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宣戦布告


 開口一番にカグヤはこう言った。


「弟は、死んでしまったよ」

「「カグ姉」」

「生徒会長」

「カグヤさん」


 俺は三人の間を抜けてカグヤの前に進み出た。


「ヤマトが、死んだんですか?」

「そうじゃ」


 カグヤは髪をかき上げる。


「どうしてですか?」

「決まっておろう。全校生徒の前で、好きな女に振られてしもうて。あまつさえ幼なじみに奪われてしまっては。泣きっ面に蜂じゃ」

「自殺したんですか?」

「ああ」

「あいつは。俺の知っているあいつは、そんなヤワな男じゃないんですが」

「お前は他人じゃ」


 カグヤは右手をはらった。


「それは、そうですが」

「余の知っているヤマトは、弱い。弱いゆえに、強くなって欲しかった。昔からお主には勝てないというトラウマを払拭しなければいけない。花井家の当主になるためじゃ。だから、昨日はヤマトが負けることのないように、卑怯な協力した。だというのに」


 カグヤは俺の顔を指さす。


「どうしてくれる?」

「俺だって負けられないんです」


 カグヤはかたかたと笑った。


「そうよの」

「カグ姉。ヤマトの葬式はいつですか?」

「出席せずによい」

「なんで」

「お主はまだ、ヤマトをいじめたりないのか?」

「すいません」

「ヤマトは、ユザにだけは来て欲しくないだろうが」

「ごめんなさい」

「ユザ、その後ろの三人も良く聞けい」


 カグヤは胸ポケットからボールペンを取ってこちらに先を向けた。


「四人に、宣戦布告する。余は生徒会長。権力の力を甘く見るでないぞ」

「どうしてそんなことを?」

「ヤマトの弔い合戦じゃ」


 カグヤ背中を向けた。


「権力の象徴は炎。余の炎に焼かれたくなければ、早々に転校したほうがよいのう」


 歩き出す。廊下に出てそのまま去って行った。


 俺は一息ついた。すぐにマリナがそばに来る。


「お兄ちゃん」

「な、なんだ?」

「カグ姉、嘘ついてる」

「どういうことだ」

「ヤマトちゃんが死んだって、あれ嘘」

「なんで分かるんだ?」

「だって、ヤマトちゃんが死ねば、今日学校にカグ姉が来られる訳無いじゃん」

「そりゃあ、そうだな」


 昨日の夜から今日の朝にかけて自殺したのならば、花井家はてんやわんやなはずだ。通夜の準備だってある。


「なんで嘘をついたんだ」

「それは、多分」


 マリナがメガネをくいっと上げる。


「宣戦布告の本当の理由を隠しているのよ」

「本当の理由?」

「それはまだ、分からないけど」

「私はなんとなく分かります」


 キノコが右手で頬をなでた。


 俺たちは振り返る。レンもキノコに顔を向けた。


「鳥と同じです」

「鳥?」

「敵を排除して、ヤマトさんがのびのびと生活できるような環境を作りたいのでしょう」

「なるほどね」


 マリナが感心したように頷いていた。


「何はともあれ」


 レンが両腕を組んだ。


「また、戦いが始まるってことか」

「そうだな」


 俺はため息をついた。



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