第二章 アザレア
活動報告で一話と言いましたが、もういくつかアップします。
朝。
学校の支度を終えて部屋を出ると、先に出ていたマリナが満面の笑顔でいた。どうしてか髪には赤い花をいくつもさしてある。この花は、どこかで見たことあるような。
「お兄ちゃん、遅いよ」
「すまん、今日は一緒に登校するのか?」
「まあね。いいよ」
ご機嫌のようだ。昨日はあんなに泣いていたというのに。
「それじゃあ行くか」
「待って、キノコがまだ来てない」
「お前、キノコが嫌いなんじゃないのか?」
「今日は挨拶して行こうと思って」
そんな会話をしているとキノコの部屋から声があった。
「お母さん行ってきます」
扉が開く。セーラー服姿のキノコが出てきた。マリナと目が合う。
「おはようキノコ」
「あ、あ、あー!」
キノコはマリナの髪を指さした。もっと詳しく言えば、赤い花を指さしていた。
「私のアザレアちゃん」
「どう? 私のお花、似合ってる?」
マリナは自分の髪をそっと撫でる。キノコの植木鉢を見ると、植物からは花が無くなっている。
キノコは自分の部屋の扉を閉める。
「どうしてそんなひどいことをするんですか?」
「え、何? 私の花が綺麗だって?」
「それ私の花です」
「花は髪にさすためにあるのよ」
「自分の花をさせばいいじゃないですか!」
「花の寿命は短いものよ。早く髪にさしてあげなきゃ」
「だから自分の花を」
「キノコの花は私の花よ」
「そんなジャイアンみたいなこと言わないでください」
俺はマリナの頭から花をとる。
「あ、何するのお兄ちゃん」
「お前が悪い」
俺はキノコに花を差し出した。
「ごめんな、今日の帰りに、新しい花買ってやるからさ。許してやってくれないか?」
「別にユザが謝ることでは」
「お兄ちゃん、こんな奴に同情しちゃだめだよ」
「マリナさんはどうしてそこまで私を敵視するのですか?」
マリナが鼻にしわを寄せた。キノコに人差し指を向ける。
「お前を、すぐにこのマンションから追放してやる」
そう言うと、一目散に走って行った。エレベーターに乗ってしまう。残された俺とキノコは目が合うと、同時にため息をついた。




