ライバル
俺たちがそんなやりとりをしていると通りかかる人物があった。学年一巨漢の男が目の前で立ち止まった。俺は顔を上げてしかめ面をする。嫌な奴が来た。
「ふん、貴様が噂のキノコか」
そいつの名前は花井ヤマト。俺はよく知っていた。幼なじみだからである。首にはネックレスをしており、両手には銀の指輪をじゃらじゃらとしている。
「誰でしょう?」
キノコは瞳をぱちくりとさせた。
「俺か? 俺の存在が気になるか? そうだろうな。俺はこの学年で一番強い男、ヤマトだ。覚えておけ」
「誰ですか?」
キノコはこちらを向いた。俺は首を振ってしらを切った。
レンが眉間をぴくぴくとさせている。警戒をしている。荒事になればオオカミ男のレンの出番である。
「ユザ。しらを切るとは何だ。つれないだろう。俺は学年の支配者だぞ」
「いつ支配者になったんだ?」
「当然、この世は何だ?」
「は?」
質問の意味が分からなかった。というか、言葉の文が足りていない。
ヤマトは気にせず続ける。
「この世は金だ。金こそが絶対にして唯一無二なるもの。俺は学年で誰よりも金を持っている。だから俺は強い。この世はな、金なんだよ」
彼は身振り手振りを交えて、外国人のプレぜーテンションのようにしゃべった。
「何しにきたんだ?」
「何、噂の美人転校生、キノコとやらに、つばをつけておくおと思ってな」
ベンチからレンが立ち上がりかけた。俺は右手を上げて牽制する。
「どういうことだ?」
「分からんのか?」
「分からん」
「金を持つものが女を手に入れる。それがこの世の理よ」
「そんな理は無―から」
「ある。気づかないだけだ。ユザ、お前も大人になれば分かる。結局、女というものは、金しか見ていない」
「あのー、すいませんが」
キノコが右手を上げた。
「私、ヤマトさんには興味無いんで」
「まあ、そう結論を急ぐな」




