トラップ
昼休み。俺は一人でご飯を食べた。スマホでマリナの画像をチェックしていた。笑顔を浮かべている彼女。ベッドに寝転んでテレビを見ている彼女。中学校に卒業式、校門に立って笑顔を浮かべている彼女。様々あった。
「うひ、うひひひ、俺のマリナが笑ってる」
教室にレンとキノコはいなかった。
クラスメイトが時折、奇異の視線を向ける。
「あいつ、壊れたのかな?」
俺はそのたびにキッと睨みつけた。
「ひっ」
「目を向けちゃだめ」
スマホが鳴る。マリナからだった。
「あはあは、マリナぴょんからLINEがきた」
「やばいやばい笑ってるし」
「ねえ、ちょっとやばいんじゃない?」
「やっぱりアレだよ。お笑い活動禁止されたから」
LINE画面を開く。任務完了、成功パターンD。
俺は立ち上がった。
「マリナぴょん、今行くからね」
教室を出た。
廊下を歩き、階段を上がる。突き当たりに生徒会室があった。扉を開ける。
中には何人かの生徒会員、カグヤ、キノコ、レン、マリナがいた。全員立ち上がっている。俺は表情をひきしめた。マリナが親指を立てる。
「カグヤさん」
俺は呼び方を変えた。
彼女は驚いたようにこちらを振り返る。
「聞いたぞ。貴方、厳重注意が必要みたいですね」
「なぜお前が知っている?」
今この生徒会室で何が起きたのか。
事前に作戦を知っている俺は聞いていた。
俺が知っていると言うことをカグヤは知らない。
マリナは生徒会長の席の前でルーズリーフを掲げている。
それはカグヤの書いたお笑いのネタだった。
「いけないなあ」
俺は役者ぶってわざとらしく言った。歩いて行く。マリナからルーズリーフを受け取った。カグヤに顔を向ける。
「お笑い禁止習慣中にお笑いのネタを机にしまっておくなんて。それも生徒会長自らが。はっ、こりゃあ生徒会長を辞任して責任を取る。いや、それだけじゃあ済まないな、退学だ。カグヤさん、あんた、退学だよ」
カグヤの顔に表情がなくなる。真っ青だった。




