チーム
さわやかな風が吹く朝の通学路、俺たち四人は一緒に登校していた。
マリナが先頭を、後ろ向きで器用に歩いてる。声を張っていた。
「皆、私たちには決定的なものが足りてないよ」
「なんだ? 決定的なものって」
俺は口元に右手を上げてあくびをした。
マリナが人差し指を振る。
「私たちは仲間であると共に、チームなんだよ? 誰かが困っていたら助ける。私は脳筋の頭脳班。レンちゃんは荒事担当の実力部隊でしょ?」
「まあな」
レンがぽりぽりと頬をかいた。
それまでコピー用紙の台本に顔を落としていたキノコが顔を上げる。
「なんですか? それ」
興味津々と言う風にくりっした瞳を大きくする。
「あー、キノコには話したこと無かったっけ?」
マリナが前を向いた。いつの間にか呼び方が変わっている。そしてまた後ろを向いて後ろ歩きをした。
「私たち三人にはね、それぞれ担当があるの」
「へぇー、私も、入れるんですか?」
「無理よ」
「何でですか?」
「じゃあ聞くけど。キノコは何ができるの?」
キノコは頬をゆるめる。
「お笑いができます」
「お笑いじゃあ役に立たないわ」
「どうしてですか?」
「どうしても!」
「マリナ」
俺は顎をなでた。
「キノコも入れてやってくれないか?」
「それはリーダー命令?」
「いや、まあ、そうだ」
「ふーん、まあいいけど」
「ユザはリーダーなんですか?」
「そうだな」
レンが笑って俺の肩に手を置いた。
「こんなボケボケだけど、一応ね」
「ボケボケってなんだ?」
「脳みそすかすかの方が良かった?」
「怒るぞ?」
「いやん、怒らないの。とりあえず、お兄ちゃんはリーダー。なぜならチームの創設者だから。そして、最初に言ったチームに足りないものについてだけど」
「ああ、なんだ?」
俺はポケットに手を突っ込む。
「情報部員よ」
「なーる」
「情報を制するものが、戦を制するのよ」
レンが口笛を吹いた。
「私やります」
キノコが右手を上げる。
「駄目ね」
「えっ、えっ、なんで?」
俺は横を向いて頷く。こう言う役割と言うのはやりたくてやるものでは無い。その人の生き様や才能がぴったりである必要がある。
「キノコは自由担当」
マリナが指さした。
「自由ですか?」
「うん、それしか無いわ。自由に飛んで、川に落っこちて、流されなさい」
俺とレンは苦笑を浮かべる。
「自由って、何をすればいいんですか?」
「だから、自由に生きればいいんのよ」
「それならできます」
「お馬鹿さん担当の方が良かったか」
マリナがぼそっと言った。
俺はめざとく睨みつける。キノコは相方であり、一応彼女だ。
「なんて言った?」
マリナは口笛を吹く。
「何も」
「ならいいが」
「まあ」
レンが両手を打ち鳴らした。
「仲間とかチームメイトなんて言うのは探してどうにかなるものじゃねーし、気長に待とうぜ。情報部員もさ」
「うん、そうだよね。レンちゃんの言うとおり」
マリナがえくぼを浮かべる。俺とキノコとは扱い方が違う気がした。別に良いけどさ。




