キノコファイヤー
今日はリアルで雨が降っています。明日畑でローダーを運転しなければいけないと思うと憂鬱です。雨が降ると、畑がぬかるんでローダーのタイヤが埋まるのです。
「まあ、そう結論を急ぐな」
ヤマトはズボンのポケットから財布を取り出した。中から万札を五枚出す。
「これはお近づきのしるしだ。取っておけ」
「あの、要りませ」
「あーあー」
レンが言って立ち上がった。今度は、俺は止めなかった。
「食後の運動でもするか」
「誰だお前は?」
ヤマトが眉間にしわを寄せてひるむ。レンはキレている。その怒りを感じ取ったのだろう。
「どるあ!」
レンがヤマトに右足を蹴り上げた。万札がちぎれて宙を舞う。
「な、何を!」
「お前調子乗ってるな。ちょっと、あっち行こうぜ」
ヤマトの顔に油汗がつたう。ぶるぶると震えだした。
「お待ちください!」
キノコが叫んで立ち上がった。レンは振り向く。
「あまは下がってろ」
「レンさん、ここは私に任せてくれませんか?」
「ああ?」
「お、お願いします」
「……ちっ」
レンは舌打ちをしてベンチに下がった。荒々しく座る。代わりにキノコがヤマトに立ち向かった。
「ヤマトさん、私は貴方に用事ができました」
「よ、用事?」
ヤマトは未だにびびっている。
「ちょっと、あの二人とは離れて、お話をしたいんですが」
キノコがこちらを指さす。
「わ、分かった」
「こっちに来てください」
「あ、ああ」
レンが苛立たしく乏揺すりをする。俺はキノコの動向を見守った。
少し離れたところで、キノコとヤマトが立ち止まる。彼女は自分の口を右手で触り、ほんのりと頬を染めた。
「これは、お近づきの印です」
「き、キスか。いきなりだな」
「私、初めてなんです」
「ファーストか。かまわないぞ」
ヤマトはにたにたと笑う。
「目を閉じていただけますか?」
「分かった」
ヤマトは目を閉じる。気持ちの悪い顔だった。キノコの体がヤマトに肉薄する。彼女は彼の体を大きく突き飛ばした。
「キノコファイヤー!」
「な、なあー!」
ヤマトの後ろには大きな穴があった。水道工事中の穴である。ヤマトは後ろから倒れて落ちた。キノコは両手をぱんぱんと叩く。
「ずあああっ!」
「さようなら。ヤマトさん。永遠に」
キノコはこちらに歩いてきた。見事な成敗に俺たちは立ち上がる。笑顔だった。
「キノコ、ナイスだ」
俺はキノコの肩を叩く。
「あまのくせに、やるじゃねーか」
レンが感心していた。
「行きましょう」
俺たちは弁当箱の包みを持ち、教室に戻っていった。
「キノコ、覚えたぞ!」
背中からヤマトの地響きのような恨み声が追いかけてきた。
今日はこれでアップを終了します。また明日投稿します。
ここに来てやっと物語が始った感があります。ヤマトくんのおかげで転がり出す物語。そうなってくれれば私としても良いです。
感想お願いします。それではまた。




