矛盾する心
レンとマリナがキスをしていた。
俺のベッドの上で。
扉を静かに閉める。
「ユザ、どうしたんですか?」
「戻ろう」
「えっ?」
「静かに」
俺は言って歩き階段を下った。
玄関で靴を履いて部屋を出る。
通路の壁に背中を預けた。膝からがくんと力が抜けて尻餅をつく。
胸が苦しかった。
本当はいつかこうなる気はしていたんだ。
だけどもっと遅い、将来のことだと思っていた。
キノコが出てくる。
「ユザ、どうしたんですか?」
俺は必死に作り笑いを浮かべた。
「レンとマリナ、付き合ったみたいだ」
「本当ですか?」
キノコが顔を赤くする。表情が生き生きとした。
「キスしてたから、間違い無い」
「お祝いしましょう!」
「ああ、そうだな」
「ユザ、元気無いですね」
「うれしいんだよ。うれしくて、うれしくて」
俺は自分の体を抱きしめる。
「心が、壊れそうだ」
キノコは眉を寄せた。そして表情を和らげて俺の隣に座った。
「ユザの、大切な妹さんですものね」
「ああ」
「受け止めるには、時間がかかりますね」
「ああ」
「ユザ」
キノコは俺の頭を抱きしめる。
「胸をお貸しします」
両目から涙がこぼれた。
「こんなに他人によくされるのは、初めてだ」
「何か言いましたか?」
「何でも無いんだ」
俺はキノコに寄りかかった。
それから眠ってしまったようだ。次に気づいた時には自分の部屋のベッドの上だった。レンとマリナはいなかった。もちろんキノコも。
朝日がまぶしい。




