運命共同体
「やめとけば良かったかな」
俺は自分の頭を撫でる。でもこれは仕方の無いことなのだ。お笑いでどこまでやれるか試さなければならない。ハゲをネタにすることでお客さんにどのような反応を及ぼすのか知りたい。
「仕方ないんだ」
学校に向けて歩き出した。門にさしかかる。今日は晴れだった。だけどどうしてか、傘をさして立っている女子がいた。珍しいキノコ模様の赤い傘である。その子は髪の毛がピンク色で、これもキノコヘアーだった。どこで買ったのか、キノコ模様のリュックを背負っている。スカートは短く、キノコ柄の入った白いハイソックスをはいている。靴もキノコ柄だった。
自然に通り過ぎれるはずがなかった。
俺は立ち止まり、口をひょっとこみたいにした。
「ユザ、おはようございます」
「お、お前は?」
「お前も何も、森山キノコです。忘れてしまったんですか?」
「お前は、どうしたんだ?」
「イメージチェンジしたんです。どうですか? 私、似合ってます?」
キノコはその場で体を振った。
「似合っているというか、なんて言うか」
「はい」
キノコは笑顔を咲かせる。
「ザ・キノコって感じだな」
「どうですか? これなら、名前にも説得力があるでしょう」
「まあ、そうだけど」
「ユザ」
彼女は真剣な顔をした。
「な、なんだ?」
「私と、コンビを組んでいただけますか?」
彼女は両手で傘の柄を握る。
「それは……」
彼女は充分本気を出しているように見えた。少なくとも俺には。
「ダメ、ですか?」
「分かったよ」
俺は右手を差し出した。
「ありがとうございますー」
二人で握手を交わす。そしてこのときから俺たちは運命共同体となったのだった。




