勝敗の行方
ヤマトとマリナのパフォーマンスが終わると、やはりマイクを持ったカグヤが質問しに行った。
「いやー、これは話しかけづらいのう」
俺は舞台裏で失笑してしまった。
ここがどこかの祭りで客に酒が入っていたら、ヤマトたちはコントを最後までやれたかどうか分からない。ヤジを飛ばされたり、もうやめろと缶を投げつけられても仕方ない。素人目にしたって明かだ。客の反応は良くなかった。
「ヤマト、お前いまのコント、アドリブの即興だったのかの?」
「姉さん。そんな訳無いだろう。事前に作り込んだネタだ」
「それにしてはひどすぎるのう。もしかして、マリファナを3発ぐらい決めてから書いたのかや?」
「失礼な。このネタは、三週間考えに考え抜き、隣にいるマリナと共に練習を重ねたものである」
「マリナ。お主、こんな男について行って、後悔があるじゃろう」
「ありません。私はヤマトちゃんと共にこの戦いに勝ちに来ました」
「熱意は分かるがー、実力が伴わないとどうしようもないこともあるのじゃぞ?」
「実力って、そんなの、まだ勝敗は決していないじゃないですか」
「圧倒的にスベスベステューデントの勝ちだのう」
ヤマトは顎がはずれたような顔をした。
「姉さん!」
「なんじゃ愚弟。お前、お笑いの才能は無いのう。もう金輪際、やるのではないぞ?」
「姉さん。客の反応を見なかったのか?」
「客? 皆、呆気にとられていたのう」
「ウケていただろう」
「愚弟、そろそろ、黙った方が良いぞ?」
目力が込められる。
「は、はい」
ヤマトは頷くしかない。
カグヤは前を向いた。
「それでは、いやはや、お笑い対決の勝敗は決まったようなものじゃが。審査員はお客様の皆さんじゃ。スベスベの二人にも出てきてもらおう」




