インテリメガネ
体育館のパイプイスに座ってヤマトとキノコは楽しそうに談笑していた。俺はずっと後ろのイスに座って二人の姿を眺めた。話し声は聞こえない。何を話しているかは分からないが幸せそうに見えた。
ステージでは高校生のバンドが流行のJポップをカバーして演奏していた。高校生の演奏にしてはとても上手に思った。
さあ考えよう。
俺はどうすればいい?
……。
頭が上手く回らないようだ。
二人が立ち上がった。寄り添って体育館の出口へと向かう。俺は体を丸めて姿を隠した。
もうキノコのことなんてどうでもいいじゃないか。
その通りだ。
ヤマトのことだって。
ため息をつく。
俺の横のイスに腰掛ける者があった。横を向くとメガネをかけた女子がいた。
「じゃーん、変身マリナの出番ね」
メガネをかけた妹がいた。
どこか知的な印象がある。
「ふんふん、お兄ちゃんはどうしてもキノコを取り戻したいのね」
「お前、何やってんだ?」
「何って、仕事よ。言っとくけど、私は頭脳班よ」
俺は乾いた笑い声を上げた。
「そうだったな」
「元気出しなよ。まだ勝負は終わってないわ」
お前もヤマトに荷担したじゃないか。
とは言わない。
「どうすればいいんだ?」
「簡単よ」
マリナは笑った。
「私の頭脳に勝てる者はいないわ。例えそれが、権力でも金でもね」
彼女は作戦を話した。俺は集中してそれを聞く。聞くにつれて笑いがこみ上げてきた。
「そんな方法、上手く行くのか?」
「お兄ちゃん、私を信じて」
「お前は策士だな」
「最高の妹と呼んで」
「分かった。それで行こう」
俺たちは立ち上がった。




