威圧
俺たちは立ち上がった。
体育館を出てヤマトとマリナを探す。廊下や教室を一つ一つ見ていくうちに二年二組にたどり着いた。
いた。
二人はなんと俺のクラスでコーヒーを飲んでいた。元々喫茶店の出し物をしている。
「お兄ちゃん」
「ああ」
俺は右手を上げて教室の扉をくぐる。マリナは廊下で待機だった。
「ユザくん」
クラスメイトの誰かが俺を見つけて声をかける。しかし俺は何か答える余裕が無かった。
俺は立ち止まりヤマトとキノコのテーブルに向かって叫ぶ。
「ヤマト」
「ん、なんだ?」
彼がしかめ面を向ける。
「は? ユザでは無いか」
キノコが振り返り、ばつが悪そうな顔をする。
「どうした? 何をしに来たユザ? 哀れな負け犬。ついに我が軍門にくだりに来たか?」
「ヤマト」
俺は指さす。
「予告する」
俺は親指を立てた。
「今夜、キノコをさらう」
教室中の人間が俺を見た。
「何を言って」
ヤマトは頭を振って立ち上がる。
「繰り返す、今夜俺はキノコをさらう」
キノコが立ち上がった。
「ユザ、もういい加減にしてください」
「お前は少しだまってろ!」
キノコの声は俺の怒号にかき消された。
こんなに大きな声を出すのは初めてだ。
そしてこのぐらいやらないと作戦は成功しない。
クラスメイトの女子が耳を押さえていた。
「ヤマト、繰り返す、キノコをさらう」
俺はにやりと笑った。
「残念だがな、キノコの家は俺のマンションの隣だ」
ヤマトが驚愕を表情の浮かべる。
「キノコはな、俺のものなんだよ」
背中を向けて扉をくぐる。廊下に出た。
「いいだろう! やれるものならやってみろ、ユザ」
教室ではヤマトの声が上がる。
「キノコは俺のものだ! ふは、ふははははっ」
廊下ではマリナが待っていた。くいっとメガネを直す。
「お兄ちゃん、ナイスファイト」
「マリナ、本当にこれでいいのか?」
「条件は整ったわ、あとは」
マリナは両手を握る。
「運ね」




