マリナエルボー
「分かりました」
キノコは自信をたたえて微笑む。彼女は両手を広げてマリナに近づいて言った。
「な、何をする気?」
マリナは後ずさる。
「笑わせればいいんですね」
キノコはチョウを捕まえるカマキリのような動きでマリナの脇腹に襲いかかった。マリナは逃げようとしたがキノコに押しつぶされる。キノコの両手のえじきとなった。
「あひゃひゃひゃっ」
「あ、笑いましたね?」
「ふ、ふざけんじゃねー」
マリナは体をよじって立ち上がる。キノコから距離をとった。
「ぶっ殺すぞ」
「では、私とユザがコンビを組むことを認めていただけますか?」
「前言撤回、死んでも認めないわ」
「約束を破るんですか?」
「くすぐるなんて、卑怯者のすることだわ。お笑いの腕の無い証拠ね。いよいよお兄ちゃんとコンビを組ませる訳にはいかないわ」
「ふーん、そうですか。良いんですか?」
キノコは意味ありげに微笑む。
「良いって、何が?」
「マリナさん、お尻がスースーしませんか?」
マリナはぎょっとした顔をして両手でスカートを押さえた。そして驚愕を浮かべる。
「は?」
「探し物はこれですか?」
キノコはポケットの中から白いパンツを取りだした。
「ど、どうやって?」
「一発ギャグ。パンツ脱がしの巻です」
「か、返しなさいよ」
マリナは駆け寄ってパンツを取り戻そうと両手を伸ばす。キノコはひょいひょいと避けた。
「返せ! 変態っ、変態っ」
「私たちのコンビを認めてくださいますか?」
「ふ、ふざけ」
「認めてくださらなければ、このパンツをギャラリーから体育館に投げます」
「卑怯者っ」
マリナは涙目になった。
そろそろ助け船を出した方が良いかもしれない。
そう思って口を開こうとした時、後ろから肩に手を置く者があった。振り向くとそれはレンだった。彼は黙って顔を振る。
「さあ、認めますか? それとも、このパンツを下でバスケットをしている方々に調べてもらいますか?」
「必殺、マリナエルボー!」
マリナは叫びながらキノコの顔に肘打ちを繰り出した。キノコは流れるような動作で回避し、逆に足払いをかける。マリナはすっころんだ。
「ぎゃふんっ」
「マリナさん、往生際が悪いですよ」
「く、くそう」
マリナは立ち上がる。肘を床にこすったようで痛そうに押さえている。
「パンツを、返せ」
「では、認めてください」
「く、くそ」
マリナは両手を床につけて崩れ落ちた。そして勝敗の旗はキノコに上がったのだった。




