オオカミ
こんばんは。投稿が遅い時間になってしまいました。どうもひろくです。
投稿が遅くなった理由は、さっき書いていたからです^^
一日一話ずつ投稿したいのに、一気に投稿する私。まあ、問題はないですね。
それをさえぎる人影。
「おっとー」
ヤマトの体を投げ飛ばす。一本背負いが決まった。
「ぐああああっ!」
「おいおいおいおい、ずいぶん楽しいことやってるじゃねーか。今日は祭りか? 俺も呼べって。なあ、ユザ」
「レン!」
「レンさんっ」
野生のオオカミ、レンの登場だった。
「どうやって来たんだ?」
「タクシーに、決まってんだろ?」
レンは親指を立てる。
「夜ユザんちに行ってもいねーんだもん。マリナに聞いたよ。お前とヤマトが一緒だって。まさか、こんなことになってるとは思わなかったけどな」
「ぐぐ、貴様ら」
ヤマトは頭を打ち付けたのか両手で押さえている。そして叫んだ。
「サブ、リョウタ、ダイスケ!」
助けを呼んでいるようだ。しかし誰も来ない。
レンは親指を立てて逆さにした。
「ここに来るまでに、実力行使させてもらった。でもなあ、ちょっと撫でただけなのに皆寝ちまうんだもん。骨がねーったら」
「何だと?」
「ヤマトとか言うバカ。お前の負けだ」
「くそう、待ってろよ」
ヤマトは慌てて部屋を出て行った。この豪邸にはまだまだたくさんの人間がいるはずだ。そして、あの人……あの女性も。
「レン、ありがとう」
「いーって。それより、警察呼ばねーとな」
「後だ。逃げるぞ」
「逃げる? 大丈夫大丈夫。全員殺すって」
「銃持ってきたらやばいぞ」
「銃?」
レンがアンニュイに顔を弛緩させた。
「そりゃあやばいな」
「とにかく逃げよう」
「分かった」
「キノコも行くぞ」
「はい」
レンを先頭に俺たちは部屋を出た。通路を走って、鍵の壊れた玄関を出て行く。おそらくレンが壊したのだろう。靴は履いたままなので、履き替える必要は無かった。
外はすっかり夜になっていた。満月が、赤みがかっている。生ぬるい風が吹いていた。門のところで振り返ると豪邸の馬鹿でかさに辟易とする。まるで豪華客船のようだ。
「待てー!」
ヤマトの声がした。複数の足音が聞こえる。
「早く離れっぞ」
「ああ」
「はい」
俺たちはこれも壊れた門を開けて出て行く。
「ユザ、こうなったら、お笑いで勝負だ!」
背中にヤマトの声が轟いた。
俺たちは豪邸から離れると、繁華街のコンビニに入った。「いらっしゃいませ」の声。明るい場所で一息ついた。
「警察呼ぶぞ」
レンはスマホを取り出して、110番をダイヤルする。少ししてパトカーが到着した。警官は二人いた。そのうちの一人に俺たちは起こったことをありのままに話した。しかし花井の名字が出ると、顔を真っ青にする。
「君たちは、本当のことを言っているのかい?」
「ええ」
俺は頷いた。
「こ、この事件は、ちょっと、うちでは取り扱いできないなあ」
「なんで?」
レンがぶっきらぼうな声を出す。
「いやー、困ったな。君たちもこの町に住んでいるなら知っているだろう? 日本一の花井さんに喧嘩を売ったら、僕の首が飛ぶよ」
「逮捕してくれないんですか?」
キノコが呆然としている。
「僕の、子供が、この春、小学校に、入学したばっかりでさ」
警官は下を向いて踵を返した。
「ちょっと、飲み物持ってくる」
彼はパトカーの中に戻っていった。もう一人の警官はさっきからケータイで電話をしている。
「警官が事情聴取中に飲み物か?」
レンが顔をしかめた。
そしてなんと言うことだろうか。パトカーのライトが点灯し、発進した。コンビニの駐車場でターンをして、この場を去って行った。
「んな馬鹿な」
レンが両目を丸くした。
「え、え?」
キノコが状況を理解できないでいる。
「まるで、三流のコントだな」
俺はつぶやいた。
今夜の戦い、引き分けが決まった。
それから俺たちは歩いて帰った。途中、お腹が空いたということで牛丼屋に寄った。三人は話題に事欠かなかった。さっきの警察のこと。ヤマトのこと。戦いのこと。
また、明日が始まる。
お読みいただき感謝です。
感想お待ちしています。




