きなきゃいけないんだよ」
「そう言う問題じゃないわ」
「この高校生一人分の肉で、一体何羽のカラスを救えると思ってるの?」
「自分の子供がカラスの餌になったら、その家族がどう思うか、考えなさいよ」
「人間の都合を押しつけるな」
メイがオトハを指さした。
「あんたはカラスの味方か」
オトハがメイの頭をはたく。
「救急車を呼ぶわよ」
「待って」
「今度は何?」
「オトハ。落ち着いてよく考えて。犯人が近くにいるよ」
メイが人差し指を立てる。
「近くに?」
「うん、まだこの島にいると思う」
メイが右手を下ろす。
「そりゃあ日本は島国だけど」
「この事件、私たちが解決しよう」
「嫌よ。私、帰る。怖いし」
「どうせ島からは出られないよ」
「私の家は島の中にあるからっ」
オトハがメイの頭をはたく。
「救急車呼ぶからね」
「オトハ、残酷なこと言って良い?」
メイが首をかしげる。
「何よ、残酷なことって」
「この高校生はもう死んでるよ。病院に行ったって、無駄なんだよ」
首を振った。
「死んだとか関係無いじゃない。救急車を呼ぶのは見つけた者の義務でしょ」
「義務だとか権利だとか、はっ、オトハも大人になったな」
「いや、子供だとしても同じ行動を取るから」
「オトハだけに大人になったな」
「あのねえ、メイ。くだらないこと言ってる場合じゃ無いの。緊急事態だから」
オトハがケータイを操作する。
「待って!」
「何よ!」
「メイの迷推理によると」
「頭文字が迷うって字ね」
「犯人は有名人だよ」
メイがオトハを指さす。確かに、テレビに出てお茶の間を賑やかすオトハは有名人だった。
「ふん、ばれたか。そう、何を隠そう。犯人は私。だって、付き合ってくれないユウくんがいけないのよ。私のことを振り回すだけ振り回して、違う子と付き合ったのよ。許せると思う?」
「オトハ、一緒に逃げよう」
「って、そんな訳あるか!」
オトハがメイの頭をはたく。
「ナイスノリツッコミ♪」
「いい加減にしなさい」
「悲劇の中に喜劇あり」
「「どうも、ヒロインズでした。ありがとうございました」
二人がまた腰を折った。




