表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/88

末路


 呆れたような声が上がった。振り向くと、キノコが両手を開いて顔を振っていた。


「なーんだ、ユザもこの程度でしたか」

「お前、何言ってんだ?」


 レンが矛先を向ける。


「何言ってるって。ユザは負けたんですよ。彼について行った私はバカを見たんです。最悪です。あー、良い恥じかいちゃいました」


「お前、今の話聞いてねーのか?」


「聞いてましたよ。だから、ユザは金と権力の力に押しつぶされたんです。レンさんみたいな暴力男には分からないかもしれませんが、世界には様々な力があるんです。ユザはそれに、負けてしまったんです。思えばあの漫才も、幼稚なできばえでした」


 俺は真っ青になる。


「ヤマトさんにデートしてもらいます」

「ぶっ殺す」


 レンがキノコに飛びかかる。


 キノコは背中を向けて走った。走りながら、


「ユザみたいなインポ野郎とは、縁を切ります」

「女だからって手加減しねーぞ」


 レンがキノコの背中を倒した。馬乗りになる。


「コンビは解散です」

「おめーから誘ったんだろうが」

「ユザは一生負け男です」


 レンが拳を振り下ろす。


 その手を大きな手が受け止めた。


「誰だ?」


 レンが顔を上げるとそこには学年一の巨漢の姿があった。ヤマトである。その後ろにはマリナの姿もあった。


「女に暴力とは、お前も卑劣だな」

「ああ?」


 レンはもうスイッチが入っていた。立ち上がる。


「そもそもおめーが悪いんだろうが」

「ヤマト様について行きます」


 キノコが叫んだ。


 レンは虚を突かれたような顔をする。


「キノコよ。分かったか、花井ヤマトに逆らうこの男たちが、どれほど愚かであるか」

「分かりました」


 猫なで声だった。


「ヤマト様」


 キノコはヤマトの腕を両手で掴み、レンと俺を睨みつける。


「助けてください。この男が、私に暴力を」

「レンとか言う奴。キノコはもう俺の女になった。いいか、キノコは俺の女なのだ。分かったら、とっとと失せろ」


 レンは眉間をぴくぴくとさせる。


「キノコ、お前、そんなつまんねえ女だったのか?」


 キノコは表情を厳しくする。


「レンさんなんかに言われたくありません。私は、強い男とセックスがしたいんです」


「……ユザ、行こうぜ」


 レンはこちらを振り返る。


「ああ」


 レンが廊下を歩いて行く。俺はその後を追いかけた。一度だけ立ち止まって振り返る。


「キノコ」

「何ですか?」

「お前と漫才やれて、俺、ちょっとだけ、楽しかったよ」

「私は」


 キノコは唇を噛んだ。


「恥かいちゃいました」


 もう泣きたい気分だった。ここまでコテンパンにされたのはいつ以来だろうか。俺は逃げるように歩いた。


「お兄ちゃんっ」


 マリナが心配そうな顔で追いかけてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ