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遠吠え
帰り道の路上。レンは泣いた。
「ごめんな、ごめんな」
彼はうずくまる。
俺はその背中に手を置いた。
「レン、ありがとうな」
「俺は、何も出来なかった」
「お前が戦ってくれたおかげで、俺は救われたよ」
「でも、ユザの女をとられちまった。あんな野郎に」
「もういいんだ。俺は、お笑いなら一人でもできるさ」
「俺はもう、自分が情けねえ」
レンは叫んだ。
「ちくしょー」
拳でアスファルトを叩く。
「バカ、怪我するぞ」
「ちくしょー、ちくしょー」
レンはやめない。
何だろう。
その姿に胸を打たれてしまう。
「レン、やめろ」
俺の瞳からも涙が伝った。
「ちくしょおお」
レンの右手の甲の指は血まみれだった。
「レン、レン」
「レンちゃん、やめなよ」
後ろからマリナの声がかかった。振り返ると彼女は呆然と立ち尽くしている。




