第三章 練習
俺たちは近所の公園にいた。
漫才はパソコンで作った。印刷機でコピーした台本を持って練習をしていた。レンはいない。バイトに行っているからだ。俺とキノコの二人きりだった。
「スベ」
俺は自分のつるつるの頭を撫でる。
「スベ」
キノコは自分の右手を左手で撫でる。
「スベスベ」
俺はまた頭を撫でる。
「スベスベ」
キノコは両手で彼女の顔を撫でる。
「「どうもスベスベステューデントです。よろしくお願いします」」
とりあえず最初の挨拶はできるようになった。次はセリフの暗記である。とは言うものの漫才のネタ自体に自信が無かった。このネタでヤマトとマリナに勝てるのだろうか。
「大丈夫ですよ。ユザ」
キノコは俺の肩をぽんと叩いた。
「本当か?」
「自分に自信を持ってください。このネタなら、きっとマリナさんを取り戻せますよ」
「そうか」
「第一、あのお二人はお笑いの経験があるのですか?」
「いや、無いはずだ」
「だったら、楽勝じゃないですか」
キノコは微笑む。
「私たちはお笑いのライオンです」
「俺の大会の経験は、10回あるかないかだ」
「百戦錬磨じゃないですか」
キノコはコピー紙を持った。
「練習をしましょう」
「ああ、分かった」
俺たちは台本に向かった。




