反撃
「ヤマトだ」
「マリナです」
二人は右手を上げる。
「「コント、鬼ごっこ」」
「「さいしょはグー、じゃんけんぽん」」
ヤマトはグー、マリナはパーを出した。
「あ、私の勝ちだ」
「ふむ、じゃあ俺が鬼ということか。くはは、相手は色っぺえメスガキだ。捕まえて、裸にひんむいて、エッチないたずらしてやるぞ」
ヤマトはゲスな笑いを浮かべる。
「ひ、ひいいい」
マリナはのけぞる。そしてステージを走った。
「ほれほれ、逃げろ逃げろ。早く走らないと、エッチなことしちゃうぞー」
「こっちに来ないで。変態、痴漢、犯罪者」
「お前の靴下の匂いを嗅がせろー」
「くっ、もう、こうなったら仕方ない」
マリナは立ち止まる。そして両手を前に伸ばした。
「こっから、バーリア」
「何、バリアだと」
「そうよ。バリアを張ったんだから、ヤマトちゃんはこっちに入れないわ」
「どうすれば良いんだ?」
「どうもできないわよ。ヤマトちゃんは、永遠にそこで立ち往生して、餓死すればいいの」
「仕方ない。奥義」
ヤマトは学ランを脱ぎだした。ワイシャツも脱いで上半身裸になる。
「キャー、何やってんの?」
マリナは右手を口に当てた。
「この世界、女は脱いだら終わりと言われるが、男は脱いだら始まりと言う。俺は脱ぐことにより、覚醒するのだ」
「やめて、やめなさいってば、恥ずかしいでしょ」
「バリアを解くか?」
「しょうがない、ここは、解くわ」
ヤマトはすかさずマリナにタッチしようとする。それを回避しマリナは走った。
「ほらほら、逃げろー。早く走らないと、スケベなことしちゃうぞー」
「もうっ、もうっ来ないでよ。エロ、スケベ、変質者―」
「お前の足の指と指の間をなめさせろー」
「くっ、もう、こうなったらしょうがない」
マリナはバンザイをした。
「トウッ、飛んだわ」
「何? 飛んだだと」
「そうよ。ヤマトちゃんは地上にいるかもしれないけれど、私は空にいるから。触ることはできないわ」
「解決方法は?」
「無いわ。ヤマトちゃんは永久にそこで空を眺めて、お腹が空いたら家に帰りなさい」
「やむをえん。秘技望遠鏡」
ヤマトは両手を丸くして両目に当てて望遠鏡を覗いているポーズをする。
「秘技なんて何もできないじゃない」
「ふむ、今日のパンツの色は黒か。高校一年生にしては不良だな」
「きゃ、キャー」
マリナは慌ててスカートを押さえた。
「他にも見えるぞ、あれは」
「言うんじゃねー」
マリナが蹴りを放つ。ヤマトのすねに直撃した。
「痛いな。なんだ、俺に触れるということは、地上に降りてきたのか?」
「降りたわよ。それより私の秘密をばらすんじゃねー」
「俺に触ったということは、タッチだ。今度はマリナが鬼だぞ」
「私を怒らせたわね。変身するわ、へーんしんっ」
「な、何が起こった?」
「マリナは鬼になった。鬼となってヤマトちゃんに襲いかかった」
マリナはセリフを言いながらヤマトに両手で襲いかかる。
「や、やめろ、俺が何か悪いことをしたというのか。神よ、神よー」
ヤマトは目の前で十字をきった。
「ざぐばぐぐしゅがしゃり。マリナはヤマトちゃんを食べてしまった。ああ、おいしかった」
「「こうして、五分間に渡る鬼ごっこは、その終止符を打ったのだった」」
ヤマトが立ち上がり、二人は並んで礼をする。
「「ありがとうございました」」




